第22話:米国大手自動車会社、JALの破綻と欧州経済危機

文字数 1,710文字

 この年、アメリカの自動車大手3社のクライスラーが、4月30日、ゼネラル・モーターズが、6月1日に経営破綻。環境対応車など新時代への取り組みの遅れや、金融危機とその後の景気後退に見舞われた事が原因で、米国経済の地位低下を象徴する出来事となった。クライスラーはイタリアの自動車大手フィアットと包括提携した。

そ して、6月10日、新会社クライスラーグループが誕生。米製造業では資産規模で最大の倒産劇となったゼネラル・モーターズも7月10日、「シボレー」などの優良ブランドを引き継ぎ、政府が過半数株を握る「新生ゼネラル・モーターズ」として再出発を果たした。2010年に入ると、日本航空が1月19日、会社更生法の適用を東京地裁に申請。

 事実上の経営破綻。負債額は約2兆3000億円と事業会社では過去最大。京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎え、政府が出資する企業再生支援機構の下で再建を目指す。事業規模を3分の2に圧縮するとし、内外45路線からの撤退やグループで約1万6千人の人員削減など抜本改革に着手。パイロットや客室乗務員の退職数は目標に届かず、最大200人を整理解雇。

 更生計画は債権放棄に応じた銀行団などの合意を得て11月末に確定。支援機構は公的資金3500億円を出資した。11年3月末に更生手続きを終結し12年中の再上場を目指す。また、世界では、きな臭い事件が数件起こった。沖縄・尖閣諸島沖の日本領海で9月7日、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突。石垣海上保安部は中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕した。

 これを受け、中国政府は日中間の閣僚級以上の往来を停止。軍事施設保護法違反の疑いで大手ゼネコン「フジタ」社員4人が中国当局に拘束され、レアアースの通関手続きが滞った。那覇地検は同25日に船長を処分保留で釈放、「今後の日中関係を考慮」も理由に挙げた。11月4日、インターネットの動画サイトに石垣海保撮影の漁船衝突の映像が流出。

 同10日に神戸海上保安部の海上保安官が流出させたと告白し、警視庁と東京地検が国家公務員法違反容疑で捜査。9月15日、1ドル・82円台に突入。そのため15年ぶりの急激な円高で、約6年半ぶりとなる円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った。総額2.1兆円余りと1日の介入額では過去最大規模だった。

 しかし、米国経済の減速懸念を背景に円相場は、一時80円近辺まで上昇し1995年4月に付けた戦後最高値「79円75銭」に迫った。輸出企業の業績など円高による景気への影響を懸念する日銀は10月5日、事実上のゼロ金利政策の復活を含む包括的な金融緩和策を決定。国債に加え不動産投資信託「Jリート」など幅広くリスク資産を買い取る基金も創設された。

 そうしてデフレ克服への取り組みを強化した。2010年11月23日には、北朝鮮が、韓国西方の黄海にある延坪島に80発の砲弾を撃ち込み、民間人2人を含む4人が死亡、民家なども多数被害を受けた。北朝鮮は、韓国側が定める海上軍事境界線を認めておらず、自らの領海内で韓国側が射撃訓練を行って挑発したのに対して反撃したと主張した。

 韓国領土に対する攻撃は朝鮮戦争以来初めて。世論が激しく憤る中で、韓国は新たな挑発には徹底して反撃すると強調。米国と黄海で合同軍事演習を実施し、朝鮮半島情勢は極度に緊迫化した。冷静な対応を求める中国は6カ国協議首席代表会合の開催を提案したが、日米韓は開催に否定的な見解を表明した。

 欧州16カ国で構成されるユーロ圏では、財政赤字急拡大に見舞われたギリシャが5月、アイルランドも11月に欧州連合「EU」や国際通貨基金「IMF」などの緊急融資を仰いだ。その後も信用不安は、ぬぐいされず、ポルトガルなど南欧諸国への波及が懸念された。金融危機をきっかけに財政が悪化した一部ユーロ圏諸国では、国債利回りが急上昇。

 中でも、財政赤字統計の大幅修正を繰り返したギリシャと、銀行危機に陥ったアイルランドが市場の信頼を失い、支援要請に追い込まれた。危機への対応をめぐり各国の足並みの乱れも明らかになり、欧州単一通貨ユーロは円や米ドルなど主要通貨に対して急落した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み