第26話「俺は異世界で、宿命の恋に巡り会う②」

文字数 2,839文字

 傷心のリュカに起こった、素晴らしい奇跡。
 それは……冒険者ギルド所属の魔法鑑定士、ルネちゃんとの出会いであった。
 ほら!
 俺が、恋の悩み相談に乗っていたあの子さ。

 何と!
 普段から、『わがまま彼氏』に凄い不満を持っていた、ルネちゃんが遂に別れ……
 驚いた事に、リュカと「くっついてくれた」のだ。
 
 発端は……
 目の前で、仕事に一生懸命取り組むリュカを見て、ルネちゃんはプライベートの相談を持ち掛けた。
 俺の時みたいに、それも、何度も何度も……
 
 結果、ふたりが仲良くなるのは必然。
 最終的にはリュカが、ルネちゃんの愚痴をまめに聞いて、慰めてあげたのが決め手となった。

 正式に付き合いだしてから……
 ルネちゃんは以前の彼氏と違って、喧嘩など全くなく、リュカと仲良くやっているらしい。
 当然、ルネちゃんから俺へ、合コンの誘いはない。
  
 こうなると……
 冒険者ギルドへ配置転換して貰ったリュカは、俺に感謝しきりだ。
 ルネちゃんとは、結婚も視野に入れた付き合いをしていて、仕事にもますます気合が入り、良い巡り合わせとなっている。
 
 ちなみに、ルネちゃんは、リュカより少し年上。
 だが、奴みたいなタイプは、姉さん女房の方が良いかもしれない。

 え?
 合コンのメンツが、あれからどうなっているのか、気になるって?
 大丈夫!
 全員、上手くやっているよ。

 騎士のジャンさんは、ジョルジェットさんとすぐに結婚。
 結婚直後、リンちゃんと共に新婚家庭に招かれたが、相変わらず熱々だった。

 更に、こちらも予想通り、カルパンティエ公爵家の御曹司ジェロームさんも、シュザンヌさんと最近婚約。
 現在巫女であるシュザンヌさんの出自は、商家の娘であるが、最近の風潮から身分の差は問題ないと思われた。
 
 でも、さすがカルパンティエ家は名門貴族。
 今どきの風潮だからと、簡単に、ジェロームさん達の結婚を認めなかった。
 
 ジェロームさんの父カルパンティエ公爵が身分は勿論……
 俺から見れば、本当に失礼だと思うが……
 シュザンヌさんの年齢(推定30歳)も含めて反対したのだ。
 
 しかしジェロームさんは、「愛はすべてに勝る!」と強硬に父の公爵へ主張。
 熱意と真剣さで、堂々と押し切ったそうである。
 
 こうなると、シュザンヌさんは、大感激。
 その場で、号泣したらしい。
 結果、こちらも今や、相思相愛のあつあつカップルだ。
 ジェロームさんは、とても義理堅い人で、今後も末永く付き合いたいと言って来た。
 こちらも、願ったり叶ったりである。

 そして、風の便りに聞いた話だと……
 ステファニーちゃんも、イケメンで真面目な彼氏を見つけたという。

 結局……
 あの夜、俺と関わったメンバーは、全員カップルとなってしまった。
 この異世界でも、俺の『愛の伝道師キャラ』は、バッチリ生きていたということになる。
 
 あと、『おまけの話』と言ったら、絶対にぶっ飛ばされるが……
 元同僚で、今や部下のケルトゥリは、
 俺の『アールヴは、同族しか愛せない説』に反し、
 何と!
 人間の男と愛し合い、付き合っているみたい。
 仲はとても上手くいっているようで、……毎日機嫌良く、元気に働いている。

 最後に……
 肝心の俺とリンちゃん、すなわちこの異世界ではクリストフ・レーヌとフルール・ボードレールの現状はといえば……

 交際はいたって順調。
 双方の親にも挨拶して、結婚を認めて貰い、新居も決まった。
 俺達は……来月、結婚式を挙げるのだ。

 実は、今日が、結婚式の衣装合わせの日である。
 場所は、当然ながら、式場である創世神様の教会。

 こんな日は、時間が過ぎるのを遅く感じるが……
 俺は地道に仕事をこなすと、定時に職場をあがった。
 前もって根回しをしてあるから、誰もが気持ちよく送ってくれた。

 商業ギルドを出た俺は走る。
 王都の石畳の道を、教会へと、ひたすら走る。
 息が切れても、構わず走る。

 いよいよ!
 リンちゃんの、花嫁姿が見れるのだから。
 もう胸が、高鳴りっぱなしだ。

 先に、衣装合わせを始めると言っていたから多分……

 教会に到着した俺は、受付で部屋を聞くと、一目散に向かう。
 衣装部屋に着いて、ひと呼吸置いてノックをした。

「クリスです!」

「はい! フルールです」

 中からは、リンちゃんの声がした。
 そして、一瞬の間を置き、

「……どうぞ」

 と、入室が許可されたので、俺は扉を開けて部屋へ入る。
 すると!

