part 10 特級生体技能者の情熱 それを蝕む幻影
文字数 787文字
生体技能とは、生身の体に備わる、まだ抽出・信号化できていないメタ感覚を高度に要する技能のことだ。今だって、連邦政府の存在意義といったら、まずはこれだけ数の減った人類を維持する計画にあるだろう。当時は古い「国」がなくなって、連邦制と呼べるものがどうにかまとまったばかり。なおさらそこに、全てがかかってた。生きた生身の体のサンプルをなるべく数も種類も確保しておきたい肚も当然あったろう。認定者は新しい体にはなれないが、特級ともなると、生身のまま健康を保ち、メタ感覚に関わる環境も保つために、連邦があらゆる手段を講じてくれる。そうも聞かされた。
それから今まで、
でも、あんたみたいな変わったお客を迎えて、心が未知と遊び出すとわかるんだよ、それもこれもただ単に、このところのどうしようもない倦怠を、逃れたいだけだったかもしれないってね。きっと私にはもう少し、待つべきものがあるんだろう、まるで知れない明日だとか、そんなものが。なに、球もよく訪ねて来てくれるし、この頃じゃあ望は動き出せば元気なのが救いだよ。今? 止まってるよ、望は。会わせるわけにはいかない、悪いけれど。