第55話 教室へ

文字数 1,843文字

出雲のスマートフォンの画面には、約束を忘れてたわねと鬼のような顔文字と共に一言だけ書かれていた。出雲はヤバイと冷や汗をかきながら周囲を見渡すと校門の側に植えてある木の横に椿が立っていた。出雲は椿に気がつくと、美桜に来てと言って椿の側に移動をした。

「椿さーん? 椿さんだよねー?」

出雲が話しかけると、椿が忘れてたわねと出雲を睨みつけていた。すると、美桜が私が一緒に登校させたのと椿に話しかけて、ごめんなさいねと言う。椿は出雲の隣にいる美桜を見て、この女の子が出雲の言っていた美桜かと椿は察していた。

「あなたが出雲の言っていた美桜さん? 私は試験で出雲と知り合った菜花椿です。 よろしく!」

そう椿が言うと、美桜があの菜花家の娘さんなのねと笑顔で椿の手を掴んだ。

「美桜は椿のこと知ってるの?」

出雲が聞くと、菜花家は草花の栽培や流通をしてて、この国の草花はだいたいが菜花家が栽培しているものよと教えてくれた。

「凄い! 椿はいずれ家を継ぐの?」

出雲の質問に椿はそれはまだ分からないわと答えた。椿はその質問をされると嫌なのか話題を変えようとして美桜のことを聞いた。

「美桜さんは名字なんて言うの?」

椿のその質問に、美桜は天神美桜よと言った。美桜の名前を聞いた椿は、マジなのと驚いていた。

「大貴族様じゃない! 何で出雲がそんな子と一緒にいるの!?」

そう出雲に聞くと、出雲は救われて一人だったのを保護された感じかなと伝えた。椿は口を大きく開けていたが、以前に出雲から伝えられていたのでそうだったと思い出して口を閉じた。椿は美桜と出雲に一緒に行こうと言う。すると美桜が良いわよと言って三人で本校舎入り口に入っていく。

入り口では学年とクラス別に下駄箱が並べられており、この数は数えきることが出来なかった。美桜達は下駄箱に進もうとするが、目の前にある大きな看板が気になっていた。

その看板には多数の人の名前が書かれており、出雲がその紙を見る。その紙は長方形であるが新入生が多いためか縦幅一メートルに横幅が三メートルほどある長さにクラスと氏名が書かれていた。

出雲はその紙を見て自身達の名前を探した。すると、一年一組の欄に出雲達三人の名前を発見した。

「この紙は新入生のクラス分けみたいで、俺達三人の名前があったよ!」

そう出雲が言うと、美桜が胸を撫で下ろしているようであった。出雲とクラスが分かれるのが嫌だったようで、同じクラスと知ってほっとしているようである。椿も美桜同様にほっとしており、周囲の人達が喜んでいる姿を見て椿もやったと声をあげていた。

「出雲と一緒だ! 楽しくなりそう!」

椿が喜ぶと、美桜が私もいるからねと釘を椿に刺した。すると、分かってますぅと言って美桜に右手を出して美桜ちゃんもよろしくねと言った。美桜はちゃんは付けなくていいわよと言って、よろしくと右手を握って返答をした。

出雲達の一年一組は三階にあるため、下駄箱がある場所の奥に上の階に上がる階段があるため、出雲達は階段を上っていく。階段を上がる時に出雲は壁に何か貼ってあるなと見てみた。すると、そこには部活動の勧誘のチラシが貼られていた。

「部活だ! この世界の学校でも部活はあるんだ!」

出雲が目を輝かせてチラシを見ていると、美桜が今はいいから早く上がるわよと言う。椿も早くクラスに行こうと出雲に言うと、出雲ははーいと言って美桜と椿の後ろから階段を上っていく。

階段を上ってそれほど時間がかからずに三階に到着をした。三階では多くの新入生が立ち止まったり話していたりクラスを探していた。出雲達のクラスは階段の目の前にあったので、迷うことなくクラスを見つけることが出来た。

「私達のクラスはすぐあったわね。 入りましょう!」

美桜が出雲に早く入ろうと言って出雲と椿の二人は美桜の後に続いて入っていく。出雲達がクラスに入ると、美桜に気がついた蓮と琴音が入り口まで小走りで来た。

「美桜と出雲か! 同じクラスだな!」

蓮は腕を組んで頷きながら出雲と美桜を見た。

「美桜ちゃんと出雲君だ! 同じクラスになれて良かった!」

琴音は目を輝かせて出雲と美桜に話しかけていた。蓮と琴音は出雲と美桜の後ろにいる椿に気がついた。蓮と琴音は椿に出雲と美桜の友達なのかと話しかけた。

「私は出雲と美桜の友達だよ」

椿が笑顔で言うと、蓮と琴音も笑顔でよろしくねと返した。
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