第37話 怪物急襲

文字数 1,899文字

「だ、大丈夫!? 今助けてあげるから!」

そう言って女子の肩を持って出雲の場所まで連れて行く。出雲は周囲の無事だった受験者達と協力をして怪我の手当てを続けていた。回復魔法を扱える人も他に数名いたので、出雲が中心となって指示を出して治療をしていた。

「そっちにいる重症の人は任せた! 俺は回復魔法それ程使えないから軽症の人を回してくれ!」

出雲が重症者と軽症者を分けて回復魔法扱いなれている人と、出雲みたいなそれほど扱えないが扱った経験がある人とで治療する人を分けることで、治療の速度を上げていた。

「こっちは俺がする! そっちの重症者はあっちに連れていって!」

出雲が指示を続けていると、椿が女子を連れて出雲のところに辿り着いた。

「ねぇ! この女の子助けてあげて! お腹に刺さってる!」

椿が治療をしている途中に声をかけて助けてと言うと、出雲は待っててと椿に言う。

「いつまで待つの! 死んじゃうよ!」

椿が出雲の両肩を掴んで揺らすと、分かったと言って治療を変わってと背後で治療を終えたばかりの女子に治療を変わってと言って変わってもらう。

「俺はまだ回復魔法全然だけど、必ず救うから!」

そう言って出雲は女子の腹部に刺さったのを勢いよく引き抜いた。すると、出雲の顔にその女子の血が勢いよくかかった。

「くそ! 血が出過ぎてる!」

出雲は椿に女子の身体を抑えててと言って、腹部に手を当てて回復魔法を始めた。一刻も早く治療をしないと死ぬ危険があったので、出雲は痛みが出るが魔力を強く籠めて一気に治療を進めた。

「がぁ!? 痛い痛い!」

痛みに暴れる女子だが、椿が抑えていたので動きは最小限であった。

「我慢してくれ! 俺だって勢いよくはしたくないんだ!」

出雲は魔力を込め続けると女子は助けてとだけ言うと意識を失った。出雲は椿に頭に気を付けてと言うと、一気に魔力を込めて気絶している今のうちだと思い、傷口を一気に塞ぐことが出来た。

「で、できた……疲れた……」

出雲がそう呟いて地面に座り込むと、周囲の治療に当たっていた人も終わったようで怪我人はいなくなった。

「他の人も治療が終わったみたいだね! 出雲大活躍!」

椿が右手でサムズアップを出雲にすると、ありがとうと出雲は返答した。周囲にいる人達も出雲にありがとうと言ったり、治療をしてくれた人達に感謝の言葉を述べていた。

「あのワニはもういないか。 何だったんだ……」

出雲が湖を見ると、先ほどのワニはもうどこにも姿が見えなかった。一体何だったんだと出雲は頭を抱えていると、逃げていた男子の一人が湖に石を投げ入れていた。

「このくそが! 急に出てきやがって! ワニのくせに調子に乗るな!」

そう何度も言いながら石を湖に投げ入れ続けていた。その男子を何人かの仲間と思われる男子達が止めると、湖から雄叫びが聞こえてきた。

「こ、この雄叫びは! 皆逃げるんだ! あのワニが来るぞ!」

出雲がそう叫ぶも、腰を抜かす人やその場で蹲って怖いよと言い続けている人ばかりであった。

「くそ! 俺が相手をするから椿は皆の誘導をして!」

出雲にそう言われた椿は、死なないでよと出雲に言うと死なないよと出雲は返事をした。

「こっちだワニ! 俺が相手だ!」

出雲は光弾を三発ワニの頭部に命中をさせて自身を標的にさせた。出雲の光弾ではそれほどダメージを与えられていないが、周囲にいる受験者達も魔法を放ってワニを倒そうとしている。

「ワニの攻撃に気を付けてくれ!」

出雲が周囲の攻撃に参加してくれている受験者達に言うと、分かってると返答が来た。火や風、土に水と様々な属性の魔法を放ちながらワニを倒すために受験者達が協力をする。

「お前の相手はこっちだろ! こっちを向け!」

出雲は魔力量に気を付けて光弾を放つと、一発の光弾がワニの左眼に命中した。ワニは雄叫びをあげながらのた打ち回ると、出雲に標的を絞って攻撃をしていく。

ワニは両腕での引っ掻きや殴り、そして尻尾の叩きつけなどをするも、出雲は新たに覚えていたライトシールドの光属性の下位の防御魔法で危なかったが防ぐことが出来た。

「危ない! そんな攻撃が効くものか!」

出雲は攻撃を防ぎながら誰もいない湖の場所に移動すると、そこでライトシールドと光弾を駆使してワニの攻撃を一身に受けていた。

「攻撃が重い! シールドがもう持たない!」

ライトシールドに魔力を追加で込めて亀裂を直すも、ワニの連続攻撃でライトシールドが壊れて後方に吹き飛んでしまう。
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