1_31 文屋
文字数 2,093文字
そこはまるで無機質なコンクリート打ち付けの体育館の様な広い場所だった。
二階堂の入ってきた観音開きの自動ドアが瞬時に閉じられてロックが掛かる。
「!!」
背後にその気を感じながらも二階堂は目の前の光景から目を離すことが出来なかった。
”どうしよう・・・二階堂さんっ”
”黙れ省吾、いいか二階堂、今打開策を見出す、それまで何とか持ちこたえろ”
南山の言葉に返す言葉も無く二階堂はただ必死に激烈に痛む股の痛みに耐えながら前を凝視していた。
二階堂の視線の先には、自身の太股に針を突き刺した犯人が中央に堂々と仁王立ちしている。
左右に多数の兵を従えながら。
その文屋を始めとした兵達は横一直線に寸分の狂いも無い体系を取っていた。
まるで今からマーチングでも始めるかの如く。
彼らは皆頭の先から足のつま先まであろうかという
黒タイツの様なテカリの有るラバースーツと両手に小型の投げナイフを装備している。
そしてこの中でも代表格の文屋だけは赤タイツで一際異彩を放っていた。
文屋の身体は鍛え上げられ寸分の無駄がないほどの、それこそウバメ達と変わらぬほどの肉体美をしているのが
ラバースーツ越しでも分かった。
「ようこそ、二階堂。まずは歓迎しよう」
「・・・・・・クソったれが」
「ほう、貴様は今針に撃たれ意識朦朧のはずだ。にもかかわらずその虚勢、中々の評価に値する。
流石は下衆の南山の使い走りだけある」
相手の挑発に答えるどころか二階堂は絶望的な状況下の中で、時折二重になる視界を必死に留めるだけで精一杯だった。
少しでも気を抜けば意識は失う。
「・・・・・・これからどうする気だ」
「ふむ、二階堂。ここはレクリエーションルームだ。兵たちが親睦を深めるため、または連携を取るために催しを行う場・・・
そこで俺は二階堂君を歓迎会を取り行おうと思うのだ」
「歓迎会だとっ」
文屋はラバースーツでその表情を窺い知ることはできなかったがそれでも声のイントネーションが弾んでいる為
少しうれしそうにしているのは手に取る様に解った。
「我々は鍵際師団・六火仙隊のマーチング・通称ムカデ班よ。
二階堂君を歓迎するのは我々の役目・・・さあ二階堂君、これを使いなさい」
そう言って文屋は二階堂に有ろうことか自身の持っている武器を地面へと滑らせるように投げ付けた。
「っ・・・なんだと?!」
足元に転がってきた武器を見て二階堂は信じられぬ様子でしかめ面をした。
「私は帝国軍人だ。帝国軍人は卑劣であってはならない。故に二階堂君、丸腰の君と戦う訳にはいかないのだよ。
安心したまえ、それを使っていきなり爆発などと言う事は無い。そんなことは私の主義に反するし、
何よりもこの”歓迎会”を楽しみたいのだ。さぁそれを取りなさい」
”二階堂、大丈夫なのか?!”
南山が驚きの声も上げるも、二階堂はゆっくりとそれを拾い上げる。
手に取ったそれは拳銃のような形をし、機構も似たような作りであったが、先端は細く1mmほどの穴しか開いていない。
(もしや・・・これは、あいつらの使っている”針”を射出する兵器か?)
だがじっくり吟味する暇もないため二階堂はすかさず彼らに向けてその敵の施した武器を構えた。
「大丈夫も何もねえよくそっ・・・やらなきゃ蹂躙されて死ぬのがおちだ」
「ああいいぞ、それでいいぞ二階堂君。・・・さあ”歓迎会”を始めよう、そして無事に生き残って見せるんだ」
文屋がそう言ったとき、ズンッズンッズンッという大きなベース音のようなものが鳴りだす。
「!!!!!!・・・な、なんだ!!」
そのとき、二階堂は身体が鉛のように重たくなるのを感じた。
最初は自身の体調を疑ったが肩にかけているカメラが
重力だった。ものすごい重力を感じる。
「お、お、お、お・・・・・くそっ、これはっ」
二階堂は持っている武器が信じられなく重たく感じた。
腕が上げられない。
しかし、それは二階堂だけではなく、目の前の文屋率いるムカデ班も同じように重力を受けている様子だった。
何故なら彼らが皆背負っているバックパックのアンテナのようなものが一斉にひん曲がり、
壁に映っている彼らの影がまるでムカデの足のように映ったのである。
「・・・ああ、感じる。重力を。自らに課すこと、そしてそれを乗り越えること、それこそが帝国軍人よ」
そう言い放った時、ムカデ班は一斉に寸分の狂いも無く左右の膝を同じに上げてその場足ふみを始めた。
1,2,1,2,1,2・・・・・。
「・・・ときに先程、部下が君に失礼を働いたようだね。その腕のリストバンド」
二階堂はそれを聞いてタロットの経緯を思い出す。
「お、おまえはもしかしてあいつらの差し金っ・・・・」
「・・・ふふふ。さぁ二階堂君!行くぞ!行くぞ!無事生き残って見せろ!」
部屋の重力が上がっているにも関わらず、彼らのその場足ふみはその速度を増す。
1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。
横一文字の端の兵の部下が呟く。
「recreation go!」
全員が足ふみに加え、手を叩いてリズムを取り始める。
そのリズムが徐々にベース音と重なったとき、彼らは横一列一斉に前進を開始した。
