「逆向きの雪」海月海星
今日は冬至の日。1年で最も夜が長い日だ。
私は外で、買い物や食事を済ませ、家に帰る。しかし、部屋に入ると、誰かがいる気配がした。でも不思議と怖いという感じはしない。それでも私は、少し恐る恐る部屋に入った。
するとそこには、驚くべき光景があった。
「雪弥……」
部屋の中には。4年前亡くなった恋人の雪弥がいた。
「奏、お帰り」
見間違うはずもないその姿。あの時から、片時も忘れたことはない。
「どうして……」
「まあまあ。あまり時間がないんだ。明るくなるまで、話そうよ」
私の頭は混乱しっぱなしだが、もしかしたら、夢かもしれないと思い、醒めないでほしいと思いながら、彼と話をすることにした。
私は雪弥と、とりとめもない話から、思い出話。私の近況などを話した。
気づけば結構な時間が過ぎている。私はふと、時計を見た。
「もう朝の8時? 冬至にしても、長すぎるよね……?」
「気にしない、気にしない。ちょっと、外を見てみようよ」
私は混乱しながらも、雪弥と一緒に、ベランダに出た。
「世界の終わりみたいだね」
「もしかして、だから会いに来てくれたの?」
「さあ。どうだろうね」
そう言って雪弥は微笑む。あの時と変わらない笑顔だ。
「あ。雪だ」
外を見ると、雪が降っていた。しかし、何か違和感がある。
「そうか……。もう時間か」
彼がそうつぶやく。
「時間?」
やはり、その言葉が気になった。しばらくして、私はその違和感に気づいた。
「この雪、空に昇ってる……」
空から降るのではなく、空に昇る雪。そして、雪が空に届くたびに、空が少しずつ明るくなっている。「ねぇ、これどういう……、雪弥?」
「ごめんね。もう時間みたいだ」
空が明るくなるのと同時に、彼の体が、少しずつ光の粒子になって、空に昇る。
「雪弥!」
「奏、さようなら。もし君が他の誰かと結婚して、子供を産んだら、その時は僕がその子に生まれ変わるよ」
そう言い残して、彼は消えた。空は完全に明るくなり、朝が訪れた。