第12話  麗 6月

文字数 813文字

その夜、麗は家で理沙の言葉を思い出していた。

理沙は由瑞の写真を見て言った。
「とても素敵な人ね。麗。こんな素敵な人と恋が出来たなんて本当に羨ましい」
「何が羨ましいのよ。振られたのよ?」
「そんな人とお付き合いが出来たことが羨ましいのよ。私なんて生まれた時から婚約者がいるのだから。いつの時代だって言いたいわ。もう探すのも面倒だからそれでもいいけれどね。」


理沙は水を一口飲むと、グラスを置いた。
「ねえ。麗。その由瑞さん。まだ独身でいるのなら、コンタクトを取ってみれば?」
「えっ?」
麗は慌てて返す。
「何を馬鹿な事、言っているの?私は嫌よ。今更。恥ずかしい。
もう連絡先も消してしまったし・・・。そんなに簡単に彼と連絡はとれないわ。だって、彼は私の勤めている会社『株式会社saeki 』の御曹司だし。雲の上の人なのよ」
「あら!まあ!だったら、あなた凄い玉の腰じゃないの!これは絶対に会うべきよ」

理沙はグラスを持ったまま、黙って麗を見ている。
頭の中で何かを計画しているみたいだ。
麗は噴き出した。
「嫌だ。理沙。私は一度振られているんだから。そんな事はしないわよ。それに彼はすごくモテるから、独身だとしてもきっともう次の人がいると思う」


「そんなの分からないでしょう?じゃあ、それも含めて、何かいい方法を探しましょう。彼に会うために。まず、独身かどうかから調べ始めなくては・・・。わくわくする。ねえ、麗。私、あなたの幸せの為に頑張るから、あなたも頑張りなさいよ」

「何を?」
「集めるのよ。彼の情報を。それと、いい?美しくするのよ。今まで以上に。若い女に負けないくらいに」
「だって、私はもう36よ。」
「彼は?」
「私より6つ下だから30」
「あら、年下の彼氏。結婚には旬な年頃じゃないの。大丈夫。麗。まだ子供は産めるわ」
理沙はそう言うと笑った。


理沙は本当に由瑞とコンタクトを取る積りなのかしら・・。
何を考えているのやら・・・。
麗は「今更なのに」と思った。

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