新七幕 魔王の瞳に映る世界(3)
文字数 3,861文字
最初の一手はソルが放った。奴は冷気を付加した剣を構えて俺へ突進した。燃えるような赤い髪に反して、ソルは水魔法が得意なのだ。
斜め上からの斬撃。横へ避けた後に空へ飛び退 いた俺へ、翼を持つ魔物群が一斉に襲い掛かる。
「熱波よ、薙ぎ払え!!」
俺が右手を横に大きく振る動きに合わせて、前方に超高温の風が発生した。火属性を持たない五十匹程度の魔物が一瞬にして黒焦げとなった。
「風の刃よ、我が敵を切り刻め!」
チャラ男が得意とする、かまいたちの魔法だ。当然俺にだって使える。なんせ魔王の前は賢者様。これで残っていた火属性の魔物と、背後から迫ってきていた数十匹の魔物の身体が分断された。
「はぁっ!」
地上からソルが大ジャンプをして空中の俺まで迫った。氷の剣による水平斬り。これも俺はかわした。ソルは魔法で身体を押し出すジャンプはできても浮遊はできないので、一旦地上へ降りた。
翼を持たない人間は不便だよな、ソル。魔物も飛ぶ術を持たない者は地上で戦いの行方を見守るしかない。だから浮遊術を使える俺は昔から空を主戦場としているのだ。
だがエリアスの祖先……、三百年前に俺と戦ったアーサー・モルガナンは弓の名手だった。正確な遠方射撃で上空にまで矢を飛ばしてきやがった。何十本、何百本も。太陽が眩しくて目がくらんでいれば良かったのに。ばーか。
「おっと」
俺の脇すれすれを、鳥型の魔物が鋭いくちばしを前にして通過していった。過去に想いを馳せている場合じゃないな。
更に地上から無数のファイヤーボールが飛んできた。ソルと同様に禁呪に手を出して闇落ちした、人間の魔術師達で結成された部隊が放ったのだろう。
俺は風魔法でジグザグに飛んで逃れたが、二発のファイヤーボールを避け切れず、身体を護る結界に当ててしまった。様々な攻撃を無効化する便利な結界だが、完全無敵という訳では無い。耐久力が有るのだ。一度破壊されると張り直すのに多少の時間を要する。
「はぁっ!」
気合い充分、再びソルがジャンプ攻撃を仕掛けてきた。上段斬り……と見せかけて、十数個の氷の弾を発射してきた。魔法剣士ならではの戦法だ。
回避行動が遅れた俺は、結界で五~六個の弾を受け止めることになった。
地上に降りたソルを俺は睨んだ。
一対一なら俺は誰にも負けない。ソル達もそれが解っているから物量作戦に出たのだろう。このまま戦い続ければいずれ結界が破られてしまう。ソル達はその時を待っているのだ。
くそ、またファイヤーボールが飛んできた。
「大地の杭よ、俺を邪魔する奴らを貫け!」
火球を避けながら、俺は地上の魔術師部隊へ魔法を放った。盛り上がった大地に魔術師達が跳ね飛ばされていくのが見えた。
「はぁっ!」
そのタイミングでソルのジャンプ攻撃だ。勤勉すぎるだろおまえ。今度は逃げられず、真正面から奴の魔法剣を結界で受けてしまった。
……まだ破られていないな? だが時間の問題だろう。
(本来ならエンディングが始まっている頃合いだ。始まらないということは、ループを壊すことができたのか?)
