第11話 温もり

文字数 1,582文字

その後は楽しく談笑しながら夕食を食べ終えることが出来た。使用人の人たちも一緒に夕食を食べることに最初は驚くも、美桜の性格を考えると一緒に食べるかと納得をした。

「部屋に戻ってきたけど、やることが思いつかない……テレビでも見るか」

そう呟いてテレビのリモコンから電源を入れるスイッチを押す。すると、ニュース番組が映り、その番組ではこの都市の近くに魔獣の群れや未知の魔物が徘徊し始めていることを伝えていた。国に仕えている魔法騎士団がその討伐をしているが、未知の怪物に何名かの騎士団員が怪我を負わされていることを伝えている。

「あの森であった魔獣も、最近増えている群れの一匹なのかな?」

出雲が床に座ってテレビに集中していると突然コマーシャルに切り替わり、この世界のテレビコマーシャルを見ることが出来た。この世界のコマーシャルは法を駆使している幻想的なモノであり、商品の紹介と魔法の親和性が高かった。

「この世界は凄いな。 前いた世界とは大違いだ」

そう感心していると、美桜が好きだと言っていたアニメのコマーシャルが始まった。そのアニメは四クール目だと言っており、その人気の高さが理解できた。作画やBGMもマッチしており、この国のアニメも面白そうだと興味が湧いていた。

「この国のドラマやアニメを見てみたいな。 この国のお金は何だろう」

出雲が悩んでいると、美桜が部屋に入ってきてお金は円よと言ってきた。

「円か! 俺のいた国も円だったよ。 あ、聞いてなかったけどこの国は何て名前なの?」

そう聞いた出雲に美桜が日本だよと言った。出雲は日本と言う言葉を聞いた瞬間、出雲は眼を見開いた。

「ここも日本ていうの!? 俺のいた国も日本って名前だった!」

出雲の言葉を聞いて、美桜も驚いていた。島国だったと出雲は聞かれ、島国だよ答える。美桜はやっぱり似てる世界なのかもねと言う。

「俺もお金稼いで好きなことに使ってみたいと思って」

そう言う出雲に、アルバイトかと美桜が考える。数分考えると、美桜が今はとりあえず身体を直して鍛えて試験に受かってから考えましょうと言う。

「そうだよね。 入学したらアルバイトするぞ!」

右拳を振り上げて宣言すると、腰にビリっと痛みが走った。出雲が痛いと抑えると、美桜が大丈夫なのと話しかけてきた。

「ちょっと痛みが……」

出雲がそう言うと、美桜が回復魔法をかけてくれた。

「私が使える回復魔法は低級のしか出来ないけど、それでも効果はあるはずよ」

そういう美桜は懸命に回復魔法をかけてくれた。次第に痛みが消えると、出雲はありがとうと笑顔で言った。「良くなったようで安心したよ。 あまり無理し過ぎないで」

美桜に無理しなきゃ合格できないからと返す出雲。美桜は試験の難しさを知っているのでそうだけどと言うが、それでももう傷ついてほしくないからと言う。出雲は何でそこまで良くしてくれるのかと聞いた。すると、命を守ってくれたからと言った。

「命を守ったからってここまでしてくれるの?」

出雲はそこまでするかなと疑問を言うと、美桜は命を懸けて守ることを実行するって凄いことなのと言う。

「それをしてくれた出雲に対して色々と困っていたら助けたいの」

そう言われ、出雲はありがとうと返す。美桜はこの世界に来た出雲がもう辛い思いをしないために支えるからと言ってくれた。

「ありがとう……こんなに良い人間もいるんだなって思って……」

出雲は自然と涙が溢れていた。そんな出雲を美桜が抱きしめて頭を撫でた。

「人の温もりって気持ちいんだね……」

出雲はそう言いながら美桜に身体を預けて寝てしまった。よほど疲れていたのか、美桜に安心をしたのか。どちらかは分からないが出雲はこの世界に来て幸せなのだろうと美桜は思った。
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