文字数 393文字



その人は真面目な顔をして
ずっと遠くを見ていた
その先に何かあるわけじゃなく
忘却の彼方に置き忘れた
その何かを懐かしむような
少し悲しい顔だった
今まで拾ったモノを全て
持ち歩かなければならない
そう言う人もいると聞いたけど
僕にそれがなくてよかったと思う
程よく何処かに置いて忘れて
気持ちが軽くなれるコトが
最近になってよくわかるから
時々残酷な時もあるけど
おおむねそのおかげで笑っていられる
いつかもしかすると
忘れたくないことまで
忘れてしまったことすら気付かずに
過ごしてしまうかもしれないけれど
まだもうちょっとだけ
少しでも多くのことを
フィルターを通して集めては
捨てたり忘れたりしたいんだ
その中に君のことが
混ざり始めてしまったとしても
僕と君との時間は
その時には確実にあって
そしてきっと僕は幸せそうに
笑う君を眺めていたと思う
知らない誰かが見たように
僕はきっと忘却の彼方に
それを見てまた
幸せな気分に浸っているはず

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