13 犬神と狼神

文字数 2,649文字

 ハヤトは犬を飼い、犬をトーテムとしたといわれます。
 ハヤトは黒潮で流れついた南洋諸島(東南アジア)からの渡来人の後裔、そして縄文人の先祖(ルーツ)といわれます。南洋諸島に犬を飼い、トーテムとする民族がいます。

 犬狼信仰を考えます。

 狼が、見えない闇夜に人の残した食物を見つけ、人に見えない外敵(ほかの動物)を吠え払います。狼の優れた嗅覚や聴覚、吠え祓う吠声(遠吠)に畏まります。
 見えない外敵(悪霊や悪気)を見つけ、吠え祓う狼信仰。

 犬は、狩猟の為に飼いならされた狼(ハイイロオオカミ)が先祖(ルーツ)といわれます。順化。飼いならし、生まれた動物。
 飼いならされた犬と、狼の混種の狼犬もあります。

 犬の優れた嗅覚や聴覚、勇猛、俊敏。そして飼いならし、飼いなれるほど忠実。犬は社会性動物であり、人も社会構成員と考え、上位下位の認識に優れます。人が上位と判ると、ずっと従います。知能が高く、記憶力が優れます。犬は狩猟社会でなくてはならない存在。一説に嗅覚や聴覚に優れ、勇猛、俊敏な原人や旧人が滅び、人が残った理由に狩猟のパートナーである犬の存在があります。
 犬と、吠声の霊威を高め、霊威を人に纏わせるため、ともに舞い、吠えます。犬舞(狗舞)と犬吠(狗吠)。犬も狗も動物のイヌ。また、狗は卑しいモノに例えられます。
 犬信仰は、狼信仰で始まった信仰と考えられます。



 縄文時代、南洋諸島から縄文人とともにきた縄文犬。
 縄文犬の埋葬跡が見つかりました。また、骨折の治癒痕があり、治るまで餌が与えられ、生き続けました。
 弥生時代、大陸から弥生人とともにきた弥生犬。
 田畑を荒らす猪や鹿などの害獣捕獲の為に飼いならされた弥生犬。同じく狼(ハイイロオオカミ)がルーツといわれますが、異なる犬種。弥生犬の埋葬跡は見つかりません。つまり犬は人のパートナーでなくなりました。
 犬信仰は縄文時代で終わった信仰と考えられます。

 柴犬は最も古い犬種、縄文犬。
 秋田犬、甲斐犬、土佐犬、紀州犬などは、縄文犬と弥生犬の混種。



 ニホンオオカミ。1950年代に絶滅。
 1970年代、九州南域や紀伊半島で生存確認がありましたが、確証はありません。
 ニホンオオカミと縄文犬は同種といわれます。かつてヤマイヌ、オオイヌと呼ばれ、明治時代にニホンオオカミと呼ばれた、飼いならせなかった野性の縄文犬。

 飼いならされなかったニホンオオカミの神格化、真神。狼神信仰。大神が狼(オオカミ)の語源といわれます。人語を解し、人心を解し、善人を守り、悪人を罰す、真の神。
 大和国風土記(逸文)に、神武天皇の橿原宮、天武天皇の新益京(藤原京)のあった奈良県高市郡明日香村の真神原に、大口ノ真神と呼ばれる老狼が棲んでました。法興寺(のちの飛鳥寺)の建つ地。創建に大陸からの渡来人が関わります。狼神信仰のある渡来人が老狼を神格化。神として崇めたと考えられます。
 のちに山麓の田畑を守る神として狼神信仰が始まります。人語を解し、人心を解し、人の為に害獣を狩る狼の神格化。悪獣(害獣)や悪人を罰する狼神。
 狼信仰、犬信仰は自然信仰に、狼神信仰は精霊信仰に近い信仰と考えられます。
 全国の犬信仰は、だいたいは狼神信仰。ややこしい。
 有名な狼神信仰に、昔の知々夫国(武蔵国秩父郡)、今の埼玉県秩父地域があります。武蔵御嶽神社(大麻止乃豆天神社/東京都青梅市/式内小社・論社/府社)や椋神社(埼玉県秩父市(秩父郡)/式内小社・論社5社/県社)があります。三峯神社(埼玉県秩父市/県社)は、本来は熊野信仰の神社と考えられます。



 犬信仰に似た犬神信仰があります。ややこしい。
 古代中国から、九州地方(とくに北域)、中国地方(とくに島根県)や四国地方へ伝わった犬神信仰。古代中国の蠱術。犬神憑き。犬の呪う神化。使役神(式神)。
 大陸、朝鮮半島で、犬は呪うモノか、食べるモノか。笑えます。



 狂犬病は犬神憑きといわれ、ニホンオオカミの骨が犬神落としに効くといわれました。
 狂犬病は交易により齎された疫病。狼神は犬神を塞ぐ神となります。
 狼神は田畑を守る神、犬神を塞ぐ神となりますが、ニホンオオカミは家畜を襲う悪神(害獣)となります。山麓の人里が広がり、餌となる猪や鹿が減ったため、家畜を襲います。悪人も善人も関わらず里人を襲います。ニホンオオカミは皇化普及の妨害といわれ、補殺。さらに狂犬病やCDV(ジステンパー)に罹り、絶滅。ニホンオオカミの絶滅で猪や鹿が増え、田畑は荒らされます。笑えます。

 優れた嗅覚や聴覚も、勇猛、俊敏も、上位下位の認識が劣れば、順わなければ、飼いならせなかったならば仇。さらに知能が高ければ、記憶力が優れれば仇となります。
 農耕社会でニホンオオカミはいてはならない存在。皇化普及を妨げる鬼という存在。
 紀州犬は野生の縄文犬に、ニホンオオカミに近い犬種といわれます。飼いならさないと野性の本能がでやすい犬種といわれます。
 犬は社会性動物であり、人も社会構成員と考え、上位下位の認識に優れます。犬が上位と判ると、順いません。人が決めた人の社会のルール。ルールを守らなかった紀州犬は罰さなければなりません。討たなければなりません。

 という事で続きます。



 [11 かぐや姫と竹取の翁]で月神の祀られる神社を書きました。
  おまけの神社は、ほかの月神の祀られる神社。

 月神は、古事記で月読命、日本書紀で月弓尊、月夜見尊、月読尊。
 マツリゴト(政治・祭祀)は夜に行う意の月夜見、月齢(月暦)を読む意の月読。いずれ帝(王)の特権行為。ゆえに重臣の神格化といわれます。
 神名はツクヨミ、社名はツキヨミ神社。ツクヨミの祀られるツキヨミ神社の本社、本宮は、じつはありません。という事で有名なツキヨミ神社を2社(2宮)。
 内宮別宮の月讀宮(三重県伊勢市/式内大社)。
 荒祭宮に次ぐ2位。ツクヨミ(月讀尊)を祀ります。境内にツクヨミの荒魂を祀る月讀荒御魂宮、イザナギ(伊弉諾尊)を祀る伊佐奈岐宮、イザナミ(伊弉冉尊)を祀る伊佐奈弥宮があります。
 外宮別宮の月夜見宮(三重県伊勢市/式内小社)。
 ツクヨミ(月夜見尊)と、荒魂を祀ります。本来の祭神は農耕を司る神。1210年に別宮となります。
 内宮の月讀宮は内削千木と偶数鰹木で女神、外宮の月夜見宮は外削千木と奇数鰹木で男神といわれます。また、内宮は中臣氏(藤原氏)の祀るツクヨミ、外宮は度会氏の祀るツクヨミと考えられます。
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