「ライク・ア・ヴァージン」偽教授

エピソード文字数 721文字

「ライク・ア・ヴァージン」偽教授

2018/12/24 21:36

tantankyukyu

ウィーウィッシュアメリクリスマス。

ウィーウィッシュアメリクリスマス。

ウィーウィッシュアメリクリスマス。

アンダハッピーニューイヤー。


私はこの歌が嫌いだ。

この聖夜というものが嫌いだ。

そして年を重ねるということが嫌いだ。


この位にあること六十と余年。

その長きに渡り衰えることも知らない、若さと美貌を怪しまぬ者は居なくなった。


遠い昔。

私は恋をした。


相手は、白皙の美青年。そのように思っていた。だが違った。

今の私と同じだ。

彼は永遠を生きる不死者。人の血を糧と啜り、果てない悪夢を彷徨う身であった。

若かった私は、彼の伴侶になることを懇願した。ほんとうに若かった。

自分の立場や身分というものをまったく顧みようともしなかったのだから。


私はとうとう、世界中で最高齢の君主となってしまった。

来年には、私よりも若い皇帝がとうとう寄る年波に耐えかねて引退するという。


近しい年の王たちは私の他に何人もいたが、たいていは死ぬか、やはり隠居を遂げている。


それにしても。

鏡に映る私の姿の、なんと美しいことだろうか。六十余年の昔と、何一つ変わるところもない。


「わが麗しき娘よ」


一陣の風が吹いて、男が姿を現した。彼だ。

まさか。なんということ。最後に会ったのは、忘れもしない、私の戴冠式の前夜だった。

「こんなに長い時間を待たせて、済まなかった」


「ああ、愛しい方。とうとう、迎えに来てくれたのですか」


「そうだ。君を連れて行く」


私は鏡に映った自分の姿を見る。そこにいるのは若くて美しい――


「約束した通りだ。60年、人の世にあって私を待つことが出来たら、私の伴侶にしてやる、とな」


聖夜に訪れる闇からの手招き。私はもちろん、彼に血を捧げる。メリークリスマス。

2018/12/24 21:38

tantankyukyu

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