第13話「癒し系の彼女」
文字数 3,142文字
バジル部長を、『伯父』と呼んだ女の子は、優しく微笑んでいる。
悩みが大幅に緩和。
元気が出て、機嫌の良いバジル部長は、にこやかに彼女を紹介してくれた。
「おお、ちょうど良かった。紹介しよう、この子は私の姪フルールだ」
部長に目くばせされた、彼女……フルールさんは俺に笑顔を向け、
「フルール・ボードレールと申します。宜しくお願い致します」
へぇ!
元気な挨拶をする、この子……やっぱり、バジル部長の姪っ子さんなんだ。
か、可愛いなぁ!
ええっと……
フルールさん、身長は結構あって160㎝半ばくらいか。
体型は「すらり」として足が長い。
うっわ!
華奢な身体に似合わない大きな胸。
明るい栗色のロングヘア。
切れ長の目に、綺麗な鳶色の瞳。
目鼻立ちは、はっきりしていて端麗な美人。
黒髪じゃないところを除けば、リンちゃんに良く似ている。
笑うと目が垂れてしまう癒し系で、首を傾げる仕草も。
それ以上に、声が凄くそっくりなんだ。
俺がフルールさんに見とれているのに気が付き、バジル部長が悪戯っぽく笑う。
今度は、俺の紹介をするみたい。
「ふふ、彼があの、クリストフ・レーヌ君だ」
あの?
あの、って……
一体、何でしょう、部長。
その意味ありげな笑いは?
フルールさんも、微笑んで頷く。
「お噂はかねがね……」
だから、その『噂』って何?
凄く、気になるんですよ。
俺がそんな心配をしていたら、バジル部長が説明してくれた。
「クリス君は誠実な上、優秀な魔法鑑定士だぞと、よく姪に話していたのさ」
ほっ……何だ。
女子に声かけまくりな、『超軽薄合コン野郎』と、言われていなくてよかった。
「それにしても伯父様、どうされたの? 急に明るくおなりになったわ」
「いや、クリス君と話していたら気分が晴れたのさ……もう、大丈夫だよ」
俺と話して、恋愛の悩みが解消されたから、明るくなったのは当然だ。
まあその言い方だと、姪っ子のフルールさんにも、『年下女性との秘めたる恋愛』は教えてはいないみたい。
「そう……よかった」
「フルール、お前にここへ連れて来て貰って、本当に良かったよ」
「うふふふ」
ああ、!
フルールさんの笑顔に、俺は癒される。
笑うと、余計可愛いな~
でも、外人女子なのに、声も雰囲気もリンちゃんにそっくりだ。
だから、結構思い出して……辛い。
折角忘れようとして、立ち直りかけた矢先だから。
でもさっきから俺の事をじ~っと見てる。
変な感じかな、俺。
ああ、さっき大きな胸を凝視したのが……ば、ばれたかな?
と、不安に怯えていたら……
いきなり、フルールさんから声を掛けられた。
「クリスさん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
「さっきから……私の事をずっと見ていますけど……私って、何か変ですか?」
うわ、ヤバイ。
自分では気付かなかったけど、やっぱり俺は、フルールさんの事を変な目で見ていたんだ。
俺の不安がMAXに達しようとした、その時。
「ははははは、何か良い雰囲気じゃないか、君達」
「え? 伯父様?」
「うんうん、クリス君ならば、私もお前の母に自信を持って薦められる。そうそう! 私は急にエールを飲みたくなったから、向こうへ行こう。ふたりきりで話すと良い」
「ええっ?」
戸惑うフルールさん。
でも、さすが部長。
凄く気が利く。
俺、貴方に一生ついていきますよぉ。
バジル部長は、グラスを持ち上げ、笑顔で乾杯のポーズをすると……
俺とフルールさんを置いて、人混みに紛れてしまった。
「もう伯父様ったら……」
いきなりの展開に、フルールさん、苦笑している。
しかし、超が付く特大チャンスだ。
ここまで部長にお膳立てして貰ったら、絶対に決めないと。
フルールさんは俺の好みだし、性格も良さそう。
彼女候補には申し分ない。
そしてこんなことは、絶対に言ってはいけないが……
もう二度と会えない……あの子に……とても似ているから。
「クリスさん、さっきの話の続きですが……何故、私をじっと見ていたのですか?」
え?
フルールさんったら、覚えていたの?
その話題は変えましょうよ。
頼むから。
しかし、フルールさんが意外な事を言う。
「私が変に見えるのは、確かかもしれません……」
「は? フルールさん?」
「実は今朝……凄くショックな事がありましたから……とても落ち込んでいるのです」
「凄く、ショックな事……ですか?」
「あ、いえ! 初対面の方には、言う事じゃあありませんよね。ああ、私ったら、……一体、どうしたのでしょう?」
フルールさんは顔をしかめた。
「余計な事を言って、しまった!」という表情をしている。
そして、黙り込んでしまう。
これは……ヤバイ。
会話がぷっつり途切れた上、気まずくなってこの場限り……
という可能性もある。
何とか、話をつながないと。
よし!
