第11話  銀座のパーラー  6月  

文字数 874文字

6月のある日曜日。

麗と女友達は銀座の有名フルーツ店にパフェを食べに行った。
結構混んでいるなと思いながら、ぐるりと店内を見渡す。
「あら・・・」
麗は目を止めた。

窓際にいる女性の二人組。
大きな苺パフェを前にして、楽しそうにおしゃべりをしている。
その片方に見覚えがあった。


「どうしたの?」
友人は麗に問い掛ける。そしてその視線の先を追う。

麗は笑った。
「・・・あの子だわ」
「誰?」
「ほら。あの二人」
麗は首をくいっと動かす。
友人もそれを見る。
「何だっけ・・・そうそう。樹ちゃん」
麗は呟く。
「誰?その人?」
友人は尋ねる。
その女性もスレンダーで、麗ほどではないが背は高めだ。
店員がやって来て二人を席に案内する。

麗は樹に背を向けて座る。
「ほら、昨年・・・・私がちょっと付き合っていた男性。話したことが有るわよね。すごいイケメン。佐伯由瑞。同じ会社に勤めていた・・・そんな彼を振ったお馬鹿な子」


「どっち?」
「こっちを向いている人。髪の短い方」
「ふうん・・。大した子じゃないわね。そのイケメンの彼氏、写真はあるの?見せてくれる?」
麗は友人を見る。
「あら、理沙。どういう風の吹きまわしかしら?興味無さげだったのに。」
「あの時は猛烈に忙しくて、人の恋バナ所じゃなかったの。ニューヨークに道場を新設するので。この4月でようやく落ち着いたから。きっと素敵な恋だったのでしょうね。残念だわ。是非その人とお会いしたかったわ。ねえ。写真を見せて。それでちょっとその恋バナを聞かせてよ」

「いいわよ。でも、あなたがこっちにいなくて良かったわ。いたらきっと取られていたでしょうね」
そう言うと麗は笑った。
理沙は噴き出す。
「嫌だ。何を言うの?友人の彼氏を盗むなんて。そんな根性悪じゃないわよ」
「どうかしら?ふふふ。」
麗は言った。

「ほら、あなたと良く行った。・・・そうそう、あの日はあなたがドタキャンをしたから、私は独りで出掛けたのよ。3か月振りにアメリカから帰って来ると言うから御馳走してあげようと思ったのに。それでまたあなたはアメリカにとんぼ返り。結局会えなくて。私は寂しかったわ」
麗は言った。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み