第47話 夕食後~一夜明けて~

文字数 1,754文字

夕食も滞りなく楽しく終わると、美桜は出雲に今日はゆっくり休んでと言って出雲と共に出雲の部屋の前まで二人で歩いていた。

「今日は晩御飯ありがとうね! 凄い美味しかった!」

出雲が再度美桜にありがとうと言うと、どういたしましてと美桜が笑顔で出雲に言った。

「この世界には魔法があって、魔物がいて私達の生活には多くの危険が身近にあるわ。 でも、出雲はこの世界を気に入ってくれて楽しく過ごせるようになって私は嬉しい」

美桜は突然話し始めた。その言葉を出雲は静かに聞いていた。そして美桜は私を守ってねと言いながら出雲に抱き着いた。

出雲は抱き着かれたことで心臓が高鳴るも、今は変なことは考えずに抱きしめ返そうと決めた。出雲にも抱き返された美桜は、心臓が徐々に高鳴っていた。

「出雲が私を守ってくれるなら、私も出雲を守るからね!」

守ってくれる。その言葉だけで出雲は泣きそうになってしまう。しかし、涙は流さないでそのまま美桜を抱き続けた。

「さ、そろそろ風呂入って寝てね! 明日結果が来るんでしょ? 絶対合格してるから!」

美桜はガッツポーズをして受かってると言う。出雲はありがとうと言って部屋の扉を開けてお休みと美桜に言った。部屋に入った出雲はベットに寝転がって寿司と刺身が美味しかったと呟いた。元の日本にいた時には考えられない料理と生活が今現在ある中で、出雲はこの世界に来て良かったと再度思っていた。美桜と会えて雫と会えて、椿と友達になった。美桜の友達とも知り合えて、天と地の差の生活だと考えている。

「美桜に食べさせてもらって美味しかったな……また美桜に食べさせてもらいたいな……」

そんなことを考えながら悶々としていると、カクっと寝てしまった。自分でも気がつかない程に疲れていたようである。出雲は熟睡をしてしまい、そのまま朝まで目が覚めなかった。

朝になり、朝食の時間になっても起きてこない出雲を美桜は心配になったので迎えに来た。出雲の部屋の扉をノックしても何も返事がないので仕方なく扉を開けた。すると、布団に包まって寝息を立てている出雲が見えた。

「出雲ー? 寝てるのー?」

美桜は出雲が寝ているベットに近づいて何度も起きてと言うが、出雲は一向に返事をせずに寝ていた。美桜は頬を膨らませてまだ寝るのならと呟き、寝ている出雲の鼻を摘まんだ。

出雲はふがっと言ったり息苦しくなって蠢いていた。そして、ぶはっと言いながら出雲は起き上がった。

「な、何だ何だ!?」

出雲が起き上がって何が起きたかと周囲を見ると、自身の目の前に美桜が笑顔で立っていた。出雲はどうして美桜が自身の部屋にいるのか理解が出来ずに何があったのと焦りながら目の前にいる美桜に聞く。

「朝食の時間になっても来なかったから、何かあったのかなと思って来たのよ」

そう言われた出雲は、もうそんな時間なのかと思って横に置いていたスマートフォンに表示されている時刻を見た。すると、その画面には午前九時十分と表示されていた。

「九時過ぎてる!? 俺はそんなに寝てたのか!?」

出雲が驚いていると、美桜がお腹空いたから早く行きましょうと出雲に言う。出雲はそうだねと言って、すぐに着替えていくからと言う。

「分かったわ。 早く来てよね」

そう言って美桜は早く来てよねと出雲に言うと部屋を出ていった。出雲は美桜が部屋から出たことを確認すると、すぐに服を着替えて食堂に走っていく。

食堂では既に美桜達が食事を始めており、出雲を見た美桜は早く食べちゃいなさいとスクランブルエッグとウィンナーに納豆ご飯が用意されていた。出雲はその納豆ご飯を見ると、懐かしいと目を輝かせていた。

「納豆ご飯がそんなに懐かしいの?」

美桜が目を輝かせて納豆ご飯を見ている様子を見て聞いた。出雲はその美桜の言葉を聞いて、席に座りながら前の世界のことを言う。

「唯一母親がくれた料理がパックに入った納豆を混ぜてくれて、それを冷えた白米の上に乗せてくれた納豆ご飯だったんだ。 だから、少し懐かしいと思って……」

出雲のその言葉を聞いた美桜と雫は、そんなことがあったんだと呟くも今は違うから美味しく食べて、違う思い出にしていこうと二人は言った。
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