第3話   あれから 麗

文字数 897文字

今井麗はバイ・セクシャルの女だった。
「男も、女もOKだけれど、どちらかと言うと、女の子が好きね」
初めて体を重ねた日、彼女はそう言った。

「離婚した夫も同じ。でも夫はどちらかと言うとゲイだったの。私達は似た者同士だった。
お互いに好きな様にしてお互いを縛ることはなかった。それなのに・・・あいつときたら、ゲイだったはずなのに、女の子を妊娠させて、私に離婚してくれって泣き付いてきたの。もう、最低。ふざけんなって言ったわ。

俺はどうしても、自分の子供が可愛いんだって言って。
私には自分の生活を楽しみたいから子供は要らないとか言っていたくせに・・・何なの、この男って、猛烈に腹が立った。

でも、きっと男ってそう言う生き物なのでしょうね。身勝手で、いい加減で。嘘吐きで。・・・
あいつは、その妊娠した若い女に騙されたのだと思うわ。
芸能関係の仕事をしていたし、見た目もまあまあ、金もあったしね。チョロい男よ。
この部屋をぶん取って追い出したわ。・・・今?今は知らないわ。知りたくも無い。

私はもう結婚はこりごり。マンションもあるし、給料もそこそこ稼げるし、後は好きに自由に暮らして行く積り。」

麗は笑いながら明るく言った。
由瑞は苦笑するしか無かった。

「だから、あなたも遊びでいいの。傷心のあなたを癒してあげる。私には本命の、可愛い子がいるから」
麗は由瑞の頬に手を当ててそう言った。
「・・・だけど、あなたみたいな極上の男を振るなんて、その子も余程の馬鹿ね」
麗は言った。
由瑞は少し考えて答えた。
「ああ・・・。俺もそう思うよ。でも、相手の男もいい男だったんだ」
麗は声を上げて笑った。
「何、それ。頂上対決?・・・・嫌だ。それで負けたの?是非、その男を見てみたい」
「いや、負けたわけじゃない。譲ったんだ。・・・そう言う事にしておいてくれ」
由瑞は言った。


麗は笑うのをやめて由瑞をじっと見詰めた。
そしてその頭を胸に抱くと
「あなたも馬鹿ね・・・・それでいて、その子が忘れられないのね」と言った。


「何で俺と付き合うの?」
由瑞は聞いた。
「だって、あなたと歩くと見栄えがするから。私の身長に合う人ってなかなかいないのよ」
麗はそう言って笑った。
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