第28.5話
文字数 1,675文字
魔界。
魔王城に向かうアウラにたくさんの魔族が立ちふさがる。
その数は1万はくだらない。
「うげ、何この数。空にもたくさん、どーするの?」
アウラはユラを抱き上げると悪い笑みを浮かべていった。
「俺の本気を見たことがあるか?」
地面をけると同時に加速するアウラ。ものすごい速度で魔族の間を駆け抜けるアウラは自分の体の中で魔法を発動する。
なんとなくアウラの魔力を感じとれるユラは戸惑った。魔法を発動しているのに、アウラの魔力が消費されている気がしない。
魔法を発動するには魔力という代償が必要だ。だが、この世界に一つだけ魔力を消費しないで発動できる魔法がある。
選ばれたもの、極めたことのみに許された魔法の極地。
「これだけ離れれば大丈夫だろう。自爆魔法……エンド」
アウラを中心に黒い空間が数百メートルを一瞬で包み込む。黒い空間に飲み込まれたものは一瞬で体が崩壊していく。
黒い膜が消えると、大地は円形にえぐれ、たった一撃で数千の魔族が死んだ。
その魔法の代償は死だが、アウラは死ぬことがない。この魔法に魔力消費はない。クールタイムも存在しない。
アウラにとってそれは通常攻撃と変わらなかった。
ユラは堪らず心の声を漏らす。
「アウラ。確かに強いけど、……戦い方は最低過ぎない?」
アウラはユラに言葉を返すことなく加速を続ける。そして、言葉を続けた。
「エンド、エンド、エンドエンドエンドエンドエンドエンド…………、エンド!」
空間を飲み込む最強魔法が躊躇なく連発される。
そんなアウラを止めることができるものはこの世界に誰もいなかった。
立ち止まることなくあっという間に魔王城についたアウラ。
魔王ヘルトが王座の間にいることはわかりきっているアウラは、空を飛んで壁を壊しながら一直線で向かった。
王座に座るヘルトは床を突き抜けてやってきたアウラに対し上機嫌に笑っていた。
「俺がなぜ魔王になったか知っているか?」
「知るか」
人々が魔族に襲われている姿をゲートで見せてくるヘルトにアウラは無言で飛び出した。
「滑稽だな。お前でもこれを止められないだろう」
アウラに首をつかまれたヘルトは玉座ごと地面に叩きつけられる。
砕けた地面で笑っているヘルトが血を吐き出した。
「もう無敵じゃない。終わりだ、ヘルト」
「ああ。感覚が……久しぶりだな。気持ちがいい。ああ、……最高だ」
馬乗りになっているアウラはしゃべれないように首を絞め警告する。
「はやく、バランを止めろ。魔族を止めさせろ」
ヘルトはにやりと笑うだけだった。
アウラはヘルトを持ち上げ壁に投げつけた。
全身の裂け血まみれなヘルトが壁に打ち付けられる。もう戦える状態ではない。
決着はあっけない。それほどまでに無敵とは最強であった。
もう以前の勇者の面影はない。あの勇ましくたくましかった姿はない。能力と力任せの結果だった。
「アウラ。殺すの?」
そんなユラの問いかけにアウラは短く返す。
「殺す」
「知っているか。マタダム……」
ヘルトは嬉しそうな顔で続ける。
「圧倒的な力は恐れられ嫌われる」
「だからどうした」
「恐れられ嫌われ、遂には孤独になる。孤独になった時、自分の力を誇示し、好きなように生きるんだ」
それはまさにアウラの生きざまだった。
「だが、それを続けた結果、人々を魅了し憧れの存在へと変わった。何者にも流されずただ自分のために、自分の人生を謳歌する。それによる孤独の絶望とは存在しない。人はまた一人また一人と私に魅了され魅せられる。その結果が、私を魔王として仕立て上げた。私が望んでなったのではない。望まれてなったんだ」
「最後に伝えたかったことはそれだけか?」
アウラの言葉にヘルトは笑う。
「ダメ!」
突然、ユラがアウラを突き飛ばした。
同時に現れたオノクリアがアウラがいた場所に大きなクレーターを作っていた。
距離を置くアウラについてくるように物を隙抜けながらユラが暢気に飛んでくる。
そんなユラの後ろから同時に迫ってくる魔王ヘルト。
「お前は何者だ」
そう言ってヘルトは突き出した手でユラの首を鷲掴んだ。
