「逆向きの雪」海月海星

文字数 832文字

「逆向きの雪」海月海星




 今日は冬至の日。1年で最も夜が長い日だ。

 私は外で、買い物や食事を済ませ、家に帰る。しかし、部屋に入ると、誰かがいる気配がした。でも不思議と怖いという感じはしない。それでも私は、少し恐る恐る部屋に入った。

 するとそこには、驚くべき光景があった。

「雪弥……」

 部屋の中には。4年前亡くなった恋人の雪弥がいた。

「奏、お帰り」

 見間違うはずもないその姿。あの時から、片時も忘れたことはない。

「どうして……」

「まあまあ。あまり時間がないんだ。明るくなるまで、話そうよ」

 私の頭は混乱しっぱなしだが、もしかしたら、夢かもしれないと思い、醒めないでほしいと思いながら、彼と話をすることにした。

 私は雪弥と、とりとめもない話から、思い出話。私の近況などを話した。

 気づけば結構な時間が過ぎている。私はふと、時計を見た。

「もう朝の8時? 冬至にしても、長すぎるよね……?」

「気にしない、気にしない。ちょっと、外を見てみようよ」

 私は混乱しながらも、雪弥と一緒に、ベランダに出た。

「世界の終わりみたいだね」

「もしかして、だから会いに来てくれたの?」

「さあ。どうだろうね」

 そう言って雪弥は微笑む。あの時と変わらない笑顔だ。

「あ。雪だ」

 外を見ると、雪が降っていた。しかし、何か違和感がある。

「そうか……。もう時間か」

 彼がそうつぶやく。

「時間?」

 やはり、その言葉が気になった。しばらくして、私はその違和感に気づいた。

「この雪、空に昇ってる……」

 空から降るのではなく、空に昇る雪。そして、雪が空に届くたびに、空が少しずつ明るくなっている。「ねぇ、これどういう……、雪弥?」

「ごめんね。もう時間みたいだ」

 空が明るくなるのと同時に、彼の体が、少しずつ光の粒子になって、空に昇る。

「雪弥!」

「奏、さようなら。もし君が他の誰かと結婚して、子供を産んだら、その時は僕がその子に生まれ変わるよ」

 そう言い残して、彼は消えた。空は完全に明るくなり、朝が訪れた。




2018/12/22 01:29

smallboy

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