part 11 あの時、彼女はなぜ客の姿に驚きを見せたのか
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私と望と球の身の上話と間柄は、これくらいだ。
次はそっちの番だ、ここへきた本当の理由をそろそろ教えてくれないか。
あんたが私たち三人に、そっくりな理由も。
新しい体をどう作るのも簡単とはいえ、偶然とは考えにくいね。何かわけがあるんだろう? 妙な話だ、こんな長い時を経て、同じ顔の人間が五人揃うなんて。
*
日は落ちかけ、部屋の隅の暗がりも夜の色を少しずつ濃くしている。剣崎が手をかざすと、天井につけられたあかりが灯り、互いの姿をつぶさに照らし出した。はじめに相対した時の剣崎の行動を再現するかのように、若い客は油断なくじっと見つめ返し、そして薄く微笑むと切り出した。
「私が『新しい体』だと、先ほどから随分確信をお持ちなのは、なぜですか」
剣崎の眉がぴくりと動く。自分と寸分違わぬ姿をした相手を、人でない者でも見る目で、しかしどこか面白がる風情で迎えていたのが、急にその同じ双眸に心もとなさが浮かび出る。
「なぜってそりゃあ、見れば……」
発した言葉も半ばで不明瞭に濁り、早くも確信を疑い始めたのは明らかだった。
「確かに私は新しい体らしい外見でしょうが、それを言うならば生身のはずのあなたも、同じでは?」
客はなおもたたみかける。指摘はもっともなものだが、剣崎は意表を突かれたというふうに、曖昧な表情を口元に貼りつかせて絶句している。
「私がここへきた本当の理由を、いくつか推測されてはいるんでしょう。でも言っておきますが、それは事実ではありません」
意図してなのか、つい先ほどの物言いをそのまま返すと、客はようやく口を開きかけた剣崎を両手のひらをふわりと上げて牽制し、ひと息の間をおいて、言った。
「私は体の成長を経験していません。生まれた時から今の姿なのです」