何らかの事情で部下が退却しない限り、俺は……きっとここで死ぬ。相手の数が多過ぎる。
今までは結婚エンディングが始まって、戦いが中断されたから助かっていたのだ。
十日目の先へ進めば、俺への死のカウントダウンが始まる。
それでいいんだ。俺は五百年近く生きてきた。もう充分だ。
ようやく自由を手に入れたエリアスに未来をあげたかった。だから死を覚悟して時間のループを壊す道を選んだ。余計なことをしたと、アイツは怒るだろうがな。
そしてもう一人……ロックウィーナ。奴と心を通わせてしまったのは大失敗だった。エリアスの為に未来を切り拓く、ただその為だけに動いていたというのに。死も恐れてはいなかったというのに。
あの小娘のせいで、俺の中に少しばかり未練と生への執着が生まれてしまった。
「はあぁっ!」
ソルの魔法剣が結界を掠 めた。パリンと音がして、俺の肌は凍てつく冷気を体感した。ああ、結界が破られたか。
地上に降りたソルは、次の攻撃で決めに来るだろう。俺も手の平に魔力を集中させて、大魔法を放つ準備に入った。
すまないな、ソル。おまえを道連れにさせてもらう。おまえを生かしておくと人類にとって脅威になりそうだから。
悪かった。俺を信じて付いてきてくれたのに。俺はおまえの望む王にはなれなかったよ。
手の平が熱い。ソルと刺し違えて死ぬと決めた俺は、眼下の世界を改めて見渡した。
美しいな。何てことはない何処にでもある草原だが輝いて見える。
………………………………ん?
草原の端っこに砂煙が立っていた。数は少ないがファイヤーボールも飛んで見える。そして慌てふためく魔物達の悲鳴が上がった。
ドドドドドドドドド!!!!
大剣を構えた俺のよく知る男が草原を大股で駆け抜けていた。その左右にはサポート役として、金髪のチャラい男と覆面で顔を隠した変態が並走していた。
「何だ!?」
突如現れた野蛮人達は一切の情け無しに、ソルが連れて来た軍団員達を血祭りに上げながらこちらへ近付いてくる。
制止しようとAクラスの魔物の集団が動いたので、俺はソル用に準備していた魔法弾をそちらに放った。
「爆 ぜ散れ!!」
全ての属性を混ぜ合わせた特殊魔法弾である。大地に接触したソレは、閃光を走らせた後に広範囲の魔物を巻き込んで爆発した。
グゴアァァァァァン!!!!
我ながら凄い威力だ。地形と生態系をちょっぴり変えてしまったかもしれない。
「危ねぇ!」
余波が少しチャラ男に届きそうになったが、まぁ大丈夫だろう。ギルドマスターならドンマイドンマイと言っているところかな?
「貴様は……エリアス・モルガナン!」
ソルが剣を奴らに向けて構え直した。
大剣を持った野蛮人は、我らが勇者エリアスだった。プラス愉快な仲間達。
おいおい。何故アイツらがここに居る? どうしてここが判ったんだ? 戦う場所を俺は伝えていないぞ?
重い剣と鎧を装着しながら、草原の端からソルの近くまで到達したエリアスに息の乱れは無い。また体力をつけたのか、化け物め。
ソルは憎々しげにエリアスを凝視した。
「よくも私の前に立てたものだ……!」
ソルは監視でエリアスの顔を知っていたが、エリアスにとってソルは初対面の相手だった。
「すまない、誰だったか?」
「魔王アルクナイトの側近ソルだ!!」
元、な。
「おまえがっ、おまえが私の王を惑わせた! 王の心をよくも盗んだな!!」
うん、まぁそうなんだが……ソル、言い方ってものがあるだろう? ほら、チャラ男がえぇ~って顔をしているぞ? 空に居ても俺は魔眼でみんなの表情が良く見えていた。
「そうか。貴様がこの軍団のリーダーか。ならば斬るまでだ」
戦いにおいて単純明快なエリアスは大剣をかざした。彼の基準は敵か味方か、ただそれだけだ。
「なめるなぁっ!!」
ソルは冷気を纏 った剣をエリアスへ振った。
「ふんっ!」
