第24話「異世界合コンの結末」

文字数 2,439文字

 翌日朝…… 

 今日は、とてもじゃないが、出勤は不可能。
 なので、昨夜ジェロームさんへ依頼済み……
 適当な理由をつけ、商業ギルドへ、有給休暇希望の連絡をして貰っていた。
 
 もし俺から連絡すると、「仮病じゃないか?」と、ドミニク課長がうるさいから幸いだ。
 後輩のリュカは、『真相』を知っているから、ちょっとだけ気になったが……
 万が一、課長に聞かれても、まともには答えないであろう。
 
 そして遂に!
 ジャンさん達の行方が判明した。
 
 と、いうよりお昼頃、騎士隊の宿舎に現れたジャンさん達は、怪我をした俺が創世神教会に居ると聞いて、すっ飛んで来たのだ。

 そんなわけで、今、俺の前には……
 ジャンさんとジョルジェットさんが、並んでいる。
 傍らには、ジェロームさんが渋い顔をして、腕組みをしながら立っていた。

 ちなみに、リンちゃんも部屋に居る。
 リンちゃんは元々、この教会の巫女なので、同席しても違和感はない。

 ……ジャンさんとジョルジェットさんは、
 何と! 
 土下座をしていた。
 俺は止めたのだが、ふたりは、頑として聞かなかった。

「すまない! つい、かあっとなって……君を殴ってしまった。ジョルを悲しませる奴は、絶対に許せなかったんだ」

 え?
 ジョル?
 昨夜、ジャンさんはジョルジェットさんを、そうは呼んでいなかった筈だ。

「ごめんなさい! クリスさんには優しく慰めて貰っていただけなのに……私が嬉しくて、大泣きしたせいで、ジャンったら、とんだ勘違いをしちゃって……」

 ふたりの間には、昨夜より、特別で親密な雰囲気が醸し出されている。
 このふたり……昨夜中に「男女の関係」になったようだ。

「クリス君! 騎士だから分かるが、戦場で巫女は天使だ。そしてジョルは、僕にとって、唯一の大天使なんだ」

 おお、凄い。
 ジャンさんは、ジョルジェットさんにべたぼれだ。
 治癒士の悩みも聞いたから、愛しさが増したのだろう。

 ジャンさんの言葉を聞いた、ジョルジェットさんも感極まっているようだ。

「ジャン! う、嬉しい!」

「僕は決めた! クリス、君の顔を見てジョルと結婚する事に決めた! 正直に言うと、会うまではジョルをモノにすれば良いって、単純に考えていた。だけど……昨夜会って話した瞬間、僕にはこの子しか、ジョルしか居ない! そう思ったんだ」

「わ、私も! ジャンの噂は聞いていたから……いい加減な人だったら思い切り振ってやろうと思っていたの……でも、違った!」

「ありがとう! ジョル、結婚してくれ!」

「はいっ!」

 あらら、ジャンさんたら、プロポーズまでしちゃった。
 こうなると……
 ジャンさんとジョルジェットさんは、熱く見つめ合い、固く手を握り合っている。
  
「うふふ、凄いですね」

 にっこりと笑ったのはフルールさんこと、リンちゃん。
 その意味は、すぐ分かった。
 俺は前世同様、またまた出席した合コンで、運命的なカップルを生み出していたのだから。

 でも良かった。
 俺は、凄く嬉しくなったんだ。
 心の底から。 
 以前の俺なら「良かったなあ」と思いながら、実は羨ましかったに違いない。
 
 しかし、今は違う。
 俺には、愛するリンちゃんが居る。
 
 異世界転生で離れ離れになって、一生会えないと思ったリンちゃんに、運命の出会いをした上、恋人同士にもなれた。
 さっきの、ジャンさんの台詞ではないが、
 俺にはもう……リンちゃんしかいない。
 
 反省しきりのジャンさんは、お詫びとして、昨夜の店の飲食費一切と、慰謝料として俺へ結構な現金を支払った。
 贈られた現金を、固辞した俺であったが……
 ジャンさんは、気が済まないので、ぜひ渡したいという。
 
