第35話 教えの実践

文字数 1,685文字

「凄い! 凄い! 出来てるよ! 回復魔法出来てる!」

椿が喜びながら頑張ってと出雲を応援していた。そして、怪我をしていた男子の傷口が次第に治り始める。出雲が治療を開始して五分が経過する頃には少し痒いといったぐらいに回復していた。

「よし! もう大丈夫だと思う!」

出雲が汗を拭って地面に座ると、鞄の中に入れていたペットボトルのお茶を飲み始める。鞄の中には弁当の他に駅でお茶を買っていたのが正解だったらしく、この場所では飲み水の確保も難しいと出雲は考えていた。

生き抜く試験なのか分からないが、死に直面する被害を受けたら失格と同時に助けられるのだろうと出雲は考えている。そのため、あまり怪我はしないことや困っている人がいたら助けていこうと考えていた。椿は、出雲の肩を軽く叩いて凄いと言い見直したわとも言っていた。

「俺はただ教わったことを実践しただけだよ。 何も凄くない」

出雲が息を切らせながら言うと、男子と女子の三人が出雲にありがとうと頭を下げた。出雲は当然のことをしただけだからそんなこと言う必要ないよと言う。

「じゃ、俺達はこれで先に行くからもう怪我はしないでな!」

出雲がそう手を振りながら椿を連れてこの場を離れると、男子と女子の三人はありがとうと言う言葉を出雲が見えなくなるまで発していた。

「回復魔法使えてよかった……時間かかったけど……」

出雲が椿によかったと言うと、椿は怪我したら治してね出雲に笑顔で言う。出雲は頑張るよと笑顔で返すと先に進もうと言った。出雲と椿は草原を歩き続けると、岩石地帯に出た。そこは草原地帯とは打って変わり、地面が陥没していたり岩場が続いていた。所々に落下したと思われる巨大な岩が落ちていた、

「岩場に出たね! 両側が高い岩石の壁になっているから落下に気を付けよう!」

椿は横を歩いている出雲に下から見上げる形で言うと、出雲は下から見上げている椿の目を見てそうだねと返した。その際に目線が胸元を出雲は見てしまったが、椿は何も言ってこなかった。

「ここ結構危ないね。 こんな場所で戦闘があったらどう動けばいいんだろう」

出雲が唸っていると、椿が前を見てと出雲の肩を叩いて言う。出雲が前を見ると、岩石の壁を抜けた広い岩場で一人の男子が熊型の魔物に追われていた。

「何でここで魔物に会うんだよ! 死ぬじゃねえか!」

その男子は出雲と同じ程度の身長をし、紺色のブレザー型の制服を着ていた。その男子は出雲達を見ると助けてくれと叫んでいた。出雲はすぐに助けるからなとその男子のもとに走っていく。その際に出雲は椿に魔法で援護してと指示をした。椿は出雲が指示しないでよと怒りつつも、言われた通りに魔法を発動する。

椿はカマイタチのような風の刃を発動させると、熊の魔物の左腕を吹き飛ばした。突然の攻撃に驚き、自身の左腕が吹き飛んだことに驚愕をして雄叫びをあげていると、出雲が熊の両足の間に滑り込んで光弾を五発浴びせた。

その速度と爆発力を浴びた熊は腹部が裂けて大量の血が流れていた。出雲は顔についた血を手で拭うと、追いかけられていた男子にこっちに来るんだと手を掴んで椿のいる場所に連れてくる。

「大丈夫!? 怪我していない!?」

出雲がそう男子の身体を触って確かめると、触りすぎと男子が出雲を離した。それを聞いた出雲はごめんと謝った。

「怪我はしていないから大丈夫だよ。 助けてくれてありがとう!」

その男子は笑顔で出雲と椿に感謝をすると、俺も先に行くねとその場を離れていく。出雲と椿は気を付けてねと手を振ってその男子を見送った。

「グループでいたり一人でいたり様々だね」

出雲が思ったことを椿に聞くと、一人の方が自由に動けたりするからねと返ってきた。出雲はそれもそうかと思うと、ここは危ないから進もうと椿に行って先を歩くことになった。

岩石地帯を奥に進んでいくと、目線の先に大きな湖が見えてきた。そこは空気が綺麗で多くの草花が咲いていた。椿は花が沢山あると言って一人で走って湖の側に行ってしまう。
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