part 14 生命とは、と客は語る
文字数 742文字
「わからないね。どうも私たちが、地球を征服にきた宇宙人だとでも言ってるように聞こえるが」
「そう言ってるんですよ。わかっているじゃないですか」
挑む眼差しを向けつつ、客は生真面目に頷いた。半眼で睥睨する剣崎だったが、ふっと苦笑いに息を吐く。
「よく無防備に言うもんだ、そんなことを」
「予告なく訪ねて、神経同期を介さず話す。あなたが監視録画や録音をお嫌いなおかげで、記録に残らず安全な方法が見つかって助かりましたよ」
「なるほどね。で、取り敢えずあんたが地球外から送り込まれた生命体だとしてだ。大人の体で卵の殻を破って生まれた時から、何もかも覚えているって? 使命とやらを」
「私の、いえ我々の設計図、コマンドの一部を私は読めます」
若い訪問者は人差し指で自分のこめかみを指し、とうとうと述べ出した。
「生命とは、自律する規則に従いながらも周辺環境に応じて変化する、半分閉じた情報のこと。我々はそう定義します。地球人による定義も、極端に物質に囚われ過ぎているとはいえ、さほどかけ離れたものではありません。ただ地球人は、情報と、自身を形作る物質との繋がりを解明するにも、遺伝子の構造と働き止まり。未だにろくに理解できていませんが」
ある種の催眠状態を思わせる流暢さである。剣崎は、まだ余裕を残した面持ちでひとまず聞くに徹したものの、時々苛立たしげに眉を上下させ始めた。ついに、息を継ぐ隙をついて口を挟む。
「ほう、地球人など及びもしない知恵を持つあんたたちは、その情報をコマンドと呼ぶと」
「まだ、生命が情報だという見解をお伝えしただけです」
慌てるなと制する一言で、客は剣崎を黙らせた。