新三幕 ガロン荒野再び(4)
文字数 3,892文字
パアンッ!
乾いた音が荒野に響き渡った。それと同時に、私を切り裂こうとしていたダークストーカーの右腕が朱に染まった。
『クアアァァッ!?』
「ふあぁっ!?」
私と黒い悪魔は似たような発音で叫んだ。
「小娘、その場に伏せろ!」
遠くからアルクナイトが怒鳴り、訳も判らないまま私は地面に突っ伏した。
パンッ、パンッ。
荒野の強風を縫うように連続で二回音がして、ダークストーカーの右胸、左脇腹に血飛沫 が形成する赤い花が咲いた。
いったい何事!? これも魔法の一種?
『キシャアァァァ!!!!』
私への攻撃を忘れて、ダークストーカーは与えられた苦痛に身をよじった。
パアンッ!
そこへ四度目の破裂音が響いて、ダークストーカーの頭頂部が吹っ飛んだ。
「ひっ……」
ブシュウゥゥと頭部から大量の血を噴き出して、ダークストーカーは私のすぐ近くに倒れた。うにゃあぁぁ。脳みそが頭蓋骨からはみ出しているぅぅ。勝手を言うけれどもっとあっちで死んで下さい。頼むから。
「撃ち方やめーっ! 流れ弾が俺達にも当たるだろーが!」
アルクナイトが叫ぶ方向に目をやった私は、これでもかというくらいに驚いた。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_f3b26e8f3472f548463303ce75ddde2d.png)
そこには険しい顔をして、武器らしきものを構えたリリアナが居たのだ。見間違いじゃない。自慢になるが私の視力は両眼共に2・0だ。
でもどうして? 冒険者ギルドのアイドル、受付嬢のリリアナがこのフィールドに居るの? それに撃ち方って???
「ロックウィーナ!」
「おい、当たらなかっただろうな?」
走ってきたエリアスとルパートが私を起こした。
「は、はい。でもいったい何が起きたんですか……?」
顰 めっ面 のアルクナイトが歩み寄って、顎でリリアナを指した。
「奴がダークストーカーを狙撃したんだ」
「へ? そ……げき?」
ダークストーカーの身体に矢は刺さっていない。スリングショットでは命中率が低くなる。どんな武器で狙撃したというのだろう?
「お姉様!」
リリアナが腕を左右に振る美少女走りでこちらへ駆けてきた。こんな荒れた地においても彼女は愛らしい。
「あのクソ悪魔に玉の肌を傷付けられませんでしたか!?」
言葉は汚いんだけどね。
「あ、うん、大丈夫。リリアナが助けてくれたんだよね? ありがとう」
「ああ良かった! 生きた心地がしませんでした!」
リリアナは持っていた武器を降ろしてから私に抱き付いた。品の良い香水がフワリと私の鼻をくすぐった。
地面に置かれた武器を見てエリアスが言った。
「これは銃と言うカラクリ武器だな。非常に希少価値が高いもので、市場にはあまり出回らないと聞いたが」
銃? 武器辞典でチラッと見たような。そうか、コレが……。実物を目にするのは初めてだ。
元聖騎士のルパートも興味有り気に武器を眺めた。
「まさかリリアナが銃を扱うとはな。騎士団でも百丁くらい所持してたが、手入れが難しいのと修理部品が高いとかで、銃士の訓練がなかなか進まなかったんだよ。八年経った今は知らんけど」
「かなりの反動が有るはずだが、よくも女の細腕であそこまで射撃精度を高めたものだ」
「うん。純粋にすげーよリリアナ」
感心する男二人に、アルクナイトが爆弾発言をかました。
「エリーにチャラ男、小娘に抱き付いてうなじの匂いを嗅いでいるソイツは女じゃないぞ?」
男二人と私は目が点になった。
「……は?」
「いや何その冗談。魔王様、笑えないッスよ」
「リリアナが女じゃないってどういう意味? 失礼よ?」
彼女はどこからどう見ても可憐な女のコだ。女性にしては高身長で手が少し大きいけれど、それだって素敵な魅力の内だ。
それなのにアルクナイトは更なる暴言を吐いた。
「下に付いてる」
「!」
「!」
「!」
