第17話  占い  9月  1

文字数 672文字

蘇芳は目の間で水晶玉をのぞき込む女性を眺めた。
・・・しかし、驚いた。まさかのまさかだわ・・・。


今月の末に出産予定である。
今日は出産前の最後の占い。
そこに現れたのは・・・。


女性は水晶玉から顔を上げると、ふうと息を吐いて椅子に寄り掛かった。

「何かご覧になれました?」
蘇芳は聞いた。
「いいえ。何も」
女性はそう答えて蘇芳を見た。


目の前の女性は髪を肩に流し、センスのいい服装をしている。
蘇芳は占いの部屋に入って来た彼女を一目見るなり、ぴんと来た。
長身、スレンダー、モデル風の女性・・・。
笑う時にはちょっと口の端を上げる。冷静な感じがする。
くっきりと彫った様な二重瞼。その目尻に3つ黒子がある。

たっぷり一分間彼女を見詰めた。
元カノ・・。由瑞。元カノが来たぞ。来ちまったぞ。どうする?
彼女から読み取れるイメージの中には確かに由瑞がいると思った。


でも、この人のこの黒子・・どこかで見た事がある様な・・・。
それが気になる。


しかし、この女性はやばい。
中身がやばい。
幾ら失恋で病んでいたとは言え、どうしてこんな危ない女性と付き合っていたのか。
悲しさの余り、頭がマヒしていたとしか思えない。

蘇芳はにこりと笑って言った。
「では失礼ですが、両手を・・」
蘇芳は言葉を止めた。
じっと女性を見詰める。
「両手を?」
女性は首を傾げる。

「両手を水晶玉に翳して・・・そうです。包むようにして・・触れない様にしてください。
それで願い事なり、迷っている事なりを頭に思い描いてください」


蘇芳は両目を軽く瞑った女性の顔をつくづくと眺める。
「あっ!」
頭の中の何かと繋がった。
蘇芳は呆然と女を見た。
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