part 2 超絶技巧の人工臓器造り 旧式の会話を望む謎の客
文字数 906文字
生きたようであるためか、死んだようであるためか、いずれもが言いようのない不穏な違和感をもたらすこれら工房の主たちこそ、人々の畏怖を集め、
「退屈だね」
と、どこか偽悪的に顔を歪めて呟いたその時だ、不意の訪問者があったのは。
今時ろくに使われないインターフォンの、通話を促すランプが点灯するのに応えれば、神経同期を使わず話したいという珍しい申し入れがあり、これは剣崎を大いに驚かせた。カムイン、と戸を開けた際、その目はまた別の驚きで見開かれたかに見えたが、すぐに、人形じみた、とよく評されるつるりとした無表情にかえり、客が訪問の理由を一方的に述べ立てるのを聞いた。気分を害した様子はない。剣崎をよく知る人ならば、むしろ抑えきれない好奇心で瞳が輝くのに気づいただろう。
妹の
ふむ、と頷くと、剣崎は手招きをして灰色の廊下を奥へ向かい、工房の重い扉を開いた。伴った客に椅子をすすめると、剣崎も向かいに腰掛け、油断なく相手を眺め回した。やがてゆっくり口にしたのが冒頭の言葉である。遅い午後、まだあかりをつけない工房は薄暗かったが、剣崎の、齢三百を超えて若々しい頬が、薄い笑みとも取れる形に張り詰めたのは客の目にも映っただろう。
話は以下に続く。