第2話 zero
文字数 418文字
目を開くと僕は飛行機に乗っていた。
初めて乗った機体。
基本構造もエンジンも変わらない。
というよりこのポンコツ、いつ墜ちるのだろう?
自分が誰だかわからない。
けれど握った事も無い筈の操縦桿をリラックスして握り、機内のあれこれを熟知している。
確かに軽い。
それ故弱い。
飛び出した時から肌で感じていた。
だから、手を抜いた。
無線の先は不服そうだった。
高度を上げろ。
もっと、動け。
勝手な事を、貴殿が死ねるのですか?
上官に。
着陸後懲罰を受けるだろう。
なあに心配ない。
主翼が捩れる。
急降下。
空中分解。
軽量化の為パラシュートはなかった。
気を失う直前、思い出した。
下川万兵衛。
ああ、いつも損な役回り。
知っていた。
零戦のパイロットは「天皇陛下万歳!」と特攻する筈が、その多くは「おかあさん!」と叫んで絶命したという。
作り話かもしれない。
何か、誰かの名を。
意識が遠のいていく。
刹那
「まみちゃん!」
まみちゃん?誰だろう?
まあ良い。
目を閉じる。
そして、あの、赤い暗闇。
初めて乗った機体。
基本構造もエンジンも変わらない。
というよりこのポンコツ、いつ墜ちるのだろう?
自分が誰だかわからない。
けれど握った事も無い筈の操縦桿をリラックスして握り、機内のあれこれを熟知している。
確かに軽い。
それ故弱い。
飛び出した時から肌で感じていた。
だから、手を抜いた。
無線の先は不服そうだった。
高度を上げろ。
もっと、動け。
勝手な事を、貴殿が死ねるのですか?
上官に。
着陸後懲罰を受けるだろう。
なあに心配ない。
主翼が捩れる。
急降下。
空中分解。
軽量化の為パラシュートはなかった。
気を失う直前、思い出した。
下川万兵衛。
ああ、いつも損な役回り。
知っていた。
零戦のパイロットは「天皇陛下万歳!」と特攻する筈が、その多くは「おかあさん!」と叫んで絶命したという。
作り話かもしれない。
何か、誰かの名を。
意識が遠のいていく。
刹那
「まみちゃん!」
まみちゃん?誰だろう?
まあ良い。
目を閉じる。
そして、あの、赤い暗闇。