ここは、『同じような話題』が良い? かな……
「じ、実は! お、お、俺も! け、今朝、ショックな事があったんです!」
「え?」
ああ、俺は!
一体、何を言っているんだ。
何か?
口が勝手に動いた?
こんな事を言ったら、話がややこしくなるだけじゃない。
まさか、「朝起きたら……違う世界に転生していましたよぉ」
なんて言えるか!
「ク、クリスさんもですか?」
何故か、フルールさんが食いついて来た。
対して、俺は、
「は、はい! とてもショックな事です」
と答えてしまった。
ああ、何だ、これ?
さっきから口が、勝手に動いて止まらない。
まさか?
誰かの魔法?
んな、馬鹿な?
俺は人から恨みを買うような事はしていないし、周囲を見ても、怪しい奴は居ない。
だが俺の口は、己の意思に反して、止まらず……
「俺……いきなりアクシデントがあって、とても大切な人に会えなくなったのです」
「え? そ、それ……私もです……今朝とても不思議な事が起こって、凄く大切な約束が果たせなくなってしまったのです」
ええっ?
フルールさんも?
それも不思議な事って?
戸惑う俺だが、やはり口だけが止まらない。
「実は……俺が約束を果たせなかった相手って……女の子なんです」
「女の子……」
「ええ、会った瞬間、運命の子だと感じたのですが……もう二度と会えなくなりました」
「運命の子……もう二度と会えない……」
「一回だけデートをしました。俺の事を、お人よしねって優しく笑う顔が……とても素敵な女の子で……俺の話をいろいろ良く聞いてくれて、だから忘れようと思っていましたが、忘れられず……貴女を見て、つい、思い出してしまいました」
「私を見て? お、思い出してしまった?」
「ええ、フルールさん、貴女の声が……その彼女に凄く似ていたんです。仕草もそっくりだった」
あああ~~、とうとう言っちゃった。
もう最悪だ。
女の子を口説く時に、以前好きだった子を、引き合いに出すなんて。
「…………」
やっぱり!
ほら、フルールさんも、怒って黙り込んじゃったじゃないか。
顔も伏せているし。
ぶるぶると、身体まで振るわせてる。
そして、フルールさんは遂に顔をあげた。
彼女の目は……真っ赤になり、その上、涙がいっぱいあふれていたのである。
悩みが大幅に緩和。
元気が出て、機嫌の良いバジル部長は、にこやかに彼女を紹介してくれた。
「おお、ちょうど良かった。紹介しよう、この子は私の姪フルールだ」
部長に目くばせされた、彼女……フルールさんは俺に笑顔を向け、
「フルール・ボードレールと申します。宜しくお願い致します」
へぇ!
元気な挨拶をする、この子……やっぱり、バジル部長の姪っ子さんなんだ。
か、可愛いなぁ!
ええっと……
フルールさん、身長は結構あって160㎝半ばくらいか。
体型は「すらり」として足が長い。
うっわ!
華奢な身体に似合わない大きな胸。
明るい栗色のロングヘア。
切れ長の目に、綺麗な鳶色の瞳。
目鼻立ちは、はっきりしていて端麗な美人。
黒髪じゃないところを除けば、リンちゃんに良く似ている。
笑うと目が垂れてしまう癒し系で、首を傾げる仕草も。
それ以上に、声が凄くそっくりなんだ。
俺がフルールさんに見とれているのに気が付き、バジル部長が悪戯っぽく笑う。
今度は、俺の紹介をするみたい。
「ふふ、彼があの、クリストフ・レーヌ君だ」
あの?
あの、って……
一体、何でしょう、部長。
その意味ありげな笑いは?
フルールさんも、微笑んで頷く。
「お噂はかねがね……」
だから、その『噂』って何?
凄く、気になるんですよ。
俺がそんな心配をしていたら、バジル部長が説明してくれた。
「クリス君は誠実な上、優秀な魔法鑑定士だぞと、よく姪に話していたのさ」
ほっ……何だ。
女子に声かけまくりな、『超軽薄合コン野郎』と、言われていなくてよかった。
「それにしても伯父様、どうされたの? 急に明るくおなりになったわ」
「いや、クリス君と話していたら気分が晴れたのさ……もう、大丈夫だよ」
俺と話して、恋愛の悩みが解消されたから、明るくなったのは当然だ。
まあその言い方だと、姪っ子のフルールさんにも、『年下女性との秘めたる恋愛』は教えてはいないみたい。
「そう……よかった」
「フルール、お前にここへ連れて来て貰って、本当に良かったよ」
「うふふふ」
ああ、!
