「クリスマスプレゼント」今村広樹

文字数 815文字

『クリスマスプレゼント』 今村広樹



トン、トン、トン



「はあい、何かしら?」

ここは世界の果てにあるという図書館。

こんなところに人が来るのかしらっと、近くにある唯一の街の人は言いますが、不思議なことに、定期的にお客さんが来るようです。

今回の少女のように。

その少女といえば、『いしころおひめさま』という『おおうなばらのたびびと』という二冊の絵本を借りようとしています。が、

「あ、お姉さん、待ってね」

と、いうと、カバンから、何かを取り出しました。

「お姉さん、はあい」

「あら、何かしら?」

「クリスマスのプレゼントだよ」

「まあ、ありがとう、なにかしら?」

と、お姉さんが少女のくれた包みを開けると、中には、セーターとマフラーが1揃え入っていました。

「あら、私なんかのために、編んでくれたの?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、おかえしじゃないけど、サンタさんが貴女のためにって、私に預けたモノがあってね」

お姉さんは、机の引き出しから、赤い長靴を取り出しました。

「わあ、お姉さんありがとう」

「お礼はサンタさんに言おうね」


お姉さんはそういうと一瞬顔を曇らせました。



その時お姉さんの頭の中に浮かんだモノは、腹から血を大量に出ている男の姿でした。彼はこう言います。

『これを、うちの娘に渡してほしい。人生最期に親らしいことをしようと思ってね』

と、言うと男はよろめきながら、外へ去っていきました。


残ったのは、雪の上に点々と血の跡だけ。



「わあ、私のほしかった魔法少女まじめちゃんのステッキとか入ってる!


サンタさんって、ホントに人が欲しいものわかるんだね!」

と、少女が喜んでいるのを見て、われにかえったお姉さんは、穏やかな笑みを浮かべながら、こう返しました。


「そうよ、サンタさんって、貴女のこと何でも知ってるのよ」

「へえ、スゴいねえ」

何も知らない少女の足元に、図書館に住み着いている猫が来て、アクビしていました。
2018/12/23 23:15

yonoco

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