第21話「将軍、作戦、大成功です!」
文字数 2,658文字
完全に、合コン覚醒したジェロームさん。
彼が話を振り、4人で展開されたお菓子の話は、異様に盛り上がった。
そして、じっくりと話してみて、吃驚 !
騎士のジェロームさんは、様々なお菓子の作り方に精通していた。
それどころか、王都の、ありとあらゆる製菓店の情報にも詳しかったからだ。
聞けば、休みの日はこっそりと、ひとりで食べ歩きまでしているという。
凄いよ、これ。
この人は、立派な菓子オタクだ。
カッコ良く、厨房でお菓子を作るのはともかく……
ガタイの凄い、逞しい騎士が、こっそりと、ひとりで食べ歩き……
と言うのが、少し笑える。
でも……とても、微笑ましいじゃないか。
案の定、シュザンヌさんも、晴れ晴れした笑顔だ。
武骨なジェロームさんへの印象が一転、「がらり!」と変わったらしい。
盛り上がる会話の中、ジェロームさんはきっぱりと言い放つ。
「現在、この王都で1番の店と言えば金糸雀 だな」
「ああ、そのお店なら……聞いた事があります」
すかさず反応したのは……
やはりシュザンヌさん。
この人も、俺とリンちゃん以上に甘党だって分かった。
で、あれば、ジェロームさんとは相性抜群。
これは、良い予感がする。
つらつら考える、俺を放置し……
ジェロームさんとシュザンヌさんは、お菓子の話を重ねて行く。
「うむ! シュザンヌさんはご存知だったか? 実は、まだ知る人ぞ知るという店なのだ」
「知る人ぞ知る……ですか?」
「ああ、金糸雀 のパティシェは、女性だけ。全員、情熱を持って仕事をしている素晴らしい女子達だ」
「素晴らしい女子達……」
「ああ、王都では味もセンスも抜群。その上、手頃な価格で飲食出来る、小さなカフェも併設しているぞ」
ほう!
こういうのは、とても有益な情報だ。
ジェロームさんの話は、お菓子に対する愛情が満ちていた。
そんな人が、力を入れて推薦する店である。
100%とは言わないが、それに近い確率で『当たり』である筈だ。
俺もぜひ、リンちゃんを連れて行こう。
そう思って彼女を見たら、すぐ伝わったみたいで、ウインクしてる。
ああ、可愛いな。
シュザンヌさんも、一気に機嫌が良くなったみたい。
笑顔のジェロームさんと、仲良く話している。
徐々に話は、お互いの仕事に関してという雰囲気。
騎士と巫女って、実は結構接点がある。
最近も、魔物との果てしない戦いが続いている。
騎士の仕事の大部分は魔物討伐。
巫女は、回復役として戦場に同行するのだ。
今回のセッティングも、その繋がりから起こったものだろう。
ジェローム将軍!
作戦は大成功ですね。
しかし、この後の詰めが大事です。
何かあれば、相談に乗りますからね。
俺がにっこりすれば、リンちゃんもにっこり。
先輩が幸せになるのを見て、嬉しいみたい。
さて、そんなこんなで……
まもなく、10分が経つ。
ジャンさんが、次の席替えに指定した時間だ。
店の壁に掛かっている魔導時計を見たら、丁度針を指すと同時に、ジャンさんが立ち上がった。
さすが赤い流星、時間には超正確。
標的 のジョルジェットさんは、というと……
夢見るような顔付きで、ぽ~っとして、ジャンさんを見つめている。
完・全・撃・破!!!
そういう事。
『仕事』を終えたジャンさんは、リュカを促して立たせると、左側に座った。
やっと!
リュカから『解放』された!
ステファニーちゃんには、はっきりと安堵の表情が見える。
一方のリュカは……
『ど』付くストライクで、好みらしいステファニーちゃんに対し、未練たらたらであったが……
仕方なくといった感じで、シュザンヌさんの前に座る。
こうして俺は、ジョルジェットさんの前、ジェロームさんはリンちゃんの前に座り、合コンは再開されたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ええっと! こんばんわ、! ジョルジェットさん」
俺は、向かい側に座ったジョルジェットさんへ、元気に挨拶した。
ジョルジェットさんも、ジャンさんからかけられた、甘い言葉の余韻が残っているのだろう。
すこぶる上機嫌である。
「こんばんわ、クリスさん。うふふ、先輩達と盛り上がっていたわね。楽しそうで羨ましかったわ」
おお、そう来たか!
