第24話 優しい嘘
文字数 1,819文字
「貴様か、二人目のブル―。無駄なあがきを続けおって」
「ある人にそう教わったから。また未来で」
その言葉と同時に世界に光が差し込み、巨大な10本の聖剣が降りてくる。メルフェスを囲うように降りてくる聖剣が審判を下す。
ミルカは圧倒的な力は有無を言わせずメルフェスをねじ伏せた。
この世界から仮初の体と一緒に消えるメルフェス。
しかし、ミルカにはまだやるべきことが残っていた。
メルフェスはいずれまたこの世界にやって来る。その時の、彼は更に強大な力思ってミルカに立ちはだかるだろう。ならば、未来に向けて準備しなければいけない。
隠れていた太陽が顔を覗かせていた。もう時間はない。
ミルカは休むことなく身を翻し、大空へと消えていった。
ハイネとナディアはボロボロの姿で王都グエンモールについた。
王都は戦争の影響を受けてはおらずキレイな町並みが広がっている。
ミルカ女王からここがカルド王との最後の決戦となったと聞かされていた二人は安堵する。
城に着くとミルカが二人を出迎え、傷を癒やした。そして、終戦を伝えられた二人は用意された別室で重い腰をおろした。
「ナディア、どうする?」
ミルカが二人の将来を約束し、一つ願いを叶えると言っていた。
ハイネの問いかけにナディアは考え込んだまま答えない。心ここに無しと言った感じだ。
「一番の願いは叶えてしまったものね。今からでも普通の人生をもう一度送ってみる?」
ナディアの願いは普通の人生を送ること。戦争に行く前のブルーの問いかけでそう答えていた。
そしいて、ハイネの願いはいつまでも一緒にナディアといることだった。
ハイネはミルカから過去の戦場では二人共戦死したことを聞き出していた。だからこそ、この戦争で生き残った時点でハイネの願いも叶っていた。
二人の本当の願いは既に叶っている事実にハイネの頬が緩む。
笑顔でもう一度ナディアに問いかけようとしたハイネ。
ナディアの真剣の眼差しを前にハイネの口から言葉が出ることはなかった。
今思い返してみればずっとナディアの元気がないような気がする。願いを叶え生きる気力を失ったからだろうか。
「ねぇ……お姉ちゃん」
その言葉に意識が吸い込まれる。
「あいつは、火を付けていないって言ってた。……なんで、……お母さんは死んだの?」
ハイネはその言葉に絶句する。
その事実を知っているなら真相は直ぐ目の前にある。しかし、ナディアの状況から必死に真実に結び付けないようにしていた。だから、先程から上の空でミルカの言葉にもハイネの言葉にも殆ど反応を示していなかったのだ。
ナディアの虚ろの瞳がそう言っている。
ハイネは必死に考え、そして一つの選択を取る。
ハイネの何よりも願いはナディアに幸せでいてもらうこと。そのためなら、ナディアと離れ離れになってしまっても良かった。
「私が……火を付けたの」
その言葉にナディアが驚いたようにハイネを見る。
ハイネは冷たい目でナディアを見つめながら続けた。
「私達家族はとても貧乏だった。未来に希望を求めることができないほどに。でも、私にはどうしても欲しいものが合ったの。このイヤリング。だから、コレ欲しさと安定した生活を求めて、私は奴隷商人のフェリッドに家族を売ったの。そして、家に火を付けた」
「ど、どうして……」
「飢えを経験したことある?私達はあのままならどのみち死んでいた、だからフェリッドを頼ったの」
「……お母さんをどうして!」
ナディアは涙を流しながらハイネの両肩を擦る。
「殺すつもりはなかった、……ただ逃げるのが遅れて」
「なんでなんで、なんで‼」
怒鳴りながらハイネを押し倒すナディア。
その騒動を聞き、ミルカが白い羽と同時にその場に現れナディアを止める。
「何をしてるの」
急いで立ち上がるハイネはミルカに一礼し、冷静にことの経緯を伝える。
ミルカの前でことを荒立てる事ができなナディアも一旦は冷静を取り戻した。
ミルカの立ち会いのもと、ナディアは城を出て母親が求めたような普通の生活を送ることが決まり、ハイネは城に残ることを決めた。
城に残ったハイネの手のひらに残るもう片方のイヤリング。
「そのイヤリング。妹のために買った、おそろいのものだったんでしょ。渡さなくてよかったの」
「はい。もう必要なくなりましたから」
ハイネはそう言うともう片方の綺麗な耳にイヤリングを刺した。痛みで口を歪ませるハイネ、耳から一滴の血が滴り落ちた。
