第50話 入学前のある一日①

文字数 1,623文字

そんなバタバタが一旦落ち着いたある日、入学式が迫る最中に出雲は昼間からベットに寝転がっていた。出雲は疲れたと昼間から体力がなくなっていた。理由としては入学準備や美桜の買い物に付き合わされていたからである。

美桜はアルバイトをこの期間にしており、美桜のバイト先に朝から晩まで付き合わされ、その後に買い物に付き合わされることが何回かあったからである。その際にナンパなども美桜がされ、それを出雲が救ったりもしていた。

「美桜のバイトが一番大変だった……伝説が塗り替えられそうだからって、お金は出すから何でも注文して高いオプションを私でしてとか規格外だわ……」

出雲は頭を抱えて大変な日々だったと忙しい中での楽しさを思い出していた。こんなに充実している忙しさなんて初めてで目が回りそうであった。しかし、充実感も感じていたので辛いということではなかった。

「明後日から入学だとは思えないな。 もうすぐ昼だけど、美桜と雫は何をしているんだろう?」

出雲はベットから起き上がって部屋から出ると、何やらバタバタと足音が聞こえていた。出雲はすれ違った使用人の人に声をかけると忙しいと言われて話しかけられなかった。次に玄関口に行くと、雫が荷物を持ってバタバタとしていたので、またもや話しかけられずに挨拶だけした。

皆が急に忙しくなったなと出雲が考えていると、美桜が忙しいわと言いながら手紙を数十枚じゃ足りないほど手に持っていた。出雲は美桜の後ろからどうしたのと話しかけると、美桜がヤバイわと真顔でいた。

「何がヤバイの?」

出雲が美桜の前に躍り出ると、美桜がいたのねと出雲に言う。出雲は真顔で手紙を沢山持ってどうしたのと聞くと、美桜が手紙を出し忘れていたのと言う。

「誰かに出さなきゃいけなかったの?」

出雲が聞くと、美桜は右頬を掻きながらお父様、お母様と家に関係する人達かなと美桜は言う。出雲に分かりやすく説明をするために簡単に砕いて言ったので、出雲は理解が出来てそれは大変だと驚いていた。

「そうなの。 だから今から郵便局に行くから、行ってきます」

美桜が出雲に言うと、気を付けてねと出雲は手を振って見送った。自分は出来ることないかなと思うと、ちょうど後ろを通った雫に、美桜が郵便局に行ったから俺も付いて行きますと言って家を出た。

少し前に出た美桜を家の前で探すと、駅とは逆の道で美桜の後姿を見つけた。美桜を後ろから見た出雲は、後姿だけでも可愛いなと思ってしまうも、そんなこと考えている場合じゃないと思い、美桜に向けて走っていく。

勢いよく走っていくと、美桜にやっとの思いで追いついた。そして、後ろから美桜の左肩を右手で掴んで美桜と話しかけると、美桜は振り返りながら右肘で出雲の右頬を殴りつけた。出雲はその攻撃を受けて地面に倒れてしまった。

「誰よいきなり! え!? 出雲!? ちょっ、ちょっと大丈夫!? ごめんね!」

自身が殴りつけたのが不審者で、出雲だとは思わなかったので思いっきり肘で殴ってしまった。そのため、出雲は涙を流しながら地面に気絶をしてしまう。何度か揺さぶったり出雲の名前を呼んでいると、倒れてから数分後に目を開けた。

「うぅ……俺は……美桜の肘で攻撃されて……」

出雲は自身の右頬を撫でると、腫れていることに気がついた。美桜は出雲にごめんねと言って、回復魔法で出雲の右頬を治療し始める。

「突然肩を掴まれたから不審者だと思って……ごめんね!」

美桜が治療をしながら出雲に何度も謝ると、突然肩を掴んだ俺も悪いからと言う。

「俺も悪いから大丈夫だよ。 突然肩掴んでごめんね」

出雲も謝ると、もう大丈夫だからと美桜が言う。美桜が出雲の右頬を触って治療をしていると、美桜の綺麗な髪の匂いが鼻に入って来て、良い匂いだと出雲は感じていた。美桜のことを守りたいのに、美桜に倒されてしまってまだ弱いなとも感じていた。
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