part 23 宇宙のひねくれ者
文字数 665文字
娘は眉根を寄せ、再び厳しい顔になった。
「実は何もかもわかっていたと? ならば私が今日来る意味などなかったんですか。信じられない、それならそうと」
「まさか、そうじゃないよ。あんたの正体をさっきようやく悟ったのは本当だ」
しばし考える間に娘は何度かその表情を変え、手探りしながらの慎重さでやっと口を開いた。
「では、コマンドを認識した上で逆らい、自己複製不能なように人形を作ったとでも? 私の誕生は思惑違いでしたか」
剣崎はにやにやして答える。
「わざと足りなく作るほどひねくれちゃいない。ただ、知りもしない仲間のために働くより、好きなことをしたまで。私は、人形を作りたかっただけ、それを自己複製と結びつけたことすらなかった。そりゃあ、自分が他の人間と違うようだと気づきはしたさ。だが気づいたからといって、この姿でこの星に生まれたことは変わりゃしない、呪いじみた話じゃないか。あんたが思い至らなかったのは、姿が似てたって中身は違うってこと、コマンドや他の情報が多少読めたところで、知ったことかと蹴飛ばすやつもいるってことさ」
娘はさながら泣き出す寸前の子供の、大きな丸い目になって聞いていたが、全身の力と引き換えに満ち満ちた諦念を一気に吐き出すように、深く嘆息した。
「何てことだ、盲点だったには違いないけれど、それで崩壊しないあなたの自己構造がわからない」
怒りも呆れも放り捨てた顔には、迷い子の心許なさが、もう隠しようもない。