第73話 皇家

文字数 1,875文字

美桜が雫のサンドウィッチを食べたいと思いながら昼食を食べ終えると、背後に控えていたメイドが部屋にお戻りくださいと食器を片付ける。美桜はそれに従って自室へと来た道を戻っていく。

食堂から出る前に、夕食の時に当主様と御子息とお会いしますのでと教えてくる。美桜は分かりましたと返すと食堂から出ていった。

「夕食で会うんだ……そこで色々決まるのかな……」

美桜は肩を落としながら部屋に戻る。扉を開けると美桜の家にある自室が広がるので、少しは落ち着くことが出来る空間となっていた。美桜はそのままベットにダイブをして疲れる家だわと呟く。

そのままスマートフォンを操作をすると、蓮や琴音達からメールが届いていたがもう関わることはないだろうと思っているのでメール内容も見ずにそのままにすることにした。

「今更皆にするメールなんてないわね。 それにここにいることは既に出雲や雫から伝わっているだろうし……」

そう言いながらスマートフォンの電源を切った。これから自由がなく、自分の意志で行動も出来ないだろうと思いスマートフォンなどもう使うことはないだろうと考えていた。

「出雲達といた方が楽しかったな。 こんな家にいるの窮屈だし、結局お父様のシナリオ通りに進んでいるのかな……お母様やお兄様達はどう思っているんだろう……」

美桜は家族のことを考えていると、お母様以外は私のことなんてどうでもいいと思っていると今までの兄や姉の対応から察することが出来た。そして、部屋で寛いでいるといつの間にか夜になっていた。美桜はもう夜なんだと呟くと部屋の扉がノックされた。

「どうぞ」

一言を美桜が発すると、部屋の扉をメイドが開けた。そのメイドは部屋の中に入ると、美桜に夕食の時間となりましたのでと声をかける。

「分かりました。 すぐに行きます」

そう言って立ち上がってメイドの後ろを昼のように歩いて行く。美桜は皇家の現当主と婚約者と会ったことはなかった。自身の父親が勝手に会って勝ってに決めて、落ちこぼれの烙印を勝ってに推した自身の娘である美桜を家柄の増強のために生贄と思えるやり方で商品として送り出したのである。

「でも、なんで属性魔法が使えない私なんかを婚約者として皇家は認めたのかしら?」

美桜は煮えきらない思いを抱えながらメイドの後ろを歩き続けて、食堂まで考えながら移動をした。食堂に入ると、目の前に白髪混じりの黒髪短髪の男性と自身と同い年と思える黒髪で耳までかかる長さのミディアムヘアの男が隣り合って椅子に座っていた。美桜は食堂に入るとすぐに二人と眼があったので、その場で止まって二人に挨拶をした。

「お初にお目にかかります。 天神家三女である天神美桜十五才です。 この度はお会いできまして大変光栄です」

その場で頭を下げて挨拶をした。美桜の挨拶を聞いた白髪混じりの男性は立ち上がって美桜に頭を下げ、ミディアムヘアの男性も立ち上がって美桜に頭を下げた。白髪混じりの男性はそのまま自己紹介を始めた。横にいる息子にも名前を言うように伝えている。

「立ったままで失礼する。 私はこの皇家の現党首である皇永臣です」

そう言って自身の名前を言う当主。そして永臣は自身の息子に名乗りなさいと言う。

「分かりました。 私の名前は皇明臣と申します」

明臣も自身の名前を名乗ると、よろしくお願いしますと付け加えた。美桜は当主に促される形で目の前の席に座る。すると、食堂にいる使用人達が料理を運んできた。

「こちらが本日の御夕食であるざる蕎麦に天ぷらとわかめの味噌汁でございます」

美桜は呆気にとられていた。まさか大貴族様の夕食がざる蕎麦に天ぷらなどとは思わなかったからである。もっと豪華な食事が出てくると想像をしていたのに、まさかのざる蕎麦かと驚いていた。

「もっと良い料理が出ると思ったかな?」

その美桜の様子を感じ取った当主は、美桜に話しかける。美桜は突然話しかけられたので、びくっと身体が反応をしてしまう。

「い、いえ、家の方でも食べているので嬉しいです」

美桜はなんとか話を逸らして嬉しいと返答をした。そして、美桜に明臣が話しかけてくる。

「美桜さんもざる蕎麦が好きなんですね! 結構食べたりするんですか?」

その問いかけに美桜は、たまに使用人の方や家にいる人が作ってくれるので食べる程度ですよと答えた。

「使用人じゃない方も作るんですか! それは凄いですね!」

明臣は驚きながら、私も作ってみようかなと独り言を呟いていた。
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