フルールさんの笑顔に、俺は癒される。
笑うと、余計可愛いな~
でも、外人女子なのに、声も雰囲気もリンちゃんにそっくりだ。
だから、結構思い出して……辛い。
折角忘れようとして、立ち直りかけた矢先だから。
でもさっきから俺の事をじ~っと見てる。
変な感じかな、俺。
ああ、さっき大きな胸を凝視したのが……ば、ばれたかな?
と、不安に怯えていたら……
いきなり、フルールさんから声を掛けられた。
「クリスさん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
「さっきから……私の事をずっと見ていますけど……私って、何か変ですか?」
うわ、ヤバイ。
自分では気付かなかったけど、やっぱり俺は、フルールさんの事を変な目で見ていたんだ。
俺の不安がMAXに達しようとした、その時。
「ははははは、何か良い雰囲気じゃないか、君達」
「え? 伯父様?」
「うんうん、クリス君ならば、私もお前の母に自信を持って薦められる。そうそう! 私は急にエールを飲みたくなったから、向こうへ行こう。ふたりきりで話すと良い」
「ええっ?」
戸惑うフルールさん。
でも、さすが部長。
凄く気が利く。
俺、貴方に一生ついていきますよぉ。
バジル部長は、グラスを持ち上げ、笑顔で乾杯のポーズをすると……
俺とフルールさんを置いて、人混みに紛れてしまった。
「もう伯父様ったら……」
いきなりの展開に、フルールさん、苦笑している。
しかし、超が付く特大チャンスだ。
ここまで部長にお膳立てして貰ったら、絶対に決めないと。
フルールさんは俺の好みだし、性格も良さそう。
彼女候補には申し分ない。
そしてこんなことは、絶対に言ってはいけないが……
もう二度と会えない……あの子に……とても似ているから。
「クリスさん、さっきの話の続きですが……何故、私をじっと見ていたのですか?」
え?
フルールさんったら、覚えていたの?
その話題は変えましょうよ。
頼むから。
しかし、フルールさんが意外な事を言う。
「私が変に見えるのは、確かかもしれません……」
「は? フルールさん?」
「実は今朝……凄くショックな事がありましたから……とても落ち込んでいるのです」
「凄く、ショックな事……ですか?」
「あ、いえ! 初対面の方には、言う事じゃあありませんよね。ああ、私ったら、……一体、どうしたのでしょう?」
フルールさんは顔をしかめた。
「余計な事を言って、しまった!」という表情をしている。
そして、黙り込んでしまう。
これは……ヤバイ。
会話がぷっつり途切れた上、気まずくなってこの場限り……
という可能性もある。
何とか、話をつながないと。
よし!
ここは、『同じような話題』が良い? かな……
「じ、実は! お、お、俺も! け、今朝、ショックな事があったんです!」
「え?」
ああ、俺は!
一体、何を言っているんだ。
何か?
口が勝手に動いた?
こんな事を言ったら、話がややこしくなるだけじゃない。
まさか、「朝起きたら……違う世界に転生していましたよぉ」
なんて言えるか!
「ク、クリスさんもですか?」
何故か、フルールさんが食いついて来た。
対して、俺は、
「は、はい! とてもショックな事です」
と答えてしまった。
ああ、何だ、これ?
さっきから口が、勝手に動いて止まらない。
まさか?
誰かの魔法?
んな、馬鹿な?
俺は人から恨みを買うような事はしていないし、周囲を見ても、怪しい奴は居ない。
だが俺の口は、己の意思に反して、止まらず……
「俺……いきなりアクシデントがあって、とても大切な人に会えなくなったのです」
「え? そ、それ……私もです……今朝とても不思議な事が起こって、凄く大切な約束が果たせなくなってしまったのです」
ええっ?
フルールさんも?
それも不思議な事って?
戸惑う俺だが、やはり口だけが止まらない。
「実は……俺が約束を果たせなかった相手って……女の子なんです」
「女の子……」
「ええ、会った瞬間、運命の子だと感じたのですが……もう二度と会えなくなりました」
「運命の子……もう二度と会えない……」
「一回だけデートをしました。俺の事を、お人よしねって優しく笑う顔が……とても素敵な女の子で……俺の話をいろいろ良く聞いてくれて、だから忘れようと思っていましたが、忘れられず……貴女を見て、つい、思い出してしまいました」
「私を見て? お、思い出してしまった?」
「ええ、フルールさん、貴女の声が……その彼女に凄く似ていたんです。仕草もそっくりだった」
あああ~~、とうとう言っちゃった。
もう最悪だ。
女の子を口説く時に、以前好きだった子を、引き合いに出すなんて。
「…………」
やっぱり!
ほら、フルールさんも、怒って黙り込んじゃったじゃないか。
顔も伏せているし。
ぶるぶると、身体まで振るわせてる。
そして、フルールさんは遂に顔をあげた。
彼女の目は……真っ赤になり、その上、涙がいっぱいあふれていたのである。