18 聖と俗と・前篇

文字数 2,110文字

 神話で、イザナギは黄泉国の穢を禊ぎ、穢の神(古事記:八十禍津日神と大禍津日神/日本書紀の一書:八十枉津日神と枉津日神)、穢を直す(浄める)神(古事記:神直毘神と大直毘神と伊豆能売/日本書紀の一書:神直日神と大直日神)が生じます。
 そして瀬戸内海の潮流を司る海神スミヨシ(スミノエ)の三神と、潮汐を司る海神ワタツミの三神が生じます。さらにスミヨシの三神の元名はツツノヲの三神。夜の航海を司る星神。此岸の熊野国から、海(瀬戸内海)を渡り、彼岸の日向国(熊曽国)へとイザナギを導きます。日の向(ヒム)かし国、日向(ヒム)かし。
 日神生誕と天孫降臨神話のため、創られた日向国。

 熊曽国で、イザナギは清浄となり、三貴神が生じます。まさに物理的清浄。見えない穢の見える化。三貴神は、生じた時から清浄の神となります。
 そしてスサノヲとツクヨミは高天原の日神へ不敬罪を犯し、追放刑となります。



 現代の神社神道で、禊は人の感情や都合によらない汚穢を浄め、祓は人の感情や都合によらない災と、なぜか罪穢を祓います。何故、罪穢も祓うのでしょうか。
 政争の具。祓は人により行われます。大きい災は大きな祓を行います。つまり大きな加罰、大きな科刑は大きな罪となります。まさに感情や都合。忖度と思慮。ややこしい。

 ややこしいついで。
 平安時代の、神佛習合後の神道。延喜式の大祓の祝詞で、穢(汚穢と罪穢)を直す神は瀬織津比売、速開都比売、気吹戸主、速佐須良比売の祓戸四神となります。瀬織津比売が穢を川から海へと流し、速開都比売が穢を海の底で飲み込み、気吹戸主が穢を海の底ノ国へ放ちます。そして速佐須良比売が穢を浄めます。穢を発生源の黄泉国(根ノ国・地の底ノ国・海の底ノ国)へ返します。
 一説に瀬織津比売は高天原の日神の、祟る神の一面(荒魂)。速佐須良比売はスサノヲの娘神であり、オオクニヌシの妻神であるスセリビメ(須勢理比売/須世理比売)といわれます。スサノヲからオオクニヌシへと奉じる神を替えた巫(のいる一族)。出雲国建国と出雲大社の創建に関わります。
 日の昇る伊勢国の神宮に、生を司る高天原の日神が祀られ、同時に日の沈む出雲国の神魂神社(島根県松江市/県社)に、死を司るイザナミ(伊弉冊大神)が祀られます。
 神魂神社は出雲大社の元社。社伝で、出雲氏の祖神ホヒヒコ(古事記:天之菩卑能命/日本書紀:天穂日命)が建てたと伝えます。高天原の日神の次子のホヒヒコが、何故か祖母神を祀ります。穢を、高天原の日神の荒魂が中ツ国(大和国)から黄泉国(出雲国)へと流し、スセリビメが浄めます。笑えます。
 出雲氏は、神話でオオクニヌシが葦原ノ中ツ国を天ツ神に譲ったあと、実話で出雲国が大和国の統治下になったあと、出雲国を治めます。出雲国造家、出雲大社の社家。のちに千家氏と北島氏に分かれ、千家氏が継ぎます。熊野大社、出雲大社に大きく関わります。出雲大社はオオクニヌシとスセリビメ、そしてスサノヲを祀ります。



 人は、何故か他人(教祖)の作った宗教に順います。他人の自分都合思想の宗教なのに。人は、何故か他人の創った神(教義)に順い、ほかの他人を逐いやったり、殺したりします。自分の感情や都合を抑えてまで。
 古代の神道、神佛習合前の原始神道(≠復古神道)は異なります。原始神道は、教祖もいません。教義もありません。順うモノがありません。まさに自然発生の、自然信仰、精霊信仰の宗教といわれます。ゆえに神道はわかりにくい宗教といわれます。
 現代も琉球神道、アイヌの信仰に継がれます。
 15000年も、多様な自然の万事万象を、多種多数の万物を直接対象として崇めます。畏まります。神として崇めます。畏まります。

 現代の、神佛分離後の神社神道(≠国家神道)は、いまだ佛教の影響があります。記紀神話(古事記と日本書紀の神話)も、佛教や道教、古代中国の神話の影響があります。

 という事で、めんどい、ややこしい事は続きます。

 なんか[イザナミ考]も、かなりめんどい、ややこしい、読みにくい、わかりにくい論考となりました。書いてる自分も、まとまりのない思考となりました。という事でちょっとだけ続け、終わらせます。



 オマケの神社は、めんどくない、ややこしくない神社。
 神宮外宮(豊受大神宮/三重県伊勢市/式内大社)の神域に、度会氏の領域に建つ唯一の内宮摂社、久具都比賣神社(三重県度会郡/式内小社)。27社中21位。式内社・久々都比賣(クグツヒメ)神社の比定社。
 社名の久具は地名と考えられますが、久具の所以は不明。[都]は[の]で久具の姫。
 なぜか傀儡姫、菊理姫(ククリヒメ)を考えてしまいます。
 宮川の川岸にあり、地主神の子神であり、宮川の水神(川神)である久具都比女命、久具都比古命、正体不明の神の御前神を祀ります。宮川は、神宮遷宮の御白石持祭の石を集める川で、三重県多気郡と奈良県吉野郡の県境の大台ヶ原が水源。大台ヶ原は1400万年前の熊野カルデラの、たった1度の噴火でできました。さらに上流は世界的多雨地といわれる大杉谷。ゆえに宮川は暴れ川で、祭神は治水の神と考えられます。
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