エリアスはソルの剣を自身の大剣で受け止めた。腕力と武器の強度に自信が有る者しかやってはいけない技だ。そして……、
バキンッ。
ソルの剣が粉々に砕けた。ソルは目の前で起こった現象に愕然とした。
「馬鹿な! 私の剣には魔法を付与しているのに!」
あー……そういえばエリアスの剣には魔王対策で、魔法を無力化する印が彫られているんだった。運が悪かったなソル、剣士としての純粋な勝負ではエリアスに分が有るぞ。
タタタタタタと、第一陣よりも軽やかな足音を響かせて第二陣が到着した。白魔術師キースと彼の防御障壁に護られた、小娘と恋愛体質のガキ魔術師だ。
「アルクナイトは!? 彼は何処? 生きてるんでしょ!?」
真っ先に俺の安否を確認する小娘。正直言ってちょっと嬉しかった。
「小娘風情が! 我が王の名を軽々しく口にするなど許され……」
「うるさい! さっさとここに魔王を出しなさいよ!!」
小娘を威嚇しようとしたソルがやり返された。
俺は苦笑して空からゆっくり地上へ降りた。心配してくれた奴らに無事な姿を見せてやらんとな。
「俺はここだ」
ロックウィーナの傍に降り立ち、魔王としての貫禄たっぷりに余裕のポーズを決めた。しかし馬鹿共は俺を誰だか認識できなかった。青年の姿を見せるのは初めてだった。
小娘は「きゃあ!」と小さく叫んで白の後ろへ隠れ、他の者はヒソヒソ呟きながら遠巻きに見ていた。
「やだあの人、コートの下の上半身ほぼ裸!」(小娘)
「見てはいけませんロックウィーナ。露出狂です」(白)
「あれ……でもあの服装ってさ……」(恋バナ好き)
「魔王様……? いやまさかな」(チャラ男)
「俺の知り合いに下乳を出した変態は居ない」(忍者)
「貴様ら! その無礼な口を今すぐ噤 まんか!」(元側近)
口々に好き勝手なことを言ってくれるな。敵対しているソルがフォローに回るとはどういう状況だ。
ここでエリアスが大声で叫んだ。
「あの腹出し男はアルだ! 私には解る! どんな姿になろうと私とアルの絆は永遠だ!!」
おまえは俺の恋人かと。
「噓。あんな破廉恥な格好をした魔王が居る?」
対して小娘はまだ懐疑的だった。二周前の世界では夫婦になったというのに薄情な奴。俺は溜め息を吐いて言った。
「小娘、おまえは上から84・59・88だ」
皆は最初キョトンとしたが、数秒後にその禁断の数字が意味することに気付いた。
「ぎゃーーーー!!!! このセクハラ魔王!!!!」
小娘の絶叫が草原にこだました。
斜め上からの斬撃。横へ避けた後に空へ飛び
「熱波よ、薙ぎ払え!!」
俺が右手を横に大きく振る動きに合わせて、前方に超高温の風が発生した。火属性を持たない五十匹程度の魔物が一瞬にして黒焦げとなった。
「風の刃よ、我が敵を切り刻め!」
チャラ男が得意とする、かまいたちの魔法だ。当然俺にだって使える。なんせ魔王の前は賢者様。これで残っていた火属性の魔物と、背後から迫ってきていた数十匹の魔物の身体が分断された。
「はぁっ!」
地上からソルが大ジャンプをして空中の俺まで迫った。氷の剣による水平斬り。これも俺はかわした。ソルは魔法で身体を押し出すジャンプはできても浮遊はできないので、一旦地上へ降りた。
翼を持たない人間は不便だよな、ソル。魔物も飛ぶ術を持たない者は地上で戦いの行方を見守るしかない。だから浮遊術を使える俺は昔から空を主戦場としているのだ。
だがエリアスの祖先……、三百年前に俺と戦ったアーサー・モルガナンは弓の名手だった。正確な遠方射撃で上空にまで矢を飛ばしてきやがった。何十本、何百本も。太陽が眩しくて目がくらんでいれば良かったのに。ばーか。
「おっと」
俺の脇すれすれを、鳥型の魔物が鋭いくちばしを前にして通過していった。過去に想いを馳せている場合じゃないな。
更に地上から無数のファイヤーボールが飛んできた。ソルと同様に禁呪に手を出して闇落ちした、人間の魔術師達で結成された部隊が放ったのだろう。
