「ひまわり」ユドウフ

文字数 811文字

「ひまわり」 ユドウフ

今朝はとてもスッキリしていた。近頃眠れない日が続いたけど、しびれを切らして飲んでみた薬は効果的だったらしい。

12月25日、平成最後のクリスマスと人は言うけど、平日に当たっているのでほとんどの人々は昨日のイブでお茶を濁している様子だ。かく言う私もその中の一人で、昨夜はそれなりに遊び歩いた。クリスマスイブなのに一人で過ごしているという物悲しさは、特筆すべきではない。

今日の行き先である江ノ島は人気のある観光地だが、今の時期は寒さでほとんど観光客はいない。だがこれも大晦日の夜になると初日の出を見に来る人でいっぱいになる。

クリスマスの小田急線はひっそりとしていて、乗客はみな眠そうに駅に着くのを待っている。やはりみんな昨日のイブを遅くまで楽しんでいたのだろうか。どれ、まだ終点には遠いので、私も目を瞑っていよう。

そうしていると、色んなことが思い出される。楽しかった高校時代、大好きな部活や、家族と実家の犬の顔…そして、あの子の言葉。


「わたしね、クリスマスに式をあげるの。彩花も来てくれるでしょ?」


同じ大学の子でね、彩花も知ってる人だよ。

笑った顔が子供みたいに可愛くて、私はきっとその時、おめでとう。絶対いくよと言ったと思う。長い付き合いだけど、そんな表情初めて見たよ。


終点に到着すると、そのまま海へ向かう。この時期さえいるサーファーも、今日は運良くいないみたいだ。昨日と同じお薬を飲んで、準備を始める。携帯も財布も全部重たいカバンに詰め込んで、そのまま体に縄で括り付ける。中にはおもりを入れてきたから、間違っても浮いてはこないだろう。ぷかぷかと洋服が揺蕩う中で、カバンだけが下へ下へと沈んでいった。

あの子がくれたワンピース、最後に着ようと決めていた。水を吸って、ぐっと重たくなってくる。次第に緩やかな眠気も襲ってくる。一気に足のつかないところまで移動すると、ぐんと下に引っ張られた。


それじゃあ、おやすみ。

2018/12/22 14:59

oyu_touhu20

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