第31話 試験への道

文字数 1,761文字

駅に到着すると、美桜は出雲の頭を撫でて頑張ってねと言う。そして、目的地までの道順を教えると美桜は手を振って家に帰っていく。出雲は一人で電車に乗って試験会場の駅に運ばれていく。

「朝日が気持ち良いな。 ちゃんと試験に合格しないと!」

両腕に力を入れて試験に合格することを強く願うと、乗り換える駅に到着していた。

「うわっ! ここで乗り換えるんだ!」

焦りながら電車を降りると、その駅は東川泡に向かうための中間地点である東川栗駅であった。その駅で五分後に来る向かい側の電車に乗れば三十分後に目的地に到着するらしい。

出雲は美桜に教わった通りにちゃんと来れていることに驚いていた。一人でこの世界で電車に乗れているだけではなく、間違えることなく今まで電車に乗れているのでそれが自身でも驚いていた。

「さて、少し電車を待たないとな……うん? あっちの椅子に座っている短髪の女の子も電車を待っているのかな?」

出雲がそう短髪の女の子を見ていると、視線に気がついたのか出雲の方向を向いた。その女の子は赤髪の短髪であり、服装は中学校のであろう茶色のセーラー服を着ていた。

「スタイルいいなぁ……美桜ほどじゃないけど女性らしい身体つきみたいだ」

そんなことを出雲が呟いていると、その考えを察したのか舌を出して変態と出雲に聞こえるように言葉を発して到着した電車に乗り込んだ。出雲もその電車に乗り込むと、その女の子が出雲の方を見て引いたような顔をする。

「凄い敵視されている気がする……まだ話してもいないのに……」

若干落ち込む出雲だが、この時間、この電車に乗っていることで同じ試験に臨む人なのだろうと推測していた。その推測通り、同じ東川泡駅でその女の子も降りた。

「げぇ!? 変態男子! あなたも試験を受ける人だったのね!」

その赤毛の短髪の女の子が出雲を指さして犬のように喉を鳴らしていた。出雲はその女の子を改めて見てみることにした。髪色は赤毛でその長さは肩にかかる程度である。鼻筋は通り、細い眉毛と二重のパッチリとした眼からは意思の強さを感じる。

身長は出雲より小さく、百六十センチ程であると見れる。美桜ほどではないがスタイルもよく見え、足はスラっと細くて身長の割に長く見える。そして、出雲はその赤毛の女の子の胸に目がいってしまう。その胸は程よく大きく、手にちょうど収まらない大きさに見えるので出雲は生唾を飲んでしまう。

「今私の胸見てたでしょ!? 男って変態ばかりよね!」

そう言われた出雲はヤバイとの顔をし、言い訳を始めた。

「い、いや、違うんだよ! 君が魅力的だったから目を奪われてしまったんだ! 決してそういう意味で見ていたんじゃないよ!」

そう言い訳を言う出雲を赤毛の女の子はジト目で下から出雲を見上げ形で見ると、その制服の隙間から胸元が見えて出雲はチラッと見てしまい、すぐに視線を外す。すると、変態なのは変わりないけど他の人とは違うのねと呟く。

「あ、試験会場に早く行かないと。 早く行きましょう!」

出雲の先を歩いて行く赤毛の女の子。出雲はその後を歩いて追いかけると、赤毛の女の子がそう言えばと話しかけてくる。

「君は何て名前なの?」

そう言われて出雲は黒羽出雲だよと言った。出雲の名前を聞いた赤毛の女の子は、出雲ねと名前で早くも呼び始めた。

「私の名前は菜花椿よ!」

なばなつばき。そう言った赤毛の女の子の名前には花に由来しているんだろうかと思った。

「可愛い名前だね! 凄い似合ってる!」

屈託のない笑顔でそう自身の名前を褒められた椿は、初めてのことだったのでそんなに可愛くないからと頬を紅く染めてそっぽを向いた。出雲は何かしたかなと思って自身の右頬を掻いていると、早く行くわよと椿に言われてその後を小走りで追いかけていく出雲。

駅から出ると大きなロータリーがあり、そこには多くの学生達の姿があった。コンビニによって朝ごはんを食べている男の子や、女の子どうして笑って話しながらローターリー前で時間を潰している人達など、様々であった。出雲と椿は、遅れないために早めに試験会場に行こうとしているので、周囲にいる受験者には目もくれずに二人とも真っ直ぐ前を向いて歩いていた。
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