冬至まつり800

「冬至ストゥー(あるいは、明日の尻の心配は明日する)」藤沢チヒロ

エピソードの総文字数=800文字

妹よ、俺は北海道の魂を捨ててしまったよ

CHIHIRO_F

何だ突然

CHIHIRO_F

この前の冬至さ。

最高気温26度だぞ? ぜんぜんクリームシチューって気候じゃないのさ

CHIHIRO_F

すごいね、こっちよりあったかい

CHIHIRO_F

そっち夏だよな? サンタが水上スキーに乗ってくるって本当か?

CHIHIRO_F

うんまあ。そういうイベントはある。

夏祭りとクリスマスが一緒に来る感じで、調子は狂うけど楽しいよ。

でもうちは、そこは我が家の伝統だもの、ハウスのミックス取り寄せて作ったけどなぁ冬至シチュー。お兄ちゃんはそっか、食べなかったか。札幌で母が泣いてるぞ

CHIHIRO_F

いやシチューは食ったんだよ。

俺が「冬至は実家でシチューを食べるのが習わしだ」って言ったら、ええと友達?が作ってくれたんだけど……シチューってか、「ストゥー」って言ってたな? なんかトマト味の煮物的な何かだったんだよ。

CHIHIRO_F

あ、缶詰のやつだ

CHIHIRO_F

知ってんの?

CHIHIRO_F

その缶詰たぶんこっちの国の製品でしょ。「ランチョンミート」とかと並んで県民のソウルフードだってきいたことある

CHIHIRO_F

へぇ

CHIHIRO_F

ねぇお兄ちゃんさ……彼女できた?

CHIHIRO_F

え、できてない。

CHIHIRO_F

シチュー作ってくれたのって女子じゃ?

CHIHIRO_F

ない。男だ男。職場の後輩。

シチューだって缶詰開けただけだし……いや、ヘチマ入れてたな。意外と旨かった。

それはいいとして、ただなぁ

CHIHIRO_F

ただ?

CHIHIRO_F

この前忘年会で、そいつに告白されて……

CHIHIRO_F

えぇっ?


(オギャーーー!)

CHIHIRO_F

あっ!

マミが起きちゃった! おっぱいかなぁ。ごめんごめん、続きはチャットにして。

ていうかそのシチュー男子の写真送って!

CHIHIRO_F

あ!? チャットでこの話続けるのは勘弁だ…

CHIHIRO_F

通話が途切れた。

私はベビーベッドでグズる娘を抱き上げ頬ずりする。あー、ミルクの匂い。

人の好い兄のことだ。いま、すごく悩んでるんだろうな。

頑張れよ、兄!


無責任な激励を空に投げて、今夜の献立に思いをはせる。
ストゥーの缶詰、近所のウールワースに売っていた気がする。

ヘチマはないけど、こっちはズッキーニが美味しい季節だから、入れて作ってみようかな。

CHIHIRO_F

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