ついリリアナの下半身に目が行き掛けて、男二人は慌てて視線を逸らした。紳士だな。
「アル、リリアナ嬢に謝罪しろ。それが女性に対して使う言葉か!」
アルクナイトはヤレヤレと肩を竦 めた。そのポーズ好きだよね。
「人間というものは愚かしいな、服を脱がさなければ雌雄の区別もつかんのか」
「何よ偉そうに。アンタは服の上からでも全て見通せるとでも言うの?」
私はつい魔王に喧嘩を売ってしまった。これがマズかった。
「見通せるとも。おまえは上から84・59・88だ」
「………………?」
一瞬何のことか判らなかったが、やがて彼の言った意味が脳を刺激した。
「おいぃぃぃっ、それってウィーのスリーサイズかよ!?」
「なんと」
「ぎゃあぁぁぁ! このセクハラ魔王!!」
エリアスが真剣な眼差しを私に向けた。
「ロックウィーナ、アルの言った数値は当たっているのか……?」
「ちょっとエリアスさん!? アンタまでしれっとエロトークに参加するのかよ!?」
「違うルパート、私はいやらしい気持ちで聞いているんじゃない。あくまで確認だ。アルが真実を言っているならば、今現在ロックウィーナにしがみ付いている受付嬢は男ということになる」
「あ」
勇者と元聖騎士は、私にスリスリしているリリアナを改めて見た。
「ウィー……、どうなん? 合ってるのか?」
「そ、それは……」
「確認の後、数値は記憶から消すと約束する。だから答えてくれロックウィーナ」
「うう。一ヶ月前に服屋で採寸してもらった時、確かそのサイズでした……」
あぁぁぁ。私の秘密のサイズがバレたぁ。恥ずかしいぃ。
エリアスとルパートはニッコリと笑った後、それぞれリリアナの襟首と腕を掴んだ。
「ロックウィーナから離れろ、この不埒者 が!」
「今まで長らく騙してくれたな!!」
「キイーーーーッ!!」
金切り声を上げて抵抗していたが、リリアナは男二人によってベリッと私から引き剝がされた。私は呆然とした。
「リ、リリアナ……。あなた本当に男の人だったの?」
私の数十倍可愛いのに。
「ごめんなさい、ウィーお姉様」
観念したリリアナは普通に男の声だった。
「何で女の振りをしていたんだよ?」
ルパートが詰め寄った。
「身分を隠す為に変装していたんです。僕は誘拐されやすいので」
「誘拐される? 貴族の子息とかか?」
「いえ……」
リリアナは質問しているルパートではなく、私をじっと見た。
「お姉様、僕の本当の名前はリーベルト・シュタークです」
「!」
「シュタークとは、この国一番の商会の屋号だな?」
エリアスは彼の名字に反応したが、私とルパートは違った。
「リーベルト!?」
声が揃った私達にリーベルトは抜群の笑顔を向けた。
「あなたっ……、私とルパート先輩が五年前に保護した、
「はい。その節はお世話になりました」
「どういうことだ?」
状況を呑み込めていないエリアスとおまけの魔王に、リーベルト自身が詳しく説明した。
五年前に義理の母と姉によって、モンスターが棲息するフィールドに置き去りにされて殺された掛けたこと。そこを私に救われたこと。
「そんな事が……。キミも苦労したんだな」
「死を意識したあの時、目の前に現れたお姉様はまさに聖女でした。僕を励まし、背負って街まで連れ帰ってくれたんです。運命を感じました」
「解る……解るぞっ!!」
エリアスは何度も頷いてリーベルトに同意した。そう言われてみると、エリアスとリーベルトは同じ状況で私と出会っているんだな。
おんぶすると相手は惚れるのか。知らなかった。恋愛小説にそんなシチュエーションは無かった。
「俺も居たんだけどな……」
「ああ、当時のルパート先輩のこともよぉーく覚えていますよ。家に帰りたくないと泣き喚 いていた憐 れな僕を、セス先輩とマスターと一緒にお姉様から引き剥がしましたよね? さっきみたいに」
「あ、あれは仕方が無かっただろ……。おまえ、ずっと恨みに思ってたのか?」
「いーえー、別にー?」
「恨んでるな……」
本当に……本当にあの時のリーベルトなんだ…………!
