冬至まつり800
前のエピソードへ「「恩返しのサギ」大澤めぐみ」
セリフを投稿
文字数 795文字
あの言葉を今では呪わしく思っている私がいる。 11月も半ばに入った辺りで初雪が降り、気づけば車の窓は毎朝凍結している。 窓が凍結しているという事は道路もで、そのせいで私はいつもより30分は早く起きないといけない。 これだから冬は嫌いだ。「そうかな? 僕は冬、嫌いじゃないけどね」 私の愚痴を聞きながらみかんをむいている君は言う。 雪国出身で雪との接し方も慣れた君はそうかもしれないけどさ。 私は雪なんて生まれてこの方数回しか見たことがないくらいの南国育ちで、こっちに引っ越してきてからというもの、冬には憎しみしかない。 みかんをひとかけ口にして、君は言った。「今日は冬至だね」 冬至。夜が一番長いとかなんとか言う日らしいけど。 冬至とかどうとか関係なしに今日も寒い。 仕事から帰って来たら部屋は氷点下だった。 そのくせ君は氷点下の部屋の中の布団でぐっすりと寝息を立てていた。 布団の中とはいえ寒くはなかったのだろうか?「布団の中は寒くないよ」 全く、私が働いてきているというのに能天気なものだ。「人生に休息は必要だよ」 今日の晩御飯はどうしようか? 「こんなに寒いなら暖かいものが食べたいよね。シチューとか」 冷蔵庫の中を漁る君の背中を見ながら私はTVの電源を入れた。 「あ、そういえばさ、僕の家族から荷物が届いたんだよ。今日」 君の家は確か農家だったはず。「今日って冬至だからってさ、こーんなにかぼちゃが送られてきて」 って台所の床下から段ボールを取り出したかと思ったら、でっかいかぼちゃが転げ落ちて来た。こんなに送られても二人で食べきれる量じゃないっての。「大丈夫だよ。僕食べるのだけは凄いから」 はいはい。 というわけで、まず今日の献立が一つ決まった。 君が長い髪をかき上げながらかぼちゃをほおばる姿を楽しみに、私は台所に立った。
drtanuki
アップロード可能なファイルは5MまでのPNG、JPEGです。
縦幅は、画像の縦横比率を保持して自動調整されます。
スマホでの表示は、大・中・小のどれを選択しても、一律で320pxに設定されます。
★いいね!
ファンレターを書く
次のエピソードへ 「おじさんの一番好きな日」ボンゴレ・ビガンゴ
作品お気に入り
登場人物はありません