第16話「2次会は清らかな乙女達と①」
文字数 2,536文字
午後7時、レストラン『探索 』個室、宝剣の間……
今日の2次会、すなわち合コンは、ヴァレンタイン王都騎士隊勤務の隊士『赤い流星』ジャン・アズナヴールさんが手配した。
お相手は、創世神様に仕える巫女さんたちである。
その中に、俺の彼女フルール、すなわち転生した『リンちゃん』も居た。
巫女さん達は、全員明るい。
笑顔が素敵である。
中でも俺から見て、ダントツ一番は、リンちゃんなのだが。
「今晩わ~」
「今晩わ!」
「宜しくね!」
「あの人……恰好良い」
巫女さん達は、挨拶をして来たり、ぽつりと呟く子も居た。
ここでジャンさんが、「そっ」と俺へ耳打ちする。
やはり……念押しだった。
「クリス君、悪い。最初の約束通り、ジェローム先輩をしっかりとサポートしてくれよ。後、乾杯以降の司会もね」
「了解! 任せて下さい」
当然、俺は「打てば響け」の返事を戻した。
さてさて、今夜のメンツは男4人に女4人。
ジャンさんの指示で、男女各4人ずつ並列、男と女が対面になるように向かい合う。
普通は、年齢順や職業別に座る。
しかし、今回はジェロームさんのフォローを頼まれた。
なので、ジェロームさん、俺、ジャンさん、リュカの順に座る。
でも会が終わるまでに、お互い全員が話せるようにもした。
一定の時間が経つと、男子が席を時計回りに移動するのだ。
お約束なのだが、念の為、事前に伝えておく。
もしもファーストインプレッションで、お互いに意識したりとか、
既に思惑があったしても、例外は認めない。
まずは、リンちゃんが、俺の真向かいに座ったのでホッとする。
だが、今後の男子軍団の動向には注意しなければならない。
まず無いとは思うが……
ジャンさんが、万が一、心変わりする可能性だってあるし、全く気を抜けない。
最初は……自己紹介からである。
幹事同士は知り合いだから、当然お互いのフルネームを知ってはいる。
だが、他の参加者は最初、ファーストネームと職業のみ名乗る。
話が弾んで親しくなったら、初めてフルネームと詳しい素性を教え合うのが、この異世界の合コンルールなのだ。
「ジェ、ジェローム、騎士だ」
「クリスです。魔法鑑定士やっています」
「ジャンです。ジェロームさんの後輩で騎士やっています」
「リュカで~す! クリス先輩と同じ魔法鑑定士で~す」
男性陣の紹介が終了し、続いて女性陣である。
「シュザンヌです! 創世神様の巫女をやっています。ちなみにここに居るのは全員巫女だから私以外は名前だけ言うわね」
「フルールよ」
「ジョルジェットです」
「……ステファニー」
おお!
やはりというか!
幹事のシュザンヌさんを始めとして、タイプはそれぞれ違うが、全員可愛い。
俺も、リンちゃんが居なければ、絶対、目移りするところだ。
そのリンちゃんに聞いた話では、ジャンさんの目当ての子って、ジョルジェットさんらしい。
だが、一応確認しておかなければ。
他のメンツにも、それとなく伝えておかないといけない。
こういう事が気配り……なのだ。
自己紹介が終わると、当然ながら乾杯をする。
店の方も心得ていて、冷えたエールのジョッキが出て来るタイミングは、バッチリである。
ちなみに、この世界では、魔力で冷やせる冷蔵庫が普及している。
なので、かつての地球の中世西洋と違い、食材の鮮度は抜群でとても美味しい。
飲み物は冷蔵庫で冷やすのは勿論、店専属の水属性魔法使いが居て、キンキンに冷やした飲み物を出してくれる。
挨拶後に、乾杯の音頭を取るのは幹事の役目である。
今回は、男性陣の幹事役であるジャンさんだ。
乾杯以降は、俺が仕切りを頼まれている。
「では! 今夜の素敵な出会いを祝して! 君達、巫女の美しさに乾杯!」
うっわ~
さすがは、イケメン騎士。
俺なら、絶対に無理めの、気障 な台詞 を平気で言い切った。
でも、ジャンさんはカッコいいから、全然嫌味に聞こえないのが凄い。
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
カッチーン!