「ある人にそう教わったから。また未来で」
その言葉と同時に世界に光が差し込み、巨大な10本の聖剣が降りてくる。メルフェスを囲うように降りてくる聖剣が審判を下す。
ミルカは圧倒的な力は有無を言わせずメルフェスをねじ伏せた。
この世界から仮初の体と一緒に消えるメルフェス。
しかし、ミルカにはまだやるべきことが残っていた。
メルフェスはいずれまたこの世界にやって来る。その時の、彼は更に強大な力思ってミルカに立ちはだかるだろう。ならば、未来に向けて準備しなければいけない。
隠れていた太陽が顔を覗かせていた。もう時間はない。
ミルカは休むことなく身を翻し、大空へと消えていった。
ハイネとナディアはボロボロの姿で王都グエンモールについた。
王都は戦争の影響を受けてはおらずキレイな町並みが広がっている。
ミルカ女王からここがカルド王との最後の決戦となったと聞かされていた二人は安堵する。
城に着くとミルカが二人を出迎え、傷を癒やした。そして、終戦を伝えられた二人は用意された別室で重い腰をおろした。
「ナディア、どうする?」
ミルカが二人の将来を約束し、一つ願いを叶えると言っていた。
ハイネの問いかけにナディアは考え込んだまま答えない。心ここに無しと言った感じだ。
「一番の願いは叶えてしまったものね。今からでも普通の人生をもう一度送ってみる?」
ナディアの願いは普通の人生を送ること。戦争に行く前のブルーの問いかけでそう答えていた。
そしいて、ハイネの願いはいつまでも一緒にナディアといることだった。
ハイネはミルカから過去の戦場では二人共戦死したことを聞き出していた。だからこそ、この戦争で生き残った時点でハイネの願いも叶っていた。
二人の本当の願いは既に叶っている事実にハイネの頬が緩む。
笑顔でもう一度ナディアに問いかけようとしたハイネ。
ナディアの真剣の眼差しを前にハイネの口から言葉が出ることはなかった。
今思い返してみればずっとナディアの元気がないような気がする。願いを叶え生きる気力を失ったからだろうか。
「ねぇ……お姉ちゃん」
その言葉に意識が吸い込まれる。
「あいつは、火を付けていないって言ってた。……なんで、……お母さんは死んだの?」
ハイネはその言葉に絶句する。
その事実を知っているなら真相は直ぐ目の前にある。しかし、ナディアの状況から必死に真実に結び付けないようにしていた。だから、先程から上の空でミルカの言葉にもハイネの言葉にも殆ど反応を示していなかったのだ。
ナディアの虚ろの瞳がそう言っている。
ハイネは必死に考え、そして一つの選択を取る。
ハイネの何よりも願いはナディアに幸せでいてもらうこと。そのためなら、ナディアと離れ離れになってしまっても良かった。
「私が……火を付けたの」
その言葉にナディアが驚いたようにハイネを見る。
ハイネは冷たい目でナディアを見つめながら続けた。
「私達家族はとても貧乏だった。未来に希望を求めることができないほどに。でも、私にはどうしても欲しいものが合ったの。このイヤリング。だから、コレ欲しさと安定した生活を求めて、私は奴隷商人のフェリッドに家族を売ったの。そして、家に火を付けた」
「ど、どうして……」
「飢えを経験したことある?私達はあのままならどのみち死んでいた、だからフェリッドを頼ったの」
「……お母さんをどうして!」
ナディアは涙を流しながらハイネの両肩を擦る。
「殺すつもりはなかった、……ただ逃げるのが遅れて」
「なんでなんで、なんで‼」
怒鳴りながらハイネを押し倒すナディア。
その騒動を聞き、ミルカが白い羽と同時にその場に現れナディアを止める。
「何をしてるの」
急いで立ち上がるハイネはミルカに一礼し、冷静にことの経緯を伝える。
ミルカの前でことを荒立てる事ができなナディアも一旦は冷静を取り戻した。
ミルカの立ち会いのもと、ナディアは城を出て母親が求めたような普通の生活を送ることが決まり、ハイネは城に残ることを決めた。
城に残ったハイネの手のひらに残るもう片方のイヤリング。
「そのイヤリング。妹のために買った、おそろいのものだったんでしょ。渡さなくてよかったの」
「はい。もう必要なくなりましたから」
ハイネはそう言うともう片方の綺麗な耳にイヤリングを刺した。痛みで口を歪ませるハイネ、耳から一滴の血が滴り落ちた。