タイトル「多重混合終局世界オメガアルファ」
2018年12月22日 北極
「これで世界が一つになる!」
「止せ!重複存在が統合に耐え切れずに消滅する!お前も!あの娘も!」
「今更遅い!全ては終わって始まるんだ!」
平成最後の冬至。
幾重もの世界が統合され、分断された歴史は終局を迎えた。
~ 一年後 ~
「皆様お疲れ様でした~、乾杯!」
『『乾杯!』』
ここは居酒屋はじめ。
店内は枝葉世界出身者達で溢れ、各々がこの一年の騒動を酒の肴に振り返っている。
彼等は自らの目的の為に動乱を納めた功労者であり、世界を救った英雄達である。
「そう言えば俺の世界じゃ冬至は南瓜を食べるんだが、他はどうなんだ?」
麦酒を飲んでいた純種の青年がそう言うと、
「え、トージって氷の女王を倒したトージを奉る日でしょ?」
金髪の魔導種の女性がそう応え、
『我々は香油を混ぜた弾で祝砲をあげる』
全身を陽金属で包んだ機械種の男性が応える。
「肉ヲ芋ノ粉デ包ンダ物ヲ子ニ食ワセルゾ」
精霊憑きの少女(外見は)がそう言うと、
「同じ様な風習もあるのだな。こっちも肉饅頭を食べるぞ」
キベルネテス処理の女性がそう応え、
「根は同じ。似る物ある」
昆虫種の若者が応える。
ここには世界間による差別は無く、全員が全員を仲間として接している。
そんな彼らだからこそ、世界を救えたのだ。
ヴー ヴー ヴー
宴もたけなわな頃、終末警報が鳴った。
(大変よ!新しい枝葉世界が現れたわ!)
居酒屋内に管理局の人造神からの思念波が届き、宴の終わりが告げられた。
しかし彼等は嫌な顔一つせず、装備の確認をしながら出口に向かう。
その顔は期待に満ちており、寧ろこの警報を待っていたかのようだ。
そして、先頭に立った純種の青年が声を挙げる。
「いくぞ皆!まだ見ぬ食のために!」
『『応!!』』
彼等は『多重混合世界グルメ同盟』。
未だ見ぬおいしい物を食べるために、数多もの世界を救った英雄達である。
この世に料理がある限り、そうそう簡単に世界が滅ぶことは無いのだ。