これって、慎重に受け答えしなければならない。
ジャンさんとの事を聞くのは絶対にご法度。
無難な、切り返しがベストだ。
かと言って、『嘘』はまずいから、少し悩みどころである。
「ええ、お菓子の話で盛り上がりましたよ。全員甘党だったもので……」
「私も甘党です。大きな声だから、こちらへも聞えましたけど……ジェロームさんって、お菓子にとても詳しそうですね。色々と聞いてみようかしら?」
おおっと!
今度は、そう来たか!
じゃあ、こういう切り返しって、どうですか?
「ジェロームさんとジャンさんは、とっても仲が良いみたいですから、お菓子の情報も、色々と共有しているんじゃないですかね?」
「へぇ! だったら、ジャンに聞いてみようかな?」
ここでジョルジェットさんの言葉を、ただ聞き流してはいけない。
彼女は『ジャン』と呼び捨てにした。
という事は……結構親しい間柄になった証拠である。
ここは、ジャンさんのフォローだ。
それで良い。
「ジョルジェットさんの仰る通り! 何かあれば、すべてジャンさんに聞くのが良いと思います」
そのジャンさんは……
俺の声、いやジョルジェットさんとの会話を、ちゃんと聞いていたらしい。
大きく頷くのが、気配で分かる。
ここで、ジョルジェットさんは話題を変えて来た。
無難な仕事ネタだ。
「ねぇ? クリスさんは魔法鑑定士ですって?」
「はい! まだまだ未熟者ですが、ね」
ここは俺も無難に切り返そう。
同じく仕事ネタで。
「ジョルジェットさんは、創世神様の巫女さんですよね。お仕事は、大変でしょう?」
さりげない切り返しだ。
しかし、このひと言が、大騒ぎの原因になるとは……
誰にも運命なんて、分からない。
……その格言通りだったのである。
彼が話を振り、4人で展開されたお菓子の話は、異様に盛り上がった。
そして、じっくりと話してみて、
騎士のジェロームさんは、様々なお菓子の作り方に精通していた。
それどころか、王都の、ありとあらゆる製菓店の情報にも詳しかったからだ。
聞けば、休みの日はこっそりと、ひとりで食べ歩きまでしているという。
凄いよ、これ。
この人は、立派な菓子オタクだ。
カッコ良く、厨房でお菓子を作るのはともかく……
ガタイの凄い、逞しい騎士が、こっそりと、ひとりで食べ歩き……
と言うのが、少し笑える。
でも……とても、微笑ましいじゃないか。
案の定、シュザンヌさんも、晴れ晴れした笑顔だ。
武骨なジェロームさんへの印象が一転、「がらり!」と変わったらしい。
盛り上がる会話の中、ジェロームさんはきっぱりと言い放つ。
「現在、この王都で1番の店と言えば
「ああ、そのお店なら……聞いた事があります」
すかさず反応したのは……
やはりシュザンヌさん。
この人も、俺とリンちゃん以上に甘党だって分かった。
で、あれば、ジェロームさんとは相性抜群。
これは、良い予感がする。
つらつら考える、俺を放置し……
ジェロームさんとシュザンヌさんは、お菓子の話を重ねて行く。
「うむ! シュザンヌさんはご存知だったか? 実は、まだ知る人ぞ知るという店なのだ」
「知る人ぞ知る……ですか?」
「ああ、
「素晴らしい女子達……」
「ああ、王都では味もセンスも抜群。その上、手頃な価格で飲食出来る、小さなカフェも併設しているぞ」
ほう!