「オオオオオオオオオオオォ!!!」
二階堂の入ってきた観音開きの自動ドアが瞬時に閉じられてロックが掛かる。
「!!」
背後にその気を感じながらも二階堂は目の前の光景から目を離すことが出来なかった。
”どうしよう・・・二階堂さんっ”
”黙れ省吾、いいか二階堂、今打開策を見出す、それまで何とか持ちこたえろ”
南山の言葉に返す言葉も無く二階堂はただ必死に激烈に痛む股の痛みに耐えながら前を凝視していた。
二階堂の視線の先には、自身の太股に針を突き刺した犯人が中央に堂々と仁王立ちしている。
左右に多数の兵を従えながら。
その文屋を始めとした兵達は横一直線に寸分の狂いも無い体系を取っていた。
まるで今からマーチングでも始めるかの如く。
彼らは皆頭の先から足のつま先まであろうかという
黒タイツの様なテカリの有るラバースーツと両手に小型の投げナイフを装備している。
そしてこの中でも代表格の文屋だけは赤タイツで一際異彩を放っていた。
文屋の身体は鍛え上げられ寸分の無駄がないほどの、それこそウバメ達と変わらぬほどの肉体美をしているのが
ラバースーツ越しでも分かった。
「ようこそ、二階堂。まずは歓迎しよう」
「・・・・・・クソったれが」
「ほう、貴様は今針に撃たれ意識朦朧のはずだ。にもかかわらずその虚勢、中々の評価に値する。
流石は下衆の南山の使い走りだけある」
相手の挑発に答えるどころか二階堂は絶望的な状況下の中で、時折二重になる視界を必死に留めるだけで精一杯だった。
少しでも気を抜けば意識は失う。
「・・・・・・これからどうする気だ」
「ふむ、二階堂。ここはレクリエーションルームだ。兵たちが親睦を深めるため、または連携を取るために催しを行う場・・・
そこで俺は二階堂君を歓迎会を取り行おうと思うのだ」
「歓迎会だとっ」
文屋はラバースーツでその表情を窺い知ることはできなかったがそれでも声のイントネーションが弾んでいる為
少しうれしそうにしているのは手に取る様に解った。
「我々は鍵際師団・六火仙隊のマーチング・通称ムカデ班よ。
二階堂君を歓迎するのは我々の役目・・・さあ二階堂君、これを使いなさい」
そう言って文屋は二階堂に有ろうことか自身の持っている武器を地面へと滑らせるように投げ付けた。
「っ・・・なんだと?!」
足元に転がってきた武器を見て二階堂は信じられぬ様子でしかめ面をした。
「私は帝国軍人だ。帝国軍人は卑劣であってはならない。故に二階堂君、丸腰の君と戦う訳にはいかないのだよ。
安心したまえ、それを使っていきなり爆発などと言う事は無い。そんなことは私の主義に反するし、
何よりもこの”歓迎会”を楽しみたいのだ。さぁそれを取りなさい」
”二階堂、大丈夫なのか?!”
南山が驚きの声も上げるも、二階堂はゆっくりとそれを拾い上げる。
手に取ったそれは拳銃のような形をし、機構も似たような作りであったが、先端は細く1mmほどの穴しか開いていない。
(もしや・・・これは、あいつらの使っている”針”を射出する兵器か?)
だがじっくり吟味する暇もないため二階堂はすかさず彼らに向けてその敵の施した武器を構えた。
「大丈夫も何もねえよくそっ・・・やらなきゃ蹂躙されて死ぬのがおちだ」
「ああいいぞ、それでいいぞ二階堂君。・・・さあ”歓迎会”を始めよう、そして無事に生き残って見せるんだ」
文屋がそう言ったとき、ズンッズンッズンッという大きなベース音のようなものが鳴りだす。
「!!!!!!・・・な、なんだ!!」
そのとき、二階堂は身体が鉛のように重たくなるのを感じた。
最初は自身の体調を疑ったが肩にかけているカメラが
重力だった。ものすごい重力を感じる。
「お、お、お、お・・・・・くそっ、これはっ」
二階堂は持っている武器が信じられなく重たく感じた。
腕が上げられない。
しかし、それは二階堂だけではなく、目の前の文屋率いるムカデ班も同じように重力を受けている様子だった。
何故なら彼らが皆背負っているバックパックのアンテナのようなものが一斉にひん曲がり、
壁に映っている彼らの影がまるでムカデの足のように映ったのである。
「・・・ああ、感じる。重力を。自らに課すこと、そしてそれを乗り越えること、それこそが帝国軍人よ」
そう言い放った時、ムカデ班は一斉に寸分の狂いも無く左右の膝を同じに上げてその場足ふみを始めた。
1,2,1,2,1,2・・・・・。
「・・・ときに先程、部下が君に失礼を働いたようだね。その腕のリストバンド」
二階堂はそれを聞いてタロットの経緯を思い出す。
「お、おまえはもしかしてあいつらの差し金っ・・・・」
「・・・ふふふ。さぁ二階堂君!行くぞ!行くぞ!無事生き残って見せろ!」
部屋の重力が上がっているにも関わらず、彼らのその場足ふみはその速度を増す。
1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。
横一文字の端の兵の部下が呟く。
「recreation go!」
全員が足ふみに加え、手を叩いてリズムを取り始める。
そのリズムが徐々にベース音と重なったとき、彼らは横一列一斉に前進を開始した。
「オオオオオオオオオオオォ!!!」