本気の意味

文字数 416文字

「ねえ。いつになったら本気で愛してくれるの」
問いながら、馬鹿らしいって思った。いつも答えは同じだから。でも、いつかは、と、願わずにいられない自分が憎い。
「まだわからない? こうも真剣なのに」

嘘つき。好きって言ってくれたこと、一度もないじゃない。キスを避けたのは、煽りたいからじゃない。せめてもの意地を見せたいの。

「素直じゃないなあ」

素直になりたいって、何度勇気出したと思う? その度に、そんな事しても無意味って、何度失望したと思う? だから言うわ。

「もう、会わないから」

「へえ。その覚悟本気?」

頷いても、視線を合わせぬこちらの様子に、滲み出る微笑み。

「嘘つき」

こっちのセリフよ。でも、言い返せなかった。

「悪い子だね」

どの口が言うのよ。もう口も聞きたくない。だから残すわ、置き手紙。枕元に置くから、起きたらすぐ読みなさい。


「さよなら。本気の意味に気づいたら連絡して」


貴方には秘密にしてたけど、私、明日から転勤なの。貴方の知らない街に。


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