俺は風魔法でジグザグに飛んで逃れたが、二発のファイヤーボールを避け切れず、身体を護る結界に当ててしまった。様々な攻撃を無効化する便利な結界だが、完全無敵という訳では無い。耐久力が有るのだ。一度破壊されると張り直すのに多少の時間を要する。
「はぁっ!」
気合い充分、再びソルがジャンプ攻撃を仕掛けてきた。上段斬り……と見せかけて、十数個の氷の弾を発射してきた。魔法剣士ならではの戦法だ。
回避行動が遅れた俺は、結界で五~六個の弾を受け止めることになった。
地上に降りたソルを俺は睨んだ。
一対一なら俺は誰にも負けない。ソル達もそれが解っているから物量作戦に出たのだろう。このまま戦い続ければいずれ結界が破られてしまう。ソル達はその時を待っているのだ。
くそ、またファイヤーボールが飛んできた。
「大地の杭よ、俺を邪魔する奴らを貫け!」
火球を避けながら、俺は地上の魔術師部隊へ魔法を放った。盛り上がった大地に魔術師達が跳ね飛ばされていくのが見えた。
「はぁっ!」
そのタイミングでソルのジャンプ攻撃だ。勤勉すぎるだろおまえ。今度は逃げられず、真正面から奴の魔法剣を結界で受けてしまった。
……まだ破られていないな? だが時間の問題だろう。
(本来ならエンディングが始まっている頃合いだ。始まらないということは、ループを壊すことができたのか?)
何らかの事情で部下が退却しない限り、俺は……きっとここで死ぬ。相手の数が多過ぎる。
今までは結婚エンディングが始まって、戦いが中断されたから助かっていたのだ。
十日目の先へ進めば、俺への死のカウントダウンが始まる。
それでいいんだ。俺は五百年近く生きてきた。もう充分だ。
ようやく自由を手に入れたエリアスに未来をあげたかった。だから死を覚悟して時間のループを壊す道を選んだ。余計なことをしたと、アイツは怒るだろうがな。
そしてもう一人……ロックウィーナ。奴と心を通わせてしまったのは大失敗だった。エリアスの為に未来を切り拓く、ただその為だけに動いていたというのに。死も恐れてはいなかったというのに。
あの小娘のせいで、俺の中に少しばかり未練と生への執着が生まれてしまった。
「はあぁっ!」
ソルの魔法剣が結界を
地上に降りたソルは、次の攻撃で決めに来るだろう。俺も手の平に魔力を集中させて、大魔法を放つ準備に入った。
すまないな、ソル。おまえを道連れにさせてもらう。おまえを生かしておくと人類にとって脅威になりそうだから。
悪かった。俺を信じて付いてきてくれたのに。俺はおまえの望む王にはなれなかったよ。
手の平が熱い。ソルと刺し違えて死ぬと決めた俺は、眼下の世界を改めて見渡した。
美しいな。何てことはない何処にでもある草原だが輝いて見える。
………………………………ん?
草原の端っこに砂煙が立っていた。数は少ないがファイヤーボールも飛んで見える。そして慌てふためく魔物達の悲鳴が上がった。
ドドドドドドドドド!!!!
大剣を構えた俺のよく知る男が草原を大股で駆け抜けていた。その左右にはサポート役として、金髪のチャラい男と覆面で顔を隠した変態が並走していた。
「何だ!?」
突如現れた野蛮人達は一切の情け無しに、ソルが連れて来た軍団員達を血祭りに上げながらこちらへ近付いてくる。
制止しようとAクラスの魔物の集団が動いたので、俺はソル用に準備していた魔法弾をそちらに放った。
「
全ての属性を混ぜ合わせた特殊魔法弾である。大地に接触したソレは、閃光を走らせた後に広範囲の魔物を巻き込んで爆発した。
グゴアァァァァァン!!!!
我ながら凄い威力だ。地形と生態系をちょっぴり変えてしまったかもしれない。
「危ねぇ!」
余波が少しチャラ男に届きそうになったが、まぁ大丈夫だろう。ギルドマスターならドンマイドンマイと言っているところかな?
