第17話  やっぱり

文字数 1,330文字

お金がほしい。。。
切実に、お金がほしい。
呼ばれて再入社したことは、失敗だった。
今すぐにでも辞めたいと、毎日思う。
私を呼んでおいて全く頼りにもならず、助けもしない『砂の手』に当てつけるためには、むしろ今すぐにでも辞めるべきだ。
私が今辞めたら、多くの人が私に同情してくれるだろう。
「仕方ないよ」
「可哀そうすぎる」
「なんで力になってあげなかったんですか?」
そう言う声が起こるだろう。
そう言って『砂の手』を責めてくれるだろう。
そうなってほしい。
そうなるためには、今すぐ辞めるべきだ。

しかし、仕事を辞めるには、お金がいる。
辞めても生活できるだけの、お金がいる。

それが、私には無い。
全く無い。
もう十五年くらい、お金が無い生活をしている。
お金が無い原因は、私が一番よく知っている。
昨年末やっと、その原因は解消できたが、だからといって、早々にお金は貯まらない。
ほんの少し余裕ができた分で、今まで我慢してきた物欲や外食欲が湧きすぎて、結局1円も貯金できていない。

これで仕事を辞めるのは無謀だろうか?
無謀に決まっている。
無収入で貯金無しでは、生活が成り立たない。
ギリギリのところで、理性が感情を止めている。

お金を得るにはどうするべきか。
働くこと。
それしかないのは分かっているが、働く以外にお金を得る方法を考えてみる。

今の時代、ネットを中心に、勤労以外でお金を得る方法が色々ある。
際たるものがYouTubeか。
私も毎日YouTubeを見ている。
休日ともなると、一日中見ている。
私が視聴することで、彼らは収入を得ている。
人気チャンネルともなれば、会社員の何倍もの収入を得ることも可能らしい。

私にもできるだろうか?
私の『売り』はなんだろう?
ひとつだけ、強めの『売り』がある。
Hカップの胸、だ。
この胸をアピールしながらの動画なら、多少の需要はあるだろうか?
そう考えて、考え直す。
日常において、この胸に集まる男性からの視線を苦痛に思っているのに、胸を強調した動画なんて、やはり無理だ。

もう一つ、お金を得られるかもしれない方法が、あるにはある。

書くことだ。
私の文章は、お金になる。
書けば、幾ばくかのお金を得ることができる。
ただそれは、100%ではない。
依頼原稿でない限り、書いたからといってそれが収入に直結するわけではない。
これまでの実績では8割がたお金を得ることができているが、これから書くものがそうなる保証はどこにもない。
書いても書いても、1円すら得ることができない可能性も十分にある。

だからずっと、趣味として書いてきた。
このアトリエに書くことは、楽しい。
制約のない状態で、自分の好きなことを好きなだけ書けるなんて、最高の場だ。
でも、ここに書いた文章は、お金にならない。
1円も得られない。
それでも構わないと思う傍らで、それでは困るという思いが交差しだした。
ここに書く私の日常を、別の形で書いてゆけば、お金になる可能性が生まれる。
作家になりたい夢なんて、とうに捨てた、諦めた。
作家にはなれないけれど、私の文章は、お金にはなる。
ならば、いまこそそれを活かしていくべきだと思い始めた。
書く動機なんて、実は浅ましければ浅ましいほど、現実を連れてきてくれるものだ。

書いて、稼ぎたい。
書いて、稼ごう。






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