第3話 play it safe

文字数 467文字

次に目を開けると、目の前にはヤクザの組長が居た。
「今までご苦労さん、少ないけど」
親分は気前が良かった。
割に、封筒の中身は1万だった。
僕は彼女が車校で知りあった少し年上の女の間男(女は稲穂の末端組織の組長の娘で、別の組員と結婚していた)の駆け落ちにくっついて、彼女と駆け落ちした。
女は砂田、男は溝口。
溝口は務所で菱に身売りしていた。
当時はさかんにそんな事があったらしい。
僕は彼女に念を押した。
行く先がヤクザなら、僕は行かない。
ヤクザじゃないよ。
彼女は言った。
それを信じた。
溝口にレンタカーを借りさせられ、西へ。
横浜で高速を降り保土ケ谷へ。
縁があるらしい。
「懐かしいな」
まだ、僕らの知ってる溝口だった。
ふたたび高速へ。
名古屋で高速を降りた辺りからおかしくなった。
行き先は岐阜羽島、な筈。
寄るところがあるらしい。
じれったい、なにトロくさい運転してんのや、替われ!
溝口から聞いた初めての西の言葉。
語気が荒い。
悪い予感しかしない。
彼女を見ると、目を逸らす。
深夜のロングドライブの疲れもあり目を閉じる。

そして赤い暗闇。

ここにはもう戻さないでくれ。
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