コーン!
コン!
陶器製のマグカップが、軽くぶつけられる乾いた音が鳴り響く。
さあ、いよいよ合コンの本番開始だ。
フォローを頼まれた右横のジェロームさんを、俺はそっと見た。
何となく、表情が硬い。
挨拶の時も、緊張して噛んでいたし、少々心配だ。
ジェロームさんの真向かいは、女子の幹事役、シュザンヌさんである。
長いさらさらの金髪を、ポニーテールにした綺麗な碧眼の女性。
少し冷たい雰囲気もあるが、顔立ちは整っている。
胸もそこそこあってスタイルも良く、正統派の美人と言えるだろう。
そして……
まともに聞いたら、「殺される」ので、絶対にそんな事はしないが……
シュザンヌさんの、発する魔力波 と肌の張りを見れば30歳といったところ。
俺は再び、ジェロームさんを見る。
ジェロームさんは、30歳少し手前くらいだろう。
髪はシュザンヌさんと同じ金髪でさっぱりとした短髪。
彫りが深く濃い顔立ち。
クラシックな2枚目タイプであり、体格もごつい。
鍛えぬいた、典型的な騎士という雰囲気だ。
ジャンさんに聞いたのだが、ジェロームさんは独身である。
上級貴族の、この年齢で独身は珍しい。
左側に座っているジャンさんは、確か俺よりふたつ年上の27歳。
俺と同じ騎士爵家の次男坊だから、自由な独身を謳歌しているのも、全然不思議ではない。
だが、ジェロームさんはこの国では要職に就いている、カルパンティエ公爵家の跡取り息子なのである。
いくら、今どきの風潮があるとはいえ……
上級貴族の方々は、早いうちに、親が家格に合った婚約者を決めてしまうのが当たり前なのだ。
さっきから気になっているが……
やはりジェロームさんは、物腰が硬い。
俺は、何となく嫌な予感がしたのである。
今日の2次会、すなわち合コンは、ヴァレンタイン王都騎士隊勤務の隊士『赤い流星』ジャン・アズナヴールさんが手配した。
お相手は、創世神様に仕える巫女さんたちである。
その中に、俺の彼女フルール、すなわち転生した『リンちゃん』も居た。
巫女さん達は、全員明るい。
笑顔が素敵である。
中でも俺から見て、ダントツ一番は、リンちゃんなのだが。
「今晩わ~」
「今晩わ!」
「宜しくね!」
「あの人……恰好良い」
巫女さん達は、挨拶をして来たり、ぽつりと呟く子も居た。
ここでジャンさんが、「そっ」と俺へ耳打ちする。
やはり……念押しだった。
「クリス君、悪い。最初の約束通り、ジェローム先輩をしっかりとサポートしてくれよ。後、乾杯以降の司会もね」
「了解! 任せて下さい」
当然、俺は「打てば響け」の返事を戻した。
さてさて、今夜のメンツは男4人に女4人。
ジャンさんの指示で、男女各4人ずつ並列、男と女が対面になるように向かい合う。
普通は、年齢順や職業別に座る。
しかし、今回はジェロームさんのフォローを頼まれた。
なので、ジェロームさん、俺、ジャンさん、リュカの順に座る。
でも会が終わるまでに、お互い全員が話せるようにもした。
一定の時間が経つと、男子が席を時計回りに移動するのだ。
お約束なのだが、念の為、事前に伝えておく。
もしもファーストインプレッションで、お互いに意識したりとか、
既に思惑があったしても、例外は認めない。
まずは、リンちゃんが、俺の真向かいに座ったのでホッとする。
だが、今後の男子軍団の動向には注意しなければならない。
まず無いとは思うが……
ジャンさんが、万が一、心変わりする可能性だってあるし、全く気を抜けない。
最初は……自己紹介からである。
幹事同士は知り合いだから、当然お互いのフルネームを知ってはいる。
だが、他の参加者は最初、ファーストネームと職業のみ名乗る。
話が弾んで親しくなったら、初めてフルネームと詳しい素性を教え合うのが、この異世界の合コンルールなのだ。
「ジェ、ジェローム、騎士だ」
「クリスです。魔法鑑定士やっています」
「ジャンです。ジェロームさんの後輩で騎士やっています」
「リュカで~す! クリス先輩と同じ魔法鑑定士で~す」
男性陣の紹介が終了し、続いて女性陣である。
「シュザンヌです! 創世神様の巫女をやっています。ちなみにここに居るのは全員巫女だから私以外は名前だけ言うわね」
「フルールよ」
「ジョルジェットです」
「……ステファニー」
おお!