こういうのは、とても有益な情報だ。
ジェロームさんの話は、お菓子に対する愛情が満ちていた。
そんな人が、力を入れて推薦する店である。
100%とは言わないが、それに近い確率で『当たり』である筈だ。
俺もぜひ、リンちゃんを連れて行こう。
そう思って彼女を見たら、すぐ伝わったみたいで、ウインクしてる。
ああ、可愛いな。
シュザンヌさんも、一気に機嫌が良くなったみたい。
笑顔のジェロームさんと、仲良く話している。
徐々に話は、お互いの仕事に関してという雰囲気。
騎士と巫女って、実は結構接点がある。
最近も、魔物との果てしない戦いが続いている。
騎士の仕事の大部分は魔物討伐。
巫女は、回復役として戦場に同行するのだ。
今回のセッティングも、その繋がりから起こったものだろう。
ジェローム将軍!
作戦は大成功ですね。
しかし、この後の詰めが大事です。
何かあれば、相談に乗りますからね。
俺がにっこりすれば、リンちゃんもにっこり。
先輩が幸せになるのを見て、嬉しいみたい。
さて、そんなこんなで……
まもなく、10分が経つ。
ジャンさんが、次の席替えに指定した時間だ。
店の壁に掛かっている魔導時計を見たら、丁度針を指すと同時に、ジャンさんが立ち上がった。
さすが赤い流星、時間には超正確。
夢見るような顔付きで、ぽ~っとして、ジャンさんを見つめている。
完・全・撃・破!!!
そういう事。
『仕事』を終えたジャンさんは、リュカを促して立たせると、左側に座った。
やっと!
リュカから『解放』された!
ステファニーちゃんには、はっきりと安堵の表情が見える。
一方のリュカは……
『ど』付くストライクで、好みらしいステファニーちゃんに対し、未練たらたらであったが……
仕方なくといった感じで、シュザンヌさんの前に座る。
こうして俺は、ジョルジェットさんの前、ジェロームさんはリンちゃんの前に座り、合コンは再開されたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ええっと! こんばんわ、! ジョルジェットさん」
俺は、向かい側に座ったジョルジェットさんへ、元気に挨拶した。
ジョルジェットさんも、ジャンさんからかけられた、甘い言葉の余韻が残っているのだろう。
すこぶる上機嫌である。
「こんばんわ、クリスさん。うふふ、先輩達と盛り上がっていたわね。楽しそうで羨ましかったわ」
おお、そう来たか!
これって、慎重に受け答えしなければならない。
ジャンさんとの事を聞くのは絶対にご法度。
無難な、切り返しがベストだ。
かと言って、『嘘』はまずいから、少し悩みどころである。
「ええ、お菓子の話で盛り上がりましたよ。全員甘党だったもので……」
「私も甘党です。大きな声だから、こちらへも聞えましたけど……ジェロームさんって、お菓子にとても詳しそうですね。色々と聞いてみようかしら?」
おおっと!
今度は、そう来たか!
じゃあ、こういう切り返しって、どうですか?
「ジェロームさんとジャンさんは、とっても仲が良いみたいですから、お菓子の情報も、色々と共有しているんじゃないですかね?」
「へぇ! だったら、ジャンに聞いてみようかな?」
ここでジョルジェットさんの言葉を、ただ聞き流してはいけない。
彼女は『ジャン』と呼び捨てにした。
という事は……結構親しい間柄になった証拠である。
ここは、ジャンさんのフォローだ。
それで良い。
「ジョルジェットさんの仰る通り! 何かあれば、すべてジャンさんに聞くのが良いと思います」
そのジャンさんは……
俺の声、いやジョルジェットさんとの会話を、ちゃんと聞いていたらしい。
大きく頷くのが、気配で分かる。
ここで、ジョルジェットさんは話題を変えて来た。
無難な仕事ネタだ。
「ねぇ? クリスさんは魔法鑑定士ですって?」
「はい! まだまだ未熟者ですが、ね」
ここは俺も無難に切り返そう。
同じく仕事ネタで。
「ジョルジェットさんは、創世神様の巫女さんですよね。お仕事は、大変でしょう?」
さりげない切り返しだ。
しかし、このひと言が、大騒ぎの原因になるとは……
誰にも運命なんて、分からない。
……その格言通りだったのである。