第27話:ゴーン氏の海外逃亡の手口とは?

文字数 1,518文字

 保安検査の機械は設置されているものの実際には使わずに飛行機に乗ることができる。人間だけでなく荷物についても同様。海外を見ても出入国審査の手順も通常と異なることがある。プライベートジェットで香港国際空港を頻繁に利用する台湾製造業大手のトップは次の様に語った。「パスポートは係員に渡して、VIPルームでコーヒーと菓子を楽しみながら審査などもろもろの手続きを待つ」

「入国審査を対面ではほとんどやらない」関空を選んだのも日本の主要空港「羽田空港、成田空港」の様に厳しくなかった。関空では2018年ピーチなどのLCC「格安航空会社」が発着している関西空港第2ターミナルの端にプライベートジェット・ビジネスジェット専用施設である「プレミアム・ゲート玉響」ができた。

 ゴーン被告や協力者たちは不審に思われないためにもプライベートジェットがある程度の頻度で飛び、一般の定期便利用者から離れた場所で出入国審査や税関手続きなどが行われる専用施設を有している空港を選んだ。その点で国内で成田空港、羽田空港、関空、中部国際空港というプライベートジェット専用施設、または導線が用意されている空港の中で関空は絶好だったのであろう。

 さらに関空の「プレミアム・ゲート玉響」内にもスーツケース程度の荷物のX線検査機は設置されている。しかし、それ以上の大型手荷物対応のX線検査機は設置されていない。ゴーン被告が隠れたとされる大型の音響機器を運ぶ箱ともなれば通常のX線検査機では通過できず大型手荷物対応のX線検査機に通すことになる。

 定期便であれば全荷物も必ず検査が必要になるがプライベートジェットでは検査が必須条件でないので、そのまま飛行機に搭載された可能性が高い。この点でリスクをより少なくする点で大型手荷物対応X線検査機が専用施設内にない空港を選んだ可能性が高い訳だ。ちなみに関空の運営会社、関空エアポートにはオリックスの他、フランスの空港運営会社、ヴァンシ・エアポートが主要株主に名前を連ねている。

 関空の「プレミアム・ゲート玉響」は飛行機に乗るまでの導線も短い。メインターミナル「第1ターミナル」から離れており車を降りて、すぐ目の前がエントランスになっている。専用の待合室や保安検査場、CIQ「税関・出入国管理・検疫」、会議室などを完備しているがスムーズに出国できるようにコンパクトな空間となっていた。

 空港を運営する関西エアポートの資料を見ても広さはわずか300平方メートルにすぎない。一般的な小学校のプールよりも狭い位だ。また、夜の遅い時間帯は専用施設のある第2ターミナルが非常に静かで、空港利用者に見られるリスクも低くなっていた。しかし、荷物の税関検査はなかったのか?日本からの出国については定期便を利用する場合でも税関係員によって荷物チェックをされることはない。

 X線での手荷物検査時には、保安検査を担当する警備会社の検査員によって機内に持ち込めない物をチェックするのがメインの業務であるが、犯罪性のある不審物が見つかった場合には警察などに通報するという仕組みになっている。預ける手荷物も同様であり、もし荷物の中に人間が潜んでいればX線での検査時に発見され警察に通報されることになる。

 その結果、税関検査がなくても荷物に潜んだ人間を発見することはそう難しくない。だがプライベートジェットでX線検査そのものがなければ、機内に人間が入った荷物を持ち込むことは不可能ではないということだ。今回、プライベートジェットだから機内に持ち込めたのは間違いないであろう。とはいえ、ゴーン被告が隠れた荷物をプライベートジェットへ簡単に積み込めたのかと言う点で疑問が残る。
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