第30話 試験当日の朝

文字数 1,898文字

出雲は早朝に目が開いた。その日はついに美桜と同じ学校に進学するための試験日だからである。この日のために出雲は雫や美桜と一緒に訓練をしていたのである。

「朝早く起きてしまった。 緊張しているな……」

出雲は寝間着から美桜に用意されていた試験用の服に着替えた。その服は青いジーンズに黒いTシャツであった。動きやすい格好を選んだということである。

「この世界の服も俺の世界と似ているから、着ることに違和感がないな」

出雲は着替え終わり、姿見の前で自身の格好を見てみた。違和感もなく、自身のいた世界で売られているような服に似ているようであった。

「さて、試験会場まで電車で一時間か。 貰った紙によると、東川泡という場所にて美桜が行く学校である東京魔法高等学校の演習場があるらしい」

出雲がもらった紙を見ると、東川泡駅からの徒歩での行き方が書かれていた。出雲は東京魔法高等学校ってと呟き、東京って名前があることに驚いていた。

「東京って名前が付いているとは……魔法があるだけのちょっとだけ違う世界なのは確定みたいだな……」

そう紙を持って呟くと、自室のドアが勢いよく開いた。そこには美桜が笑顔で朝食であるサンドウィッチを右手に持つ皿の上に四個乗せて立っていた。

「み、美桜!? 美桜も早く起きたの?」

出雲が驚いていると、美桜が出雲の大切な日だから朝食を作ったのとサンドウィッチが乗っている皿を部屋にあるベットの側にある机の上に乗せた。出雲はそのサンドウィッチを見て美味しそうだと喜んだ。

「これ美桜が作ってくれたんだ! 凄い美味しそう!」

美桜が作ってくれたサンドウィッチは、生ハムとレタスが入ったものと、みじん切りのゆで卵とベーコンが入ったもの、そしてマカロニが入ったものとスライスしてあるバナナとキュウリが入ったものがあった。

出雲は時間がかかるであろうこのサンドウィッチを見て、美桜が早起きをして料理を作ったのが理解できた。出雲はありがとうと言いながら生ハムとレタスのサンドウィッチから食べ始めた。

「凄い美味しい! 美桜の料理は美味しすぎる!」

出雲がそう言いながらベットに座って食べ進める。その食べている様子を美桜は笑顔で見続けていた。

「美桜の料理をずっと死ぬまで食べていたいな! ずっと食べていたら幸せだろうな!」

出雲のその言葉を聞いて、嬉しいわと美桜は頬を紅く染める。美桜は試験に受かれば毎日食べさせてあげるから、頑張ってと出雲を鼓舞した。

「ありがとう! 美桜の応援があれば試験合格できる気がする!」

出雲のその言葉を聞いた美桜は笑顔になっていた。出雲は作ってくれたサンドウィッチをすべて食べ終えると、荷物を持って家を出ることにした。玄関前に到着すると、食堂の辺りから慌ててている足音が聞こえてきた。

「うん? 何か大きい足音が聞こえる?」

出雲が後ろを振り向くと、美桜が忘れてたわと頭を抱えていた。

「雫が出雲の昼食を作るって早朝から起きて作っていたの忘れてたわ……」

美桜がそう言うと、出雲が雫さんが作ってくれていたのかと驚いていた。

「まだ行かないでくださーい! せっかく昼食作ったんですから、持っていってくださーい!」

雫が慌てながら階段を下りて出雲と美桜がいる玄関口に走ってきた。出雲は慌てている雫に気を付けてくださいと言うと、出雲の目の前で転んでしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」

出雲がうつ伏せで転んでいる雫を起こそうと肩を抱く。美桜は転んだ拍子に転がった昼食の入った小さな箱を拾った。美桜は出雲の大切な昼食がと叫んで、箱の中身を確認した。

「昼食がぁ!? あ、おにぎりだったんだ!」

美桜が昼食の無事を確認すると、箱の蓋を閉めて出雲に玄関に置いていた鞄の中に入れて持っていきなさいと言う。

「あ、この鞄って俺のだったんだ!」

出雲が驚いていると、その鞄は学生用の通学鞄のようである。 青色のその鞄には、雫が用意をしてくれた昼食の箱を詰めた。出雲は雫に作ってくれてありがとうと言うと、鞄を持って家を出た。雫は家で待ち、美桜は出雲と共に駅まで一緒に行くと言ってついてきていた。

「試験は何が出るか分からないけど、筆記試験ではないことは確かだから。 多分、戦闘とか面接だと思うわ!」

美桜の説明を受けて出雲は頷きながら早朝の町を歩いて駅に向かう。始発は出ているが、集合時間が八時三十分なので出雲は早めにつくために起きていた。出雲は雫が弁当を早起きして作ってくれたことが嬉しく、昼食が楽しみで仕方がなかった。
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