第19話  占い3    

文字数 832文字

「何で、あなたが麗の紹介状を持っているの?」
由瑞はソファに座った理沙を見下ろして言った。

「麗が来ることが出来なくなったから。代わりに来たのよ」
理沙は言った。
「どうして?」
「事故に遭ったから」
「えっ?」
由瑞は驚いた。
「いつ?」
「5日程前だったわね・・。あなたに会えるかもしれないって喜んでいたけれど・・
運が悪かったわ。で、苦労してここを探し当てて予約を取ったから、私が替わりに来たの」
「で、麗は?」
「大したことはないの。足を骨折しただけ」
由瑞はほっとした。
理沙はその顔を眺める。

「由瑞さん。もし良かったら麗を見舞ってくださらないかしら?麗もきっと喜ぶわ。麗の連絡先はご存じ?一応入院先も置いて行くわね。私、あなたに会った事を麗に伝えて置くわ。貴方が独身だという事も」
微笑んでそう言うと、一枚のメモを由瑞に渡した。そして蘇芳の顔を見る。
「蘇芳さん。占いを有難う御座いました。すごく面白かったです」
「お役に立てて幸いです」
蘇芳もにっこりと笑う。


理沙は窓の外に視線を移す。
「いい所ですね。自然が一杯で。きっと動物もいるのでしょうね」
蘇芳も外を見る。
「いますよ。山には鹿やタヌキ。サルや熊もいます。猪も。畑に入らない様にぐるりと柵を巡らせてあるの。ここには貴重な薬草もあるし、毒草もあるから」
「でも、サルやリスは入って来るでしょう?」
「リスはね。まあ仕方無いかな。でも、柵の一番上は有刺鉄線が狭い間隔で数本引かれてあるから、滅多に入らないのよ」
「ああ・・。成程」
理沙はふうん・・・と言って外を眺めた。


「蘇芳さん。私、また来ます。ところで、次回紹介状は必要ですか?」
視線を蘇芳に戻すと理沙は言った。
「そうですね。今回は麗さんの紹介状なので。一応。それがルールですので」
蘇芳は言った。
「東藤家でも?」
理沙は返した。
「東藤家でも」
蘇芳も返す。

理沙はにっこりと笑って言った。
「分かりました。では、帰りますので、タクシーを呼んでくださいませんか?」
「はい。すぐに」
蘇芳も笑って答えた。




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