 俺の目の前には、着付けの担当の女性、
 そして、純白の花嫁用ドレスを着たリンちゃんが立っていた。
 
 おお、リンちゃん!
 何という神々しさ!
 この素晴らしい衣装を、俺の為に着てくれるなんて、大感激だ。

 俺は着付けの女性に一礼すると、彼女は気をきかせ、部屋を出てくれた。
 こうなったら、もう遠慮はいらない。

「綺麗だ!」

「本当?」

 リンちゃんはにっこり笑って白い手袋をした手を差し出す。
 俺は彼女の手をしっかり握った。
 温かく、柔らかい手が嬉しい。
 
 ああ、この手だ。
 初めてのデートで、おずおずと差し出した俺の手を、君はしっかり握ってくれた。
 
 俺は……
 この手を、もう二度と離さない。
 
 ふたりが繋いだ手……
 それはまるで、しっかりと交差した、運命のように見える。

 俺は心の中で、リンちゃんへ呼び掛ける……

 そう、初めて会った日に……
 リンちゃん、俺は恋に落ちたんだ。
 初めての、ひとめぼれだった。
 
 だが、悪戯好きな神様は残酷だった。
 異世界に転生し、リンちゃんと離れ離れになった俺に、最初は絶望しかなかった。
 
 しかし、第一の奇跡は起こった……
 リンちゃん!
 君も何故か、この異世界へ転生して来たんだ。
 
 だけど、いくら転生したって……
 この広い異世界、数多の人が居る中で……
 ふたりの再会なんて、限りなくゼロに等しい確率なのに……
  
 離れ離れになったふたりの人生は再び……交差した。
 
 そう!
 第二の奇跡が起こったんだ。
 結果……
 俺とリンちゃんは、起こりえない二度の奇跡を経て、前世より更に強い『愛の絆』を結ぶ事が出来た。
 
 改めて実感する。
 リンちゃんの美しい花嫁姿を見て今、はっきりと確信する。
 
 この遥か遠い異世界で……
 遂に俺は……
 宿命の恋に、巡り会う事が出来たのだと。

※『縁結び男だって、幸せになりたい! 異世界転生した俺は、宿命の恋に巡り会う!』は、これで終わりです。
ご愛読ありがとうございました。

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登場人物紹介

☆大門寺トオル(俺)※転生前

本作の主人公。ブラック企業勤務のリーマン。25歳。独身。彼女いない歴8年。

あだ名は『愛の伝道師』

飲み会に参加するとカップル成立率が抜群に上がるのと、恋愛世話好きな為、周囲から重宝がられる。

しかし、遂に自分の幸せを追い求めようと決意。

人生通算100回目の合コンで、運命の女性? 相坂リンと出会い、デートをするが……



☆クリストフ・レーヌ(俺)※転生後の大門寺トオル

愛称はクリス。ヴァレンタイン王国商業ギルド魔法鑑定課所属の魔法鑑定士。

25歳。彼女なし。

元は、完全な別人格だが、大門寺トオルの人格が憑依。

恋愛世話好きなキャラは全く同じ。


☆相坂リン

某大病院勤務の看護師。24歳。独身。

優しい性格で、癒し笑顔が特徴の美人。トオルの事を友人から聞き、合コンで意気投合した。


☆リュカ・アルノー

ヴァレンタイン王国商業ギルド魔法鑑定課所属の魔法鑑定士。

クリスの後輩で23歳、独身。

面倒見の良いクリスにくっつき、可愛い彼女を作ろうと画策中。

☆ドミニク・イベール

ヴァレンタイン王国商業ギルド所属の魔法鑑定士。

クリスとリュカの上司で魔法鑑定課課長。35歳。独身。

結構なストレスを抱えているらしく、いつもクリスとリュカを怒鳴り散らしている。

☆バジル・ケーリオ

ヴァレンタイン王国冒険者ギルド総務部部長。51歳。独身。

クリスの出向先である冒険者ギルドでの上司。温厚で真面目な性格。

☆フルール・ボードレール

バジル部長の姪。創世神教会勤務の巫女で治癒士。24歳。独身。

目鼻立ちの、はっきりした端麗な美人。

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