7 六時八分

文字数 551文字

カフェへと続く暖簾をくぐるなり彼はすぐこちらに気づき、驚きながら「おはよう」と言ってくれた。こちらも挨拶を返し、彼の目の前、いつものカウンター席に座る。


「ごめん、朝ごはんこれから準備するところ」

「うん、平気。そうじゃない」

「もしや腹の調子悪い?薬要る?」

「大丈夫だって。そうじゃなくて、あの、聞いて欲しいことあって」

「どうした」

「ここで、働いていい?」

「学校は?」

「……行かない」

「そうか」

「うん。あと、あの部屋、しばらく借りていい?」

「そうか」

「……それは肯定?それとも否定?」

「どちらにもなり得る。君次第で」

「どういう意味?」

「そうだな、ちょうどよかった。明日定休日だし、明日にしよう」

「人の話聞いてる?というか明日何するの?」

「今後について、話し合おう」

「そういうことね。うん、わかった。料理苦手だけど、カフェでのバイト経験あるし、頑張る」

「安心してよ。実技試験はないから」

それはつまりウェイターに専念するのだと理解した。きっと、役に立てる。そう確信し意気揚々と彼を見上げると、既に朝食の準備に取り掛かっていた。

その横顔に寂しさが滲んで見えるのは、気のせいだろうか。


***


君がどの道を選んでも、その先で、きっと居場所を見つけるだろう。両手を広げて君を待つ(ばしょ)を。

大丈夫。離れていても、大事に想おう。
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