「ちょ、お姉様? 何故泣いているんです? どこか痛いですか!?」
「……だって、リーベルトが元気なんだもん。あんな別れ方したから、今も泣いてるんじゃないかって、ずっと心配で……」
私の中では不安がって震えていた少年のイメージが強いのだ。ダークストーカーの頭をぶっ飛ばせる程に、逞しい青年に成長していて良かった。
「お姉様……、そんな貴女だから僕はずっと……」
またリーベルトは私に抱き付いた。すぐにエリアスとルパートに剝がされたが。
「そうだ魔王様、さっきお姉様のスリーサイズ当ててましたけど、あれって透視とかしたんですか!?」
それは私も気になっていた。
「どうなんだ、アル!」
「安心しろ、目で見ている訳ではない。情報だけ頭に入ってくる感じだ」
少しだけ安心した。恥ずかしいことには違いないが、モロに見られるよりはよっぽどマシだ。
「リリアナ……じゃなくてリーベルト、おまえ独りでここまで来たのか? よくマスターが許したな?」
「あ、お腹が痛いって噓吐いて、トイレに行く振りして出てきました」
「ええっ、無許可かよ!」
「結界石だけじゃ心配で。お姉様を護りたくて」
「おいおい……。マスター絶対怒ってんぞ?」
「帰ったら先輩がマスターにとりなして下さい」
「俺かよ! 自分で謝れや!」
「あ? お姉様を護り切れなかった騎士 が何言ってんです? 僕があのモンスターを撃たなかったらお姉様がどうなっていたか」
「……………………」
ルパートは神妙な顔つきで黙ってしまった。言い返してくることを予想していたリーベルトは拍子抜けした様子だった。
「……オルゴールも手に入ったし、戦闘訓練もそれなりにできた。今日はギルドへ戻ることにしよう」
エリアスが仕切って、私達は帰路につくことになった。
乾いた音が荒野に響き渡った。それと同時に、私を切り裂こうとしていたダークストーカーの右腕が朱に染まった。
『クアアァァッ!?』
「ふあぁっ!?」
私と黒い悪魔は似たような発音で叫んだ。
「小娘、その場に伏せろ!」
遠くからアルクナイトが怒鳴り、訳も判らないまま私は地面に突っ伏した。
パンッ、パンッ。
荒野の強風を縫うように連続で二回音がして、ダークストーカーの右胸、左脇腹に
いったい何事!? これも魔法の一種?
『キシャアァァァ!!!!』
私への攻撃を忘れて、ダークストーカーは与えられた苦痛に身をよじった。
パアンッ!
そこへ四度目の破裂音が響いて、ダークストーカーの頭頂部が吹っ飛んだ。
「ひっ……」
ブシュウゥゥと頭部から大量の血を噴き出して、ダークストーカーは私のすぐ近くに倒れた。うにゃあぁぁ。脳みそが頭蓋骨からはみ出しているぅぅ。勝手を言うけれどもっとあっちで死んで下さい。頼むから。
「撃ち方やめーっ! 流れ弾が俺達にも当たるだろーが!」
アルクナイトが叫ぶ方向に目をやった私は、これでもかというくらいに驚いた。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_f3b26e8f3472f548463303ce75ddde2d.png)
そこには険しい顔をして、武器らしきものを構えたリリアナが居たのだ。見間違いじゃない。自慢になるが私の視力は両眼共に2・0だ。
でもどうして? 冒険者ギルドのアイドル、受付嬢のリリアナがこのフィールドに居るの? それに撃ち方って???
