冬至まつり800
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『あなねむい』 舞神光康
「マジでヤンスか・・・・・・」
モグラのヤン・スーはひどく困っていた。クリスマスを共にする彼女もいないので、早めの冬眠にふけっていたのに上から地響きが聞こえてくるのだ。どうやら誰かが真上で冬眠を始めたらしい。
「おい! 起きるでヤンスよ!」
ベッドの上に乗り出して天井を叩いた。
ヤン・スーは苛立っていた。そもそも横穴式のモグラの居住地に対して縦穴式に交差してこようなんていうのが気に喰わない。
何度声を荒げでも上の住人は起きる気配がしない。そのため強行手段を取るしかなかった。鋭い爪を使い天井に穴を開ける。轟音と共に湿気が流れ込んでくる。
首根っこ掴んで叩き起こしてやる!
手を探り入れると手が滑る。
なんだこの感触は
そう思った瞬間には天井は崩れ、ウシガエルのキューイ・グルが落ちてきた。女をカエルのような形にひっくり返すのは好きだが、それが逆の立場になると不快である。
「うわー。ビックリしたなぁもぉ」
キューイは寝ぼけ眼球を手で擦りながら謝るでもなく寝足り無いという風で顔に吐息をかけてくる。
「ああ、フカフカのベッドじゃないか、ありがとう」
キューイはそういうとヤンの上から飛び降りて土まみれのベッドに潜り込んだ。
「ところで、なんで僕は君の家にいるんだい?」
ヤン・スーは呆れて言葉が出なかった。
マイペースな野郎にせっかく温めたベッドをヌメッた茶色の男に盗られたのだ。
「ああ、ゴメンよ君も入るかい?」
ひらりとめくられた毛布から覗く太ももが無駄に艶めかしく、ようやく怒りに火がついた。
「ふざけるな! ここはオレの家でヤンス!」
布団を引き剥がそうとした瞬間、キューイは抱きついてきた。
変温動物のもつ独特の冷たさと皮膚の吸い付きがヤン・スーの胸をときめかせた。
「こういうのも悪くないだろ」
「ヤンス・・・・・・」
今年の冬は寝不足になるだろう。
maigami_mituyasu
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