電飾の記憶

文字数 347文字

歩いていたのはビルの並ぶ街並み
思い出したのはあの人のこと
過ぎていく時間の中で
気持ちは微妙に変化していた
夜の暗闇の中に、街灯の光が差す
霧雨が降ってきた
車のヘッドライトが道を照らす

あの日、窓から見た景色
部屋の中にはあの人がいて
テーブルに座り、コーヒーを飲んでいた
口から出る言葉は空白だった
それでも僕らは話し続けた

季節は移り変わり
今見ている世界が色彩を帯びる
熱は地表から吸い取られて
涼しい風が吹いていた
汚れた靴はそのままにしていた
あの日から時間だけが経過している

レストランの中で
音楽を聴いた
話している言葉が耳を通過していく
料理の味もわからない
ぼんやりと行き場のない寂しさが
店の壁紙を伝って、通り過ぎて行く
今では思い出せるものは
曖昧になっていた

街は電飾に包まれて
粉雪が降っている
隣を歩けば音楽が鳴り響く
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