第２０話　試験前のお誘い

出雲が部屋で準備をして待っていると、美桜が扉をノックした。出雲はいいよと言うと、部屋の中に入ってくる。

「お待たせ！ 今日は私の好きな街に一緒に行こうと思って！」

美桜はそう出雲に言うと、出雲は美桜の普段とは違う服に驚いていた。美桜は白色のプリーツスカートに茶色の肩だしのTシャツを着ていた。そして、肌色の小さめのバックを肩から下げており、普段の美桜よりラフな格好だなと思っていた。

出雲は美桜が買ってくれた黒のTシャツに青色のジーンズズボンを履いており、何を着ても最高だと思っていた。出雲は何着か美桜に服をもらっており、その中で自身がいいと思った組み合わせで服を着るのが楽しみの一つである。

「お待たせ。 今日の出雲はその服を着たんだ」

美桜がそう言うと、出雲も美桜に似合ってて可愛いよと言った。すると、美桜は馬鹿言わないでと言ってそっぽを向いてしまった。

「似合ってて可愛いのに」

出雲は再度言うと、美桜は顔を紅く染めながら早く行くよと出雲に言った。出雲はどこに行くんだろうと考えていた。美桜は楽しみにしてねと出雲に笑顔でいい、出発と鈴が鳴る可愛い声で右腕を上にあげた。出雲は美桜に連れられる形で初めて屋敷の外に出た。今日は太陽が出ていてとても気持ちの良い天気である。出雲は屋敷の外に出ると、自身のいた国と同じような建築形式の一軒家やマンションが立ち並び、この辺りは住宅街なのだと理解できた。

「初めて外に出たけど、綺麗な街だ！」

出雲は美桜の家の敷地内を出て周囲を見た感想を言う。美桜はそうかしらと小首を傾げるも、町並みやこの辺ににいる人たちは良い人が多いわと言う。しかし、少し場所を移すと変な人もいるから気を付けてと言った。

「そうなの？ でも、俺のいた日本よりは良い人多いと思いたいな」

出雲がそう言うと、美桜はそうだと良いわねと同意していた。そして二人は他愛ない会話をしながら笑って歩いていると、最寄の駅に到着をした。出雲のいた世界と違って、この世界の電車には車輪がなく線路と思われる場所を浮いて走っていた。

「俺のいた世界の電車と違う！ 浮いてる！」

出雲が駅の外から電車を見て騒いでいると、美桜が出雲の右耳を引っ張って恥ずかしいから早く行くわよと言う。駅の改札に来ると、スマートフォンを改札にかざした。

「何してるの？ 前に渡したスマートフォンで通れるわよ」

出雲は言われた通りにスマートフォンをかざすと、ピッとの音と共に改札が開いて通れた。

「やった！ 通れた！」

出雲が喜んでいると、お金とかはどうしているのと聞いた。美桜は私の口座から自動で入金と支払いをしているから大丈夫と言う。

「口座！？ 美桜ってアルバイトとかしてるの？」

出雲が改札を通り抜けながら聞くと、美桜はその場所に今から行くわと言う。出雲は凄い気になると言ってワクワクしていると、あそこのエスカレーターに乗って上のホームに行きましょうと言った。

出雲は美桜の後ろを歩いて行き、駅内の奥にあるエスカレーターに乗って上の階に上がった。そこでは多数の人々が電車を待っており、家族連れやカップルなどがいた。出雲はこの世界の人たちを見て、俺のいた世界と全く変わらない見た目をしているなと思った。

「ほら、こっちの右側の電車に乗るわよ」

美桜は来た電車に出雲を誘導して乗り込んでいく。その乗り込んだ電車は出雲のいた世界の電車と見た目は変わらず、数センチ浮かんで動いていることや浮かんでいるので音がほぼないことが違いである。

「浮かんでる！ 音がうるさくない！ 見た目が変わらない！」

出雲は思った感想をすぐ口出していっていると、美桜が出雲の頭部を軽く叩いた。

「うるさいのは出雲の方よ。 静かにしていなさい」

怒られた出雲はごめんと言って美桜の座った席の右側に座る。電車の中身も変わらずに、広告なども紙で車内に吊るされたり壁に貼られている。魔法のあるなしが違うのだろうと出雲は思っていた。

「魔法のあるなしでここまで違うものなんだ……俺のいた世界にも魔法があればまた違った未来があったのかな……」

出雲の呟きを聞いた美桜は、それだと私と会えなかったわよと出雲に言う。出雲はその美桜の言葉を聞いて、目を見開いた。

「会えないのは嫌だ！ こっちに来れたから美桜に会えたのに！」

出雲が美桜に言うと、美桜がならもういた世界のことを考えるのはやめてと出雲の眼を見て言う。