「貴様は……エリアス・モルガナン!」
ソルが剣を奴らに向けて構え直した。
大剣を持った野蛮人は、我らが勇者エリアスだった。プラス愉快な仲間達。
おいおい。何故アイツらがここに居る? どうしてここが判ったんだ? 戦う場所を俺は伝えていないぞ?
重い剣と鎧を装着しながら、草原の端からソルの近くまで到達したエリアスに息の乱れは無い。また体力をつけたのか、化け物め。
ソルは憎々しげにエリアスを凝視した。
「よくも私の前に立てたものだ……!」
ソルは監視でエリアスの顔を知っていたが、エリアスにとってソルは初対面の相手だった。
「すまない、誰だったか?」
「魔王アルクナイトの側近ソルだ!!」
元、な。
「おまえがっ、おまえが私の王を惑わせた! 王の心をよくも盗んだな!!」
うん、まぁそうなんだが……ソル、言い方ってものがあるだろう? ほら、チャラ男がえぇ~って顔をしているぞ? 空に居ても俺は魔眼でみんなの表情が良く見えていた。
「そうか。貴様がこの軍団のリーダーか。ならば斬るまでだ」
戦いにおいて単純明快なエリアスは大剣をかざした。彼の基準は敵か味方か、ただそれだけだ。
「なめるなぁっ!!」
ソルは冷気を
「ふんっ!」
エリアスはソルの剣を自身の大剣で受け止めた。腕力と武器の強度に自信が有る者しかやってはいけない技だ。そして……、
バキンッ。
ソルの剣が粉々に砕けた。ソルは目の前で起こった現象に愕然とした。
「馬鹿な! 私の剣には魔法を付与しているのに!」
あー……そういえばエリアスの剣には魔王対策で、魔法を無力化する印が彫られているんだった。運が悪かったなソル、剣士としての純粋な勝負ではエリアスに分が有るぞ。
タタタタタタと、第一陣よりも軽やかな足音を響かせて第二陣が到着した。白魔術師キースと彼の防御障壁に護られた、小娘と恋愛体質のガキ魔術師だ。
「アルクナイトは!? 彼は何処? 生きてるんでしょ!?」
真っ先に俺の安否を確認する小娘。正直言ってちょっと嬉しかった。
「小娘風情が! 我が王の名を軽々しく口にするなど許され……」
「うるさい! さっさとここに魔王を出しなさいよ!!」
小娘を威嚇しようとしたソルがやり返された。
俺は苦笑して空からゆっくり地上へ降りた。心配してくれた奴らに無事な姿を見せてやらんとな。
「俺はここだ」
ロックウィーナの傍に降り立ち、魔王としての貫禄たっぷりに余裕のポーズを決めた。しかし馬鹿共は俺を誰だか認識できなかった。青年の姿を見せるのは初めてだった。
小娘は「きゃあ!」と小さく叫んで白の後ろへ隠れ、他の者はヒソヒソ呟きながら遠巻きに見ていた。
「やだあの人、コートの下の上半身ほぼ裸!」(小娘)
「見てはいけませんロックウィーナ。露出狂です」(白)
「あれ……でもあの服装ってさ……」(恋バナ好き)
「魔王様……? いやまさかな」(チャラ男)
「俺の知り合いに下乳を出した変態は居ない」(忍者)
「貴様ら! その無礼な口を今すぐ
口々に好き勝手なことを言ってくれるな。敵対しているソルがフォローに回るとはどういう状況だ。
ここでエリアスが大声で叫んだ。
「あの腹出し男はアルだ! 私には解る! どんな姿になろうと私とアルの絆は永遠だ!!」
おまえは俺の恋人かと。
「噓。あんな破廉恥な格好をした魔王が居る?」
対して小娘はまだ懐疑的だった。二周前の世界では夫婦になったというのに薄情な奴。俺は溜め息を吐いて言った。
「小娘、おまえは上から84・59・88だ」
皆は最初キョトンとしたが、数秒後にその禁断の数字が意味することに気付いた。
「ぎゃーーーー!!!! このセクハラ魔王!!!!」
小娘の絶叫が草原にこだました。