 仕方無いので、とりあえずは受け取り、場所が場所なので、創世神教会にそのまま寄付した。
 リンちゃんに、再び会わせてくれたのが、もし創世神様なら、お礼の意味もある。
 ちなみに寄付された金は、教会が経営する、孤児院などの運営費に使われるらしい。
 
 俺との話が無事に済み、ジャンさん達は満足そうに去って行った。
 
 だが、『話』はまだ……終わらなかった。
 驚く事に、まだ俺の加護の力? が働いていたのである。
 
 ジャンさん達が去った後、ジェロームさんが呼ぶと……
 シュザンヌさんが、顔を赤くして部屋へ入って来たのだ。

 おお!
 まさか、この展開は?

「ええと、こんな時になんだけど、俺達……結局、付き合う事になったから」

「はい! 私、ジェロームさんと、お菓子の話で意気投合しちゃいました。お菓子大好きな強い騎士って、意外性があって、とても素敵!」

 おお、ジェロームさん、良かったなぁ!
 それに、シュザンヌさんも幸せそうだ。
 美男、美女のカップルで、お似合いだよ。

 ジェロームさんが、満面の笑みを浮かべて言う。

「クリス君……君に言われた通り、素直になってシュザンヌと話したら、とても楽しかったよ……愛する彼女が居るって、実に気持ちが良いな」

 結局、ジェロームさん達カップルも手をつなぎ、スキップしながら去って行った。
 こうして、部屋に残されたのは……
 またもや、俺とリンちゃんだけ。

「リンちゃん、……俺ってさ、またこんな毎日が続くのかな?」

 苦笑する俺に、リンちゃんは、ほっこり笑顔である。

「うふふ、大変ね、トオルさん。また誰かから、頼りにされそうよ」

 リンちゃんの癒し笑顔を見て、俺は名案を思い付く。

「ようし、リンちゃんから、凄いパワーを貰っちゃうぞ」

「うふ、良いわ」

 今、リンちゃんとふたりきりだし、身体も復活していた。
 
 ジャンさんや、ジェロームさんに負けじ! と……
 俺は、リンちゃんを抱き寄せ、あっついキスをしたのであった。
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登場人物紹介

☆大門寺トオル(俺)※転生前

本作の主人公。ブラック企業勤務のリーマン。25歳。独身。彼女いない歴8年。

あだ名は『愛の伝道師』

飲み会に参加するとカップル成立率が抜群に上がるのと、恋愛世話好きな為、周囲から重宝がられる。

しかし、遂に自分の幸せを追い求めようと決意。

人生通算100回目の合コンで、運命の女性? 相坂リンと出会い、デートをするが……



☆クリストフ・レーヌ(俺)※転生後の大門寺トオル

愛称はクリス。ヴァレンタイン王国商業ギルド魔法鑑定課所属の魔法鑑定士。

25歳。彼女なし。

元は、完全な別人格だが、大門寺トオルの人格が憑依。

恋愛世話好きなキャラは全く同じ。


☆相坂リン

某大病院勤務の看護師。24歳。独身。

優しい性格で、癒し笑顔が特徴の美人。トオルの事を友人から聞き、合コンで意気投合した。


☆リュカ・アルノー

ヴァレンタイン王国商業ギルド魔法鑑定課所属の魔法鑑定士。

クリスの後輩で23歳、独身。

面倒見の良いクリスにくっつき、可愛い彼女を作ろうと画策中。

☆ドミニク・イベール

ヴァレンタイン王国商業ギルド所属の魔法鑑定士。

クリスとリュカの上司で魔法鑑定課課長。35歳。独身。

結構なストレスを抱えているらしく、いつもクリスとリュカを怒鳴り散らしている。

☆バジル・ケーリオ

ヴァレンタイン王国冒険者ギルド総務部部長。51歳。独身。

クリスの出向先である冒険者ギルドでの上司。温厚で真面目な性格。

☆フルール・ボードレール

バジル部長の姪。創世神教会勤務の巫女で治癒士。24歳。独身。

目鼻立ちの、はっきりした端麗な美人。

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