やはりというか!
幹事のシュザンヌさんを始めとして、タイプはそれぞれ違うが、全員可愛い。
俺も、リンちゃんが居なければ、絶対、目移りするところだ。
そのリンちゃんに聞いた話では、ジャンさんの目当ての子って、ジョルジェットさんらしい。
だが、一応確認しておかなければ。
他のメンツにも、それとなく伝えておかないといけない。
こういう事が気配り……なのだ。
自己紹介が終わると、当然ながら乾杯をする。
店の方も心得ていて、冷えたエールのジョッキが出て来るタイミングは、バッチリである。
ちなみに、この世界では、魔力で冷やせる冷蔵庫が普及している。
なので、かつての地球の中世西洋と違い、食材の鮮度は抜群でとても美味しい。
飲み物は冷蔵庫で冷やすのは勿論、店専属の水属性魔法使いが居て、キンキンに冷やした飲み物を出してくれる。
挨拶後に、乾杯の音頭を取るのは幹事の役目である。
今回は、男性陣の幹事役であるジャンさんだ。
乾杯以降は、俺が仕切りを頼まれている。
「では! 今夜の素敵な出会いを祝して! 君達、巫女の美しさに乾杯!」
うっわ~
さすがは、イケメン騎士。
俺なら、絶対に無理めの、
でも、ジャンさんはカッコいいから、全然嫌味に聞こえないのが凄い。
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
カッチーン!
コーン!
コン!
陶器製のマグカップが、軽くぶつけられる乾いた音が鳴り響く。
さあ、いよいよ合コンの本番開始だ。
フォローを頼まれた右横のジェロームさんを、俺はそっと見た。
何となく、表情が硬い。
挨拶の時も、緊張して噛んでいたし、少々心配だ。
ジェロームさんの真向かいは、女子の幹事役、シュザンヌさんである。
長いさらさらの金髪を、ポニーテールにした綺麗な碧眼の女性。
少し冷たい雰囲気もあるが、顔立ちは整っている。
胸もそこそこあってスタイルも良く、正統派の美人と言えるだろう。
そして……
まともに聞いたら、「殺される」ので、絶対にそんな事はしないが……
シュザンヌさんの、発する
俺は再び、ジェロームさんを見る。
ジェロームさんは、30歳少し手前くらいだろう。
髪はシュザンヌさんと同じ金髪でさっぱりとした短髪。
彫りが深く濃い顔立ち。
クラシックな2枚目タイプであり、体格もごつい。
鍛えぬいた、典型的な騎士という雰囲気だ。
ジャンさんに聞いたのだが、ジェロームさんは独身である。
上級貴族の、この年齢で独身は珍しい。
左側に座っているジャンさんは、確か俺よりふたつ年上の27歳。
俺と同じ騎士爵家の次男坊だから、自由な独身を謳歌しているのも、全然不思議ではない。
だが、ジェロームさんはこの国では要職に就いている、カルパンティエ公爵家の跡取り息子なのである。
いくら、今どきの風潮があるとはいえ……
上級貴族の方々は、早いうちに、親が家格に合った婚約者を決めてしまうのが当たり前なのだ。
さっきから気になっているが……
やはりジェロームさんは、物腰が硬い。
俺は、何となく嫌な予感がしたのである。