「ロックウィーナ!」
「おい、当たらなかっただろうな?」
走ってきたエリアスとルパートが私を起こした。
「は、はい。でもいったい何が起きたんですか……?」
「奴がダークストーカーを狙撃したんだ」
「へ? そ……げき?」
ダークストーカーの身体に矢は刺さっていない。スリングショットでは命中率が低くなる。どんな武器で狙撃したというのだろう?
「お姉様!」
リリアナが腕を左右に振る美少女走りでこちらへ駆けてきた。こんな荒れた地においても彼女は愛らしい。
「あのクソ悪魔に玉の肌を傷付けられませんでしたか!?」
言葉は汚いんだけどね。
「あ、うん、大丈夫。リリアナが助けてくれたんだよね? ありがとう」
「ああ良かった! 生きた心地がしませんでした!」
リリアナは持っていた武器を降ろしてから私に抱き付いた。品の良い香水がフワリと私の鼻をくすぐった。
地面に置かれた武器を見てエリアスが言った。
「これは銃と言うカラクリ武器だな。非常に希少価値が高いもので、市場にはあまり出回らないと聞いたが」
銃? 武器辞典でチラッと見たような。そうか、コレが……。実物を目にするのは初めてだ。
元聖騎士のルパートも興味有り気に武器を眺めた。
「まさかリリアナが銃を扱うとはな。騎士団でも百丁くらい所持してたが、手入れが難しいのと修理部品が高いとかで、銃士の訓練がなかなか進まなかったんだよ。八年経った今は知らんけど」
「かなりの反動が有るはずだが、よくも女の細腕であそこまで射撃精度を高めたものだ」
「うん。純粋にすげーよリリアナ」
感心する男二人に、アルクナイトが爆弾発言をかました。
「エリーにチャラ男、小娘に抱き付いてうなじの匂いを嗅いでいるソイツは女じゃないぞ?」
男二人と私は目が点になった。
「……は?」
「いや何その冗談。魔王様、笑えないッスよ」
「リリアナが女じゃないってどういう意味? 失礼よ?」
彼女はどこからどう見ても可憐な女のコだ。女性にしては高身長で手が少し大きいけれど、それだって素敵な魅力の内だ。
それなのにアルクナイトは更なる暴言を吐いた。
「下に付いてる」
「!」
「!」
「!」
ついリリアナの下半身に目が行き掛けて、男二人は慌てて視線を逸らした。紳士だな。
「アル、リリアナ嬢に謝罪しろ。それが女性に対して使う言葉か!」
アルクナイトはヤレヤレと肩を
「人間というものは愚かしいな、服を脱がさなければ雌雄の区別もつかんのか」
「何よ偉そうに。アンタは服の上からでも全て見通せるとでも言うの?」
私はつい魔王に喧嘩を売ってしまった。これがマズかった。
「見通せるとも。おまえは上から84・59・88だ」
「………………?」
一瞬何のことか判らなかったが、やがて彼の言った意味が脳を刺激した。
「おいぃぃぃっ、それってウィーのスリーサイズかよ!?」
「なんと」
「ぎゃあぁぁぁ! このセクハラ魔王!!」
エリアスが真剣な眼差しを私に向けた。
「ロックウィーナ、アルの言った数値は当たっているのか……?」
「ちょっとエリアスさん!? アンタまでしれっとエロトークに参加するのかよ!?」
「違うルパート、私はいやらしい気持ちで聞いているんじゃない。あくまで確認だ。アルが真実を言っているならば、今現在ロックウィーナにしがみ付いている受付嬢は男ということになる」
「あ」
勇者と元聖騎士は、私にスリスリしているリリアナを改めて見た。
「ウィー……、どうなん? 合ってるのか?」
「そ、それは……」
「確認の後、数値は記憶から消すと約束する。だから答えてくれロックウィーナ」
「うう。一ヶ月前に服屋で採寸してもらった時、確かそのサイズでした……」
あぁぁぁ。私の秘密のサイズがバレたぁ。恥ずかしいぃ。
エリアスとルパートはニッコリと笑った後、それぞれリリアナの襟首と腕を掴んだ。
「ロックウィーナから離れろ、この
「今まで長らく騙してくれたな!!」
「キイーーーーッ!!」
金切り声を上げて抵抗していたが、リリアナは男二人によってベリッと私から引き剝がされた。私は呆然とした。
「リ、リリアナ……。あなた本当に男の人だったの?」
私の数十倍可愛いのに。
「ごめんなさい、ウィーお姉様」
観念したリリアナは普通に男の声だった。
「何で女の振りをしていたんだよ?」
ルパートが詰め寄った。
「身分を隠す為に変装していたんです。僕は誘拐されやすいので」
「誘拐される? 貴族の子息とかか?」
「いえ……」
リリアナは質問しているルパートではなく、私をじっと見た。
「お姉様、僕の本当の名前はリーベルト・シュタークです」
「!」
「シュタークとは、この国一番の商会の屋号だな?」
エリアスは彼の名字に反応したが、私とルパートは違った。
「リーベルト!?」
声が揃った私達にリーベルトは抜群の笑顔を向けた。
「あなたっ……、私とルパート先輩が五年前に保護した、
あの
リーベルト少年だったの!?」「はい。その節はお世話になりました」
「どういうことだ?」
状況を呑み込めていないエリアスとおまけの魔王に、リーベルト自身が詳しく説明した。
五年前に義理の母と姉によって、モンスターが棲息するフィールドに置き去りにされて殺された掛けたこと。そこを私に救われたこと。
「そんな事が……。キミも苦労したんだな」
「死を意識したあの時、目の前に現れたお姉様はまさに聖女でした。僕を励まし、背負って街まで連れ帰ってくれたんです。運命を感じました」
「解る……解るぞっ!!」
エリアスは何度も頷いてリーベルトに同意した。そう言われてみると、エリアスとリーベルトは同じ状況で私と出会っているんだな。
おんぶすると相手は惚れるのか。知らなかった。恋愛小説にそんなシチュエーションは無かった。
「俺も居たんだけどな……」
「ああ、当時のルパート先輩のこともよぉーく覚えていますよ。家に帰りたくないと泣き
「あ、あれは仕方が無かっただろ……。おまえ、ずっと恨みに思ってたのか?」
「いーえー、別にー?」
「恨んでるな……」
本当に……本当にあの時のリーベルトなんだ…………!
「ちょ、お姉様? 何故泣いているんです? どこか痛いですか!?」
「……だって、リーベルトが元気なんだもん。あんな別れ方したから、今も泣いてるんじゃないかって、ずっと心配で……」
私の中では不安がって震えていた少年のイメージが強いのだ。ダークストーカーの頭をぶっ飛ばせる程に、逞しい青年に成長していて良かった。
「お姉様……、そんな貴女だから僕はずっと……」
またリーベルトは私に抱き付いた。すぐにエリアスとルパートに剝がされたが。
「そうだ魔王様、さっきお姉様のスリーサイズ当ててましたけど、あれって透視とかしたんですか!?」
それは私も気になっていた。
「どうなんだ、アル!」
「安心しろ、目で見ている訳ではない。情報だけ頭に入ってくる感じだ」
少しだけ安心した。恥ずかしいことには違いないが、モロに見られるよりはよっぽどマシだ。
「リリアナ……じゃなくてリーベルト、おまえ独りでここまで来たのか? よくマスターが許したな?」
「あ、お腹が痛いって噓吐いて、トイレに行く振りして出てきました」
「ええっ、無許可かよ!」
「結界石だけじゃ心配で。お姉様を護りたくて」
「おいおい……。マスター絶対怒ってんぞ?」
「帰ったら先輩がマスターにとりなして下さい」
「俺かよ! 自分で謝れや!」
「あ? お姉様を護り切れなかった
「……………………」
ルパートは神妙な顔つきで黙ってしまった。言い返してくることを予想していたリーベルトは拍子抜けした様子だった。
「……オルゴールも手に入ったし、戦闘訓練もそれなりにできた。今日はギルドへ戻ることにしよう」
エリアスが仕切って、私達は帰路につくことになった。