第29話 日本音階
文字数 1,920文字
4番目と7番目の音が抜けている音階のこと。「四七抜き音階」と書くこともある。
西洋音楽が日本に伝わってきた明治時代に、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を「ヒ・フ・ミ・ヨ・イ・ム・ナ・ヒ」と読んでいたことから、ヨナ抜きと呼ばれるようになったともいわれている。
「ファ」と「シ」の2音を抜いた「ド・レ・ミ・ソ・ラ」という、5音の音階になる。ピアノの鍵盤の「ファ」と「シ」は使わない。
ドレミー ドレミー
ソミレド レミレー
民謡、演歌、琴や三味線、雅楽などの古い音楽は、西洋音楽とちがった独特の音階で作られていて、それが「和風」の雰囲気を出している。
日本に西洋音楽が入ってきて、「唱歌」などが作られ始めたのは明治時代。
西洋の音楽理論、記譜法を使っていても、それまでに耳なじんだ「ヨナ抜き音階」の世界観が染みついた日本人には、作る側も聞いたり歌ったりする側も、この音階による旋律が心地良かった。
そのため、そのころ作られた曲には「ヨナ抜き音階」の曲がとても多い。
「チューリップ」「はとぽっぽ」「おしょうがつ」「まめまき」など、文部省唱歌にたくさん見られる。
また、それ以降時代が進んでも、ヨナ抜き音階による曲は日本人の耳にとても受けがよく、歌謡曲などにもよく使われている。
ヨナ抜き音階の曲は、黒鍵だけで全部弾ける。
♯ファ♯ソ♯ラー ♯ファ♯ソ♯ラー
♯ド♯ラ♯ソ♯ファ ♯ソ♯ラ♯ソー
黒鍵だけを弾いているのに、ちゃんとヨナ抜きの『チューリップ』になっている。
は日本固有の音階ということで、日本音階と呼ばれる。
古くから伝わる民謡や童謡、唱歌などに多く、また今でも演歌や歌謡曲でも使われている。
どことなく哀愁や憂いを帯びた曲調で、抒情感やノスタルジックな思いにかられるヨナ抜き音階は、私たち日本人の遺伝子のどこか深くに根をはっている。
(ピアノレッスン 音楽の魔法から)
ヨナ抜き音階は欧米にもある。
【蛍の光】この原曲はスコットランド民謡の【Auld Lang Syne(久しき昔)】
【アメージング・グレイス】もスコットランドやアイルランド地方の民謡から来ている旋律だといわれている。
【テネシー・ワルツ】アメリカ発祥のカントリー・ミュージックを基にP.W.キングが作曲した。
このカントリーというジャンルも〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉の曲が多い。
【カントリー・ロード】【500マイル】など)
【SUKIYAKI】
日本の曲がアメリアに渡り全米ヒットチャート1位となった、坂本九が歌った【上を向いて歩こう】も五音音階。ヨーロッパにも紹介され広く知られた。
他にも〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉の音階による昭和歌謡曲はたくさんある。
・ピンクレディー【渚のシンドバッド】出だし
・キャンディーズ【春一番】
・ペドロ&カプリシャス【五番街のマリーへ】
・吉田拓郎【結婚しようよ】
・美輪明宏【ヨイトマケの唄】
……などなど。
平成のポップスにも。
AKB48の【恋するフォーチュンクッキー】のサビの部分。
そして令和にも!
NiziU【Make you happy】、瑛人【香水】
全てが〈ド・レ・ミ・ソ・ラ〉だけではなく、ファとシも使っている
が、出だしだけ、もしくはサビだけ、或いは全体を通して五音音階が基盤になっている、というように巧く使われている。
そして、この誰にも馴染みやすい五音音階を用いる事がヒットに繋がっている。
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