魔王城に向かうアウラにたくさんの魔族が立ちふさがる。
その数は1万はくだらない。
「うげ、何この数。空にもたくさん、どーするの?」
アウラはユラを抱き上げると悪い笑みを浮かべていった。
「俺の本気を見たことがあるか?」
地面をけると同時に加速するアウラ。ものすごい速度で魔族の間を駆け抜けるアウラは自分の体の中で魔法を発動する。
なんとなくアウラの魔力を感じとれるユラは戸惑った。魔法を発動しているのに、アウラの魔力が消費されている気がしない。
魔法を発動するには魔力という代償が必要だ。だが、この世界に一つだけ魔力を消費しないで発動できる魔法がある。
選ばれたもの、極めたことのみに許された魔法の極地。
「これだけ離れれば大丈夫だろう。自爆魔法……エンド」
アウラを中心に黒い空間が数百メートルを一瞬で包み込む。黒い空間に飲み込まれたものは一瞬で体が崩壊していく。
黒い膜が消えると、大地は円形にえぐれ、たった一撃で数千の魔族が死んだ。
その魔法の代償は死だが、アウラは死ぬことがない。この魔法に魔力消費はない。クールタイムも存在しない。
アウラにとってそれは通常攻撃と変わらなかった。
ユラは堪らず心の声を漏らす。
「アウラ。確かに強いけど、……戦い方は最低過ぎない?」
アウラはユラに言葉を返すことなく加速を続ける。そして、言葉を続けた。
「エンド、エンド、エンドエンドエンドエンドエンドエンド…………、エンド!」
空間を飲み込む最強魔法が躊躇なく連発される。
そんなアウラを止めることができるものはこの世界に誰もいなかった。
立ち止まることなくあっという間に魔王城についたアウラ。
魔王ヘルトが王座の間にいることはわかりきっているアウラは、空を飛んで壁を壊しながら一直線で向かった。
王座に座るヘルトは床を突き抜けてやってきたアウラに対し上機嫌に笑っていた。
「俺がなぜ魔王になったか知っているか?」
「知るか」
人々が魔族に襲われている姿をゲートで見せてくるヘルトにアウラは無言で飛び出した。
「滑稽だな。お前でもこれを止められないだろう」
アウラに首をつかまれたヘルトは玉座ごと地面に叩きつけられる。
砕けた地面で笑っているヘルトが血を吐き出した。
「もう無敵じゃない。終わりだ、ヘルト」
「ああ。感覚が……久しぶりだな。気持ちがいい。ああ、……最高だ」
馬乗りになっているアウラはしゃべれないように首を絞め警告する。
「はやく、バランを止めろ。魔族を止めさせろ」
ヘルトはにやりと笑うだけだった。
アウラはヘルトを持ち上げ壁に投げつけた。
全身の裂け血まみれなヘルトが壁に打ち付けられる。もう戦える状態ではない。
決着はあっけない。それほどまでに無敵とは最強であった。
もう以前の勇者の面影はない。あの勇ましくたくましかった姿はない。能力と力任せの結果だった。
「アウラ。殺すの?」
そんなユラの問いかけにアウラは短く返す。
「殺す」
「知っているか。マタダム……」
ヘルトは嬉しそうな顔で続ける。
「圧倒的な力は恐れられ嫌われる」
「だからどうした」
「恐れられ嫌われ、遂には孤独になる。孤独になった時、自分の力を誇示し、好きなように生きるんだ」
それはまさにアウラの生きざまだった。
「だが、それを続けた結果、人々を魅了し憧れの存在へと変わった。何者にも流されずただ自分のために、自分の人生を謳歌する。それによる孤独の絶望とは存在しない。人はまた一人また一人と私に魅了され魅せられる。その結果が、私を魔王として仕立て上げた。私が望んでなったのではない。望まれてなったんだ」
「最後に伝えたかったことはそれだけか?」
アウラの言葉にヘルトは笑う。
「ダメ!」
突然、ユラがアウラを突き飛ばした。
同時に現れたオノクリアがアウラがいた場所に大きなクレーターを作っていた。
距離を置くアウラについてくるように物を隙抜けながらユラが暢気に飛んでくる。
そんなユラの後ろから同時に迫ってくる魔王ヘルト。
「お前は何者だ」
そう言ってヘルトは突き出した手